決意
「………」
詩織が消えて、しばらく。
実は何をするでもなく、雨に打たれてうなだれていた。
「―――なんか、複雑だなぁ……」
ぽつりと呟く。
それ以外に、出てくる言葉がなかった。
本当に複雑なのだ。
望んでもいないのに、終焉の力なんて物騒なものを押しつけられて。
こんなものいらないと全身全霊で叫びたいのに、詩織を見送った今となっては、自分がこの力を持っていたことが幸運だったと思えてしまう。
神の都合で平凡な幸せを取り上げられて、自分だけじゃなくて、自分が大好きな人々も散々苦しめられた。
平穏を壊して、心を踏みにじって、挙句の果てには世界を生かすか殺すか選べだって?
ふざけるのもいい加減にしろ。
神は―――世界は、表立って介入しないんだろう?
なら、徹底して裏の覇者でいろよ。
神なんて憐れな存在を創って、中途半端に出しゃばってくるな。
おかげで、どれだけの人々が歪んで、狂って、消えていったと思っているんだ。
恨み言を言い出したらきりがない。
誰がお前の言いなりになってやるか。
そう思う自分の気持ちに、嘘はないけれど……
ものすごい皮肉だ。
自分をここまで追い込んだのは、神と世界なのに。
迷って動けない自分の背中を押すのもまた、世界の手先とも言える神だなんて……
実は、頬に滴る雨水をぐっと拭う。
へたり込んでいた足に力を込めて、ゆっくりと立ち上がる。
詩織との、最期のやり取り。
それを経て、なんとなく見えた気がする。
―――今の自分が選べる、唯一の道が。
顔を上げて、厚い雲に覆われた空を睨む。
さあ、逃げるのもおしまいだ。
行こう。
この呪いが始まり、そして終わる場所へ―――




