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武神さまと一緒 私、最強の力を手に入れてものんびりするのが希望です  作者: かっぱん


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79 神カメ流、免許皆伝!





 結局、頑張ってしまいました。


「やー! やー! とー!」


 訓練を始めて、七日。

 ついに練習は最終段階に入っていて、土の剣を振り上げた土のゴーレムくんたちが、まわりから一斉に襲いかかる。

 ゴーレムくんたちの攻撃は容赦なく強烈だけど、私は食らわない。

 冷静でさえいれば、相手の動きは見える。

 ギリギリのところで避けて、カウンターでパンチを当てる。

 戦いは、まるで踊りみたいだ。

 リズムにさえ乗れれば、本当に調子よく動ける。


 一通りのゴーレムくんを倒すと――。


「では、ボスである! しっかり相手を見て、対処するのである!」


 鍛冶屋っぽい女の子の姿をしたベヒモス様の頭の上で、カメさまが叫んだ。


「こーい!」


 私はバッチリ身構える。


 ごごごご……


 と、地響きを上げて地面から現れるのは、ひときわ大きな四足の獣の形をしたゴーレムだ。

 さあて、どうやって倒してやろうか。

 マナの力をたっぷり集めて、正面からパンチで――。

 と思ったけど――。

 よく見れば、爪の色が違う。

 金属の爪だ。


 ならば!


 私はゴーレムの突進をかわして、横から首を突いた。

 一撃では倒せなかった。

 身をひねった土の獣のゴーレムが後ろ足と尻尾で攻撃してくる。

 だけど見えていた。

 私は、その攻撃を横に跳んでかわす。

 そこから、いくらかの攻防が続いた。

 さすがはボスだけあって、私も鞭のようにしなってきた尻尾の一撃を食らって、吹き飛ばされもしたけど――。

 それ以上に打撃を与えて――。

 ついにゴーレムがぐらついたところを見逃さず――。


 私は、伸ばした腕を大きく上下に回転させて――。

 生まれた遠心力と共に、しっかりとマナの力を拳に注ぎ込んで――。


「やー!」


 渾身のパンチをお見舞いする!

 手応えはバッチリ!

 ゴーレムは砕けて、土へと還った。


「やったやったー! カメさま、勝ったよー!」


 私は飛び跳ねて、勝利のVサインをカメさまに向けた。


「素晴らしかったです! さすがはご主人様です!」


 見学していたラズが拍手してくれる。

 ラズは、三日目には、手足を拘束されていても完璧に回避できるようになって、訓練はすでに卒業している。

 ラズは、元々すごい子だしね。

 慣れて恐怖心さえ消えれば、あとは楽勝だった。

 それでもカメ様的には、ようやく百番から九十九番になった程度みたいだけど。


「アニスはすごいのです。ニンゲンなのに、ここまでマナの力を扱うとは。さすがはカメさまの契約者なのです」


 鍛冶屋の娘さんみたいな格好をしたベヒモス様も感心してくれた。

 ベヒモス様とは、この五日でいろいろとおしゃべりできた。

 ベヒモス様は、湖の精霊ウイルーン様と同じで、普段は実体化することなく霊体として世界の裏側に存在しているらしい。

 物質の世界には、今回みたいに呼ばれない限り、来ることはないそうだ。

 来たのはなんと数千年ぶりらしい。

 大昔、ニンゲンがマナの力を使っていた時代には、ちょくちょく召喚されて大地をいじったりしていたそうだけど。

 マナの力は、この大自然の力。

 精霊にも通じる力なのだ。

 なんと呪文さえ唱えれば、私の召喚にも応じてくれるという。

 まあ、はい……。

 呪文は長すぎアンド複雑すぎで、とても覚えるのは無理でしたけれども。

 私の頭は、そこまで優秀ではないのです。

 必要な時は、カメさまにお願いすればいいよね!


 さあ、ともかく……。


 カメさまの評価はどうだろうか。

 私も卒業できるかな。

 自己評価では、今の戦いは完璧なんだけど。


 私はドキドキしつつ、カメさまからのお言葉を待った。


「ふむ」


 と、カメさまは言った。

 迷っているようだ。


「どこか、ダメなところとかあった……?」

「戦い自体は良かったのである」

「なら合格?」

「その前に質問なのであるが、とどめの時に腕をぐるぐる回すのは、マナの力を収束させるためであるな?」

「うん。そうだよー。私の必殺技」


 実際に動かした方がイメージしやすいしね。


「攻撃する時の、やー、やー、というのは気合なのであるな?」

「うん。そうだよー」


 攻撃には気合も必要だよね。


「ならば良いのである。合格なのである」

「やったー!」

「おめでとうごどいます! ご主人様、せっかくですし必殺技に名前をつけましょう! ぐるぐるパンチなんてどうですか?」


 ラズが提案してくる。


「いいねー。それ!」


 なんかカッコいい!

 私は迷わず、その提案に乗った。


「必殺、ぐるぐるパンチ!」


 叫んで、やってみた!

 うん、いいね!

 ぴったりくる!


「カッコいいですー! ご主人様は、やっぱりすごいですね!」

「えへへー。そうかなー。そうかもだねー」


 今だけは、自分でもそう思うよ!


「ふむ」

「どうしたの、カメさま?」

「なんでもないのである。マナの収束の仕方は人それぞれなのである。アニスにはアニスの形があるのであるな」

「ねえ、カメさま。これで私、武闘家なのかな?」

「うむ。立派な武闘家なのである。神カメ流、免許皆伝である」

「技とか全然覚えてないけどいいのかな?」


 実践しかしてこなかったけど。


「いいのである。神カメ流とは、すなわち、肉体に浸透させたマナの力をより深く知る術なのである。マナによって増幅された筋力と反射の前では、技などただの月なのである」

「それってどういう意味なのかな?」


 ちょっとわからなかったので、私はカメさまにたずねた。


「すなわち、カメの方が上なのである! 月がどれだけ眩しかろうが、月の光で岩を破壊することはできないのである! しかしカメの一撃は岩をも砕くのである!」

「なるほど!」


 なんとなくだけど、よくわかったよ!


「素晴らしいことなのです。アニスはまさに、神の使徒となったのですね」

「ありがとうございます、ベヒモス様!」


 使徒は大げさだけど、これで安心して学院に行けるよー!


 ともかくこうして、私は戦う術――マナの力を必死に発揮するだけではなくて、緩急をつけて冷静に操る術を手に入れたのだった。


「ちなみにカメさま、神カメ流って、他にも門下生はいるの?」

「いないのである。神カメ流は、今考えた流派なのである」

「なるほど!」


 それなら問題はないね!

 完璧だね!





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