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武神さまと一緒 私、最強の力を手に入れてものんびりするのが希望です  作者: かっぱん


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16 森の案内





 話は決まってしまった。

 私は森に入るため、部屋に戻ってドレスから私服へと着替える。

 ドレスは一人で脱げないのでメイドさんに手伝ってもらった。

 私を脱がせて、メイドさんはすぐに部屋を出ていった。

 なにしろファラーテ様ご一行が来ている。

 使用人も、てんやわんやの大忙しなのだ。


「ねえ、カメさま。私が無礼を働いて斬り殺されそうになったら、容赦なく憑依して助けてね?」

「思いっきり目立つことになるが、良いのであるか?」

「死んじゃうよりはマシだよね?」

「で、あるか」

「もー。他人事みたいにー」

「ふむ。考えてみれば、他人事ではないのである。任せるのである」


 お願いねっ!

 頼りにしているからっ!


 ふわりと浮かんだカメさまが私の頭の上に乗った。


「あー。気が重い。石のことも、知らないフリをしないとだし」


 私には大変すぎる。


「アニスはすぐに顔に出るのである。気をつけるのである」

「だよねー。あーでも、それだと、あの大きな魔石は、ファラーテ様に持っていかれちゃうのかなぁ」


 高く売れるというのに実にもったいない。

 お姉様に見つけてもらう予定だったのに。


 ともかく案内となった。


 お父様とお母様に見送られて、私は裏庭の森に入る。

 お姉様は、お祭りの監督ですでに町に出ていた。

 ファラーテ様と共に来た二人の騎士とメイドの女の子は、一緒に森の中についてきた。


「しばらく歩道を進んで、途中から森の奥に入ります」


 樹冠から日差しのこぼれる春の森の歩道を、私が先頭、次にファラーテ様、次にメイドの子、最後に騎士の二人という隊列で歩いた。


 場所は大丈夫だ。

 私はわかっていないけど、カメさまが教えてくれる。


「アニスさん、聞いてもよろしいかしら?」


 ファラーテ様が私に声をかけてきた。


「はい。何でしょうか?」

「貴女は何故、頭の上にカメを乗せているんですの?」


 あ。


「こ、この子は、ペットでして……。一人にすると寂しがるものだから、いつもの習慣ですみませんっ!」


 私はあわててポケットに入れようとしたけど――。

 ファラーテ様は笑って、


「そのままで良いですの。カメも、たまには森林浴も良いものでしょう」

「は、はい……」


 ――たしカニである。

 ――カメだよね?


 カメさまは。


 ――たしカメ。で、ある。


 カメさまが言い直した。


「ぷっ! あはは」


 私は思わず笑った。


「あら。わたくし、おかしなことを言ったかしら?」


 ああああああ!

 やってしまったあぁぁぁぁぁ!


「いえ、その、あの! ほらあそこ、キノコがキノコってて、あのキノコはこの先生キノコれるかなーと思ったらおかしくて! すみません!」

「意味がわかりませんの」

「ですよね! 私もそう思います!」


 私は何を言っているのだろう。

 ああもう、斬り殺される。

 私は自分のバカさ加減にあきらめかけたのだけど――。


「アニスさんは面白い方ですの。この森にはよく来ているのですか?」


 意外にもファラーテ様は怒らなかった。


「はい。私、キノコ採りが趣味なので」


 この後、森の話で盛り上がった。

 ファラーテ様は興味を持って私のキノコ話を聞いてくれた。

 なんか本当に友達感覚だ。

 だからこそ……。

 私はどうしても聞きたくなってしまった。


「あの、ファラーテ様……。私なんかと仲良くしてくれて――」

「あら、自分のことを、なんか、と卑下するものではありませんの」

「いえ、私は――」


 私は自分から手袋を外して、手の甲を見せた。


「これなので」


 貴族としては失格の無印者。

 それが私だ。


「……今さら何を言いたいんですの? 貴女が無印者であることなど、ひと目見た時からわかっていますの」

「え。あ。見てわかるものなんですか?」

「ああ。そうですわね。田舎では習得の機会もありませんか。刻印識別という無属性技能を習得すれば、わかるようになりますの。習得には素質が必要なので誰でも覚えられるわけではありませんが」

「へー。そうなんですねー」


 すごいねー。


 ――アニス、我は感知の糸を広げたいのであるが。


 私が感心していると、カメさまが念話してきた。


 ――ん? なんで?

 ――どうにも違和感を覚えるのである。

 ――どんな? どこに?

 ――それがわからぬから、感知をしたいのであるが……。

 ――感知って、浮かんでくるくる回るヤツだよね?

 ――で、ある。

 ――ものすごく目立つよ?


 確実に。


 ――で、あるか。で、あるな。やめておくのである。


 よかった。


 カメさまは納得してくれたようだ。

 また敵がいるなら怖いけど……。

 さすがに、もう出ないよね……。

 だって、森は平和なんだし……。


「それで、アニスさんは何が言いたいんですの?」

「あ。えっと」


 なんだっけ。


 じゃなくて!


 私は気持ちを整えて、真面目にたずねた。


「ファラーテ様は、無印者の私と親しく接してくれるくらいに優しいのに、どうしてお姉様にはあんなに――」


 酷い態度をしたのか。

 私がたずねおわるより先に、ファラーテ様は言った。


「決まっていますの。わたくし、刻印などという、精霊様から与えられただけの力をひけらかして大きな顔をしているヤツが大嫌いですの。申し訳ないのですが、貴女の姉などはその典型ですわ」


 それって……。

 タビアお姉様なんて比較にならないくらいに……。

 ファラーテ様のことだよね……。

 どう考えても、まずは鏡で自分の姿を見るべきだよね!


 私は心の中で盛大にツッコんだけど――。

 もちろん、口にはしなかった。






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