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くずおれていく―――
「―――っ!?」
手に何かが触れて、拓也はようやく現実に戻った。
ずっと目を見開いていたらしく、目が乾いて痛い。
思わず目を押さえた。
「痛…」
ふらついた拓也を、傍に来ていた尚希が支える。
目を押さえる拓也のもう片方の手は、実が掴んでいた。
どうやら、実がこちらの手を肩から離したことで、自分は現実に戻ってくることができたらしい。
「だから、触らないでって言ったのに……」
こちらの手から自身の手を離す実。
その拍子に、実の手がかなり汗ばんでいることに気付いた。
実は一つ息をついて、窓の向こうを見上げる。
そして、くすりと笑った。
「見たんでしょ? ……俺の記憶。」
どこか感情を失った、虚ろな声。
それに対して、拓也は押し黙る。
見てはいけないものを見てしまった。
そんな気がしてならなかった。
拓也の心境を見抜いた実は、静かに首を振る。
「いいんだよ。わざとじゃないことは、分かってるから。」
「………」
「気に……しないで……」
「………?」
どうも声の調子がおかしい。
拓也が顔を上げたのと、実の体がゆっくりと傾ぐのはほぼ同時。
実の体が、まるで人形のように崩れ落ちる。
「実!!」
拓也と尚希が慌てて駆け寄る。
倒れた実の周りには、ひらひらと桜の花びらが舞っていた。




