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配給の中に、アリスからの手紙といくつかの本があった。
「図書館の本をそのまま持ってくることはできないから、全て書き写したの。どの本にも異端について詳しいことは書かれていなかった。役に立たなかったらごめんなさい」
いくつかの本だと思ったそれは分厚い紙の束で、その筆致はアリスのものだった。エルは驚きのあまりしばらく立ち尽くし、それから「ありがとう」と紙の束を抱きしめた。
「なあ、エル、もうやめようぜ」
薬草栽培を始めてから、葡萄酒の量が増えた。今までこっそりと忍ばせていたものではなく、正式に国から褒美として与えられたものだった。
フレディは、舐めるように葡萄酒を飲み、合間にエルが煮込んだスープを掬う。
「お前まで異端になることないだろう」
「ならないよ。母さんを置いて行けないし」
「カルラだけじゃない。俺も、アリスだって」
アリスにあてた手紙を書く手が止まった。
フレディは今まで、エルとアリスについて何も言わなかった。あくまでエルは、人間族と魔法族のハーフとして、ただ魔法薬作りに興味があるだけだと思っていた。実際、カルラの調子を良くしているのは魔法薬なのだし、エルにとっては必要な知識であった。
しかし、ここ最近のエルはおかしい。異端というものについて知りたがり、国の歴史について触れようとしている。
「聞いて、おじさん。本を読む限り、この法律が残っているのは、あくまで国の伝統だと思うんだ」
「アルアドニスも昔は荒れてたらしいしな。平和の象徴だろう」
「そうだとしたら……例えばお祭りをするとか、平和記念日みたいにするとか、伝統として大切にする方法はいくらでもある。でも実際は、父さんが死んでるんだ」
フレディは渋い顔をする。反論する言葉は出てこない。
「僕は国に抗うために調べてるんじゃない。父さんのことを知りたいんだ。だって、じゃなきゃ父さんは、母さんは」
「わかった、わかったよ。もう何も言うな」
葡萄酒の瓶が空になった。もう一本飲む気にはなれず、冷めたスープを一気に飲み干す。
部屋の隅のベッドで、規則正しく寝息を立てているカルラを見やった。彼女は明朗快活だった。べナルドが処刑されるまでは。
カルラがああなったのは、伴侶を失った苦痛や老いだけが原因ではないとフレディは気付いている。触れてはならない何かに触れてしまったのだと、そしてエルもまたそれに触れようとしているのだと。どうしたらエルを止められるのかフレディにはわからなかった。




