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武神さまと一緒 私、最強の力を手に入れてものんびりするのが希望です  作者: かっぱん


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12 お風呂でのんびり





 夜、私はお風呂で湯船に浸かって、のんびりとしていた。


「……そっかぁ。全然気にしてなかったけど、このお湯も、魔石の力で沸かしているんだよねえ」


 私は、手のひらにすくったお湯を眺める。

 お湯は、給湯器という魔道具で作られている。

 そのことは知っている。

 魔道具の力の源は魔石だ。


「自分でやったことはないのであるか?」


 湯船にぷかぷかと浮かびながら、カメさまが言った。


「うん。ないよー。家のことは、全部、使用人がやってくれるし」

「アニスはお嬢様なのであるな」

「普通は自分でやるんだよね?」

「我の知識が確かならば、普通の家に風呂はないのである。風呂があるのは金持ちの家だけなのである」

「それくらいは、私だって知ってるけどさぁ」


 気にしたことはなかったけど。


「あー。それにしても、温かい水は最高なのである」

「考えてみるとさ、カメさまはカメなんだし、やっぱり水の中にいた方が気持ちいいんだよね?」

「うむ。で、ある」

「今日、ずっと外にいたけど平気なの?」

「平気なのである。我はカメであって、我なのである。故に、水の中でなくても普通に存在は可能なのである」

「そっかー。よかったー」


 ちなみにカメさまについては、ペットとして飼うことを認めてもらえた。

 カメさまは手のひらサイズなので邪魔にならないしね。

 吠えることもないし。

 カメなのに、私にちゃんと懐いていることには驚かれたけど。

 もちろんカメさまなのは秘密だ。

 誰にも言っていない。


「風呂に入れてくれれば十分なのである。気持ちいいのである」


 カメさまが湯船の中を泳ぐ。

 実に快適そうだ。

 その姿を見ながら、私は今日のことを思い返す。


 今日は激動の一日だった。

 たくさんのことがあって、頭の中はまだグルグルしている。

 なので実感はあまりない。

 特に私が、魔王をやっつけたなんて。

 ただ、うん……。

 泳ぐカメさまの姿を見ていると……。

 やっぱりアレは夢ではなかったんだよね、と思う。


「はあああああああああああ!」


 私は力を込めてみた!

 しかし、何も起きなかった!


「どうしたであるか?」

「あ、ううん。なんでも……」


 私はブクブクと湯船の中に沈んだ……。

 ちょっと恥ずかしい。


「ねえ、カメさま。訓練すれば私にも使えるかな? マナの力って」


 気を取り直して私はたずねた。


「アニスはすでに今日、マナを全身に浸透させているのである。訓練の第一段階はおえているのである」

「なれるってこと?」

「ふむ」

「難しいの?」

「人間がマナを使うのは危険である。世界の根源たるマナの力は、扱いを少しでも誤れば惨事を招くのである。太古の時代にマナの力で隆盛を誇っていた魔法帝国も最後はマナの暴発で一夜にして海の底に沈んだのである」

「うわぁ……。そんなにすごい力なんだ……」

「で、ある。武神である我ならば、確実に使えるのであるが、アニスにはオススメできないのである」

「そっかー。残念」


 ブクブク……。

 私は再び、湯船の中に沈んだ。

 でも私は再び気を取り直した。


「ならならっ! ねえ、カメさま、私に刻印を下さいっ!」

「むむ。むむむ。それは、オドの力を固定せよということであるか?」

「うん。そう! 私、聖剣士を希望します!」


 私もお姉様みたいになりたい。


「嫌なのである」

「なんでー!」

「そんなことをすれば、我とのつながりが切れてしまうのである」

「あー、そっかー」


 私がカメさまと契約できたのは、私が無印者でまっさらだったからか。

 なら、契約は他の子と……。

 と言いかけて、私はそれを飲み込んだ。


「ならやめとく」


 せっかくカメさまとお友達になれたのに、それは寂しい。


「うむ。我もアニスとお別れは嫌なのである。世の理に偶然はない。アニスが我の声を聞いたのは、まさに運命なのである」

「私、キノコかー」

「む? むむ? どういう意味であるか?」

「うんめー。的な?」


 うんめい(運命)、と、うめー(美味)をかけて。


「なるほどである。まさにである」

「カメさま、焼いたキノコを美味しそうに食べてたもんねー」


 今日の夕食で。


「アレは美味だったのである。明日も所望するのである」

「また採りに行こうねー」

「で、ある」


 私は湯船の中で体を伸ばして、天井に目を向けた。


「あーでもさー。今日、私、お姉様によくやったって褒められちゃったね。勇気のある行動だったって」

「代わりに父親には怒られたのである」

「あはは。そうだねー」


 話を聞いたお父様は顔を真っ青にしていた。

 お母様なんて倒れてしまった。

 だって、私は無印者。

 悪い人たちになんて、立ち向かう力は持っていない。


 持っていなかった……。


 昨日までは。


「ねえ、カメさま。カメさまが私に憑依すれば悪魔でも余裕?」

「当然である。小指すら必要ないのである」

「そっかー。私、最強だね」

「で、ある」

「あの、さ……。それなら、お姉様よりも強いのかなぁ? あーううん! 今の質問はなし! なしなしなしー!」

「其方の姉は、随分と町の人間からも好かれていたのである。普段から誠実に行動しているのであろうな」

「当然だよ! お姉様はこの町でたった一人の聖剣士なのに、真面目で優しくて悪いことが大嫌いで――」


 この後しばらく……。

 私は大いにお姉様のことを語った。


 おかげで今夜は、のぼせました。





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