第34話 善戦するも……
善戦と言っていいだろう。砦側の士気は高い。
「よーし! 第四波、凌いだよ! みんないい顔! 第五波に備えて!」
断続的に続く襲撃だが、今のところ、耐え凌いでいる。相手が戦力を小出しにしているおかげでもあるし、南西門ばかり狙ってくれるおかげでもある。
傷を負った小鬼たちが、退いていく。
柵の周り、堀の中に、いくつかの小鬼の死体が転がっていた。死に切れていない死体がビクビクしていて気持ちが悪い。
こちらの負傷は十数人。うち三人は教会の中で動けていないが、残りは、ノイエがどんな薬を飲ませているのか分からないけど、傷を負う前よりも元気になって、奇声を上げながら前線に戻っていく。
相当ヤバい薬を使っている気がする。
ブージェもその薬を飲まされたのか、ラウロ部隊の一員として元気(?)に戦っている。
ヒメカの守る南西門は、アーシュリーの策が当たり、突破されていない。
唯一開いている南西門を狙って、魔物が殺到したが、ヒメカと武官や村人の息の合った攻撃で、何度も撃退した。
特にヒメカの弓は神業だった。
矢に何か呪文を唱えているのか、神に願っているのか、口元を動かしているのはわかるが、その矢が林の中に隠れている小鬼すら貫くのには驚いた。
だが、どの部隊にも疲労が現れているのは、遠目でもわかる。
鐘塔から見える丘の魔物の数は、ちっとも減っていない。
魔物側から咆哮が起こり、第五波が始まった。
おちおち休む間も与えてもらえない。
南西門は攻略困難と見たのか、今度は橋のない西門に向かって、一群が猛突進してくる。それをアーシュリーたちが、応戦する。柵に張り付いた小鬼に至近距離から矢を撃ち込み、堀を渡る魔物には柵の間から槍を突く。更に、村人の家の屋根からも弓が放たれた。
幸運なことに、相手に弓兵がいない。アーシュリーたちは食糧庫と一緒に武器庫も燃やしたのかも。毒矢にやられることがないのはありがたい。投げられた石や、柵越しの剣に当たったものが、教会に運ばれていくくらいだ。
今や、村人も総力戦だ。
動ける男はもとより、老人らも作った矢を運び、子供たちも怪我人を引きずって教会に運び、女も弓を取っている。
ここが正念場だと分かっているのだろう。
それでも、最前線で剣を持つのは、護衛武官であり、ヒメカやアーシュリーだ。
この国には弱きを守る騎士道精神がまだある。
「アーシュリーとヒメカの間の柵! 気を付けて!」
仲間の死体を踏み越えて、小鬼が飛びかかってくる。
そこに次々と矢が放たれ、小鬼がもんどりうって倒れていくが、キリがない。
だんだん、小鬼に刺さる矢が少なくなってきている。
そろそろ矢もなくなるころか。
ここまでか……。
この第五波を凌いだら、いよいよ……。
努力はした。
これ以上は私には無理だ。
シェリルよりも力がない私に、これ以上、何ができるというの。
教会に村人を集めて、誰か一人だけでも、私の移動符で……
「ほほぅ。よく戦っておるのぅ。庶民の指揮にしては、なかなかに善戦しておるではないかえ?」




