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世界の十字路【全話統合版】  作者: 時雨青葉
【第4部】その腕は禁忌への誘い
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幸せだった思い出

 笑い声が聞こえる。

 それは、幸せそうな笑い声だ。



 広い芝生の中を駆ける子供が一人。



 その子供の周りには同じ年格好の子供が数人いて、その子を追いかけるように芝生を走り回っている。



 なんてこともない、微笑ましい光景。

 皆が楽しそうに笑う中、その子供も笑っていた。



 子供は幸せだった。



 たくさんの友達に囲まれて、みんなで楽しく笑って。

 そんな日常が、その子はたまらなく幸せだった。



 子供たちが駆ける芝生に、白い大きな犬が入ってきた。

 犬は子供たちを次々に追い越し、先頭を走るその子に飛びついた。



 犬はその子を押し倒すと、(しっ)()を大きく振ってその顔を嬉しそうに舐める。

 その子はきゃあきゃあと高い笑い声を零しながら、犬の頭をなでてやった。



 犬の周りに他の子供たちも集まって、皆でおしゃべりをしながら時間を過ごした。



 そして夕日が差し込む頃、それぞれが自分の家へ帰っていった。

 その子も犬を連れて、自分の家へ帰ろうと歩き出す。



 ふとその時、誰かがその子を呼んだ。

 その子が顔を上げると、夕日を背にして誰かが立っている。



 その子の顔が嬉しそうに笑みを作った。

 犬から体を離して、優しく手を振る誰かに向かって駆け出す。



 犬も一緒になって走り出すが、この時ばかりはその子の足の方が速かった。



 その子は走る。

 息を弾ませて、心を躍らせて。



 そして―――両腕を広げて待つ誰かの胸の中に、その子は勢いよく飛び込んだ。



 柔らかくて、温かくて、いい(にお)いがする胸の中。

 その子は、大好きな胸の中で一番の幸せを噛み締めて笑う。



 ……………

 …………

 ………



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