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世界の十字路【全話統合版】  作者: 時雨青葉
【第3部】封じられた秘めたる想い
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記憶に揺れるあの子

<第2章 蝕まれる心>



 思えば、あの子はいつも笑っていた。



 いくら俺が他人に比べて笑わないタイプだからといっても、それは言いすぎという表現ではなかったと思う。



 そして……あの子は、こんな俺にも笑いかけてきた。



 こいつには、悲しみや苦しみといった負の感情がないのだろうか、と。

 あふれんばかりのあの子の笑顔に、俺は薄気味悪ささえ感じていた。



 ―――正直、苦手だった。



 あの子は、俺が失ったものを全て持っていた。

 そのことが、俺にとてつもない圧迫感と劣等感を与えていた。



 色んなことを知ったからこそ、今まで生きてこられたんだ。

 そのことを恥じるつもりはないし、間違ったことをしたとも思わない。



 だけど、何も知らないこいつがどうしようもなくまぶしく見えて、胸が苦しくなるのはなんでなんだろう…?



 あの子を見る度に、俺はどうしようもなく自分のことが嫌いになった。

 だから、自分を嫌いにさせるあの子のことも、もちろん嫌いだった。



 ……少なくとも、最初はそうだったんだ。



 鬱陶(うっとう)しくて、不愉快極まりなかったあの子の笑顔。



 今思い返すと、本当はああやって笑えるあの子のことが、とても(うらや)ましかったのかもしれない。



 あの子の笑顔と共に流れていく時間は、俺の心を優しく、そして残酷に溶かしていった。



 あの子と過ごしているうちに、いつしかその笑顔を大切に思うようになっていた。

 そして、あの子の笑顔は決してなくならないと、疑う余地もなくそう思い込んでいた。



 でも―――





 あの子を最後に見た時―――あの子は、泣いていた。





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