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世界の十字路【全話統合版】  作者: 時雨青葉
【第19部】希望ある未来へ
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分かれ道を突き破って

<第8章 想いを繋いで>



 ずっと答えが見つからなかった。



 存続か滅亡か。



 そんな分かれ道に立たされて、どちらかを選ばなきゃいけないのに、どちらの道も選べなかった。



 自分たちは〝今〟にしか存在できないんだと。

 ここで死んだら、この記憶も想いも消えていくだけだと。



 それを聞いて、なんだか目が覚めたような気分になって。



 そして……



『私を……私の心を救ってくれて、本当にありがとう。』



 詩織のあの笑顔を見た時、ごく自然に道が見えたのだ。



 右でもなく、左でもなく。

 その真ん中にある行き止まりをぶち壊して。





 分かれ道を十字路に変えるような、まっすぐに前を貫く道が。





「俺たちは、いずれ死んでいく。ここで無理に終わらなくても、逆らいようもない終焉(しゅうえん)は訪れて―――そして、ゼロになってまた生まれ変わる。」



「!!」



 実の言葉に、ディライトがハッとした。



「だって、そうでしょ? 今の俺はちょっと特殊かもしれないけど、キリナミと会うまでの俺は俺でしかなかったもん。前世の記憶を持ち越せない俺たちは、死ぬと同時に全てをリセットしてるんだと思う。だから、何度も同じ失敗を繰り返すんだよね。でも……全部が全部、リセットされるわけじゃない。」



 きっと、これが世界の真実というわけじゃないと思う。



 この世界の姿は一つではなくて、見る人によって無限に色を変えるもの。

 ある人には正しくても、またある人には間違い。



 でも、それでいいんだ。





 ―――自分が苦しみの果てに見た世界の姿は、これだから。





「同じことの繰り返しに見えても、そこに積み重なった想いの分、辿り着く場所はきっと違う。この世界は円環に巡るんじゃなくて、()(せん)状に(つむ)がれていくんだ。時には下に下がることもあるかもしれない。でもそれで苦しんだ分、上へ()い上がろうとする力は強くなる。そうやって強くなった分、上に(のぼ)った先で、人は綺麗に輝く。俺は、そんな人たちを何人も見てきた。くそみたいな人間を腐るほど見てきた分、その人たちは本当に綺麗に見えた。(けが)れと輝きは、切っても切り離せないんだよ。」



 歪んだ世界を、そのまま受け入れる。

 レイレンの言葉を真に受けた自分の視界に広がったのは、そんな景色だった。



 皆が皆、純粋に幸せというわけじゃない。



 エリオスも拓也も、憎しみを(かて)に立っているようなものだ。

 自分だって、生きることにとても前向きとは言えない。



 尚希のように、過去のしがらみから解放されて真に希望を(いだ)いて生きられる人間は、もしかしたらとても少ないのかもしれない。



 それでも彼らは、確固たる信念を貫いて強く進んでいる。



 根底に横たわる想いは違えど、そんな風に未来を切り開こうとする皆を、自分は綺麗だと思う。



 だから―――



「今を生きる人間に、想いを託してみてもいいんじゃないかな? きっと、今回のことは無駄にならない。いや、俺がしない。ディライトやキリナミと一緒にあの過去を経験した人間として、あの時のリンドルの人たちの想いを次に繋げていくよ。俺の周りには、俺の想いを受け取ってくれる人がいる。そして、俺が託した想いはその人たちから広がっていくはずだから。」



 実はディライトに、幸せに満ちた笑顔を向けた。



 これは、強がりでもなんでもない。



 幸せなんか望めないと理解していても、自分と共に歩む道を選んでくれた両親。

 地球での生活を奪われても、自分を好きだと言って、笑って傍にいてくれる桜理。



 苛烈ながらも大きな優しさで自分の背中を叩いて、一緒に突き進んでくれる拓也。

 そんな自分たちを時に叱って(さと)しながら、根気強く見守ってくれる尚希。



 一度は敵対しながらも、故郷を捨ててまで自分を支えたいと言ってくれたユーリ。



 他にもたくさん、自分は本当にまぶしい人たちと出会ってきた。



 人間をまるごと信じることはできない。

 嫌いという気持ちも消えない。



 だけど、自分の周りにいる人たちを信じて、彼らを愛することはできる。

 だから今は、そんな人たちにこの想いを託していいと思うのだ。



 だって、自分が想いを受け継ぐと言ったら、詩織はあんなにも幸せそうな顔をしてくれた。



 最期まで絶望の道を貫き通したレティルだって、結局のところは自分に想いを受け継いでほしかったのだろう?



 そして自分もまた、この想いを誰かに受け継ぐことができるなら、まだ未来に希望を持てると思う。



 こんな馬鹿みたいな犠牲はこれで最後にして、今度こそ本当の意味で皆が笑える物語を(つむ)げたらいい。



 そうやって、人間を滅ぼすことなく人間を変えていけたら……



 そう思えるのは間違いなく、これまでの悲しい過去があったから。

 それがなければ、自分はこんな風に未来へ希望を(いだ)けなかった。



 なら、それが答えでいいじゃないか。



 とはいえ正直なところ、父や自分が死んだその先がどうなるかなんて知ったこっちゃない。



 未来を生きる人間が()(せん)を下りまくって、結局世界が滅びるというなら、その時は勝手に滅んでろ。



 自分は、自分が好きだと思う人々を守れればそれでいいんだ。



 そう言ってしまうと、この選択はただの逃げでしかなくて、ひどく傲慢でわがままだけど……





 ―――でも、とても人間らしいと思わない?





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