【アーカイブ37】 コラボ依頼の選別
とても久しぶりな更新な気がします……
お待たせしました!
祝勝会配信も無事に終わり、参加者全員が魔王城で寝泊まりをした翌日の朝、まだ眠い目を擦りながらスマボの通知を見たギーシュが驚きの声を上げた。
「魔王様!! ちょ、起きてください!
この通知の数を見てください!
えげつない量ですよ!!?」
「んぁ……??
何だい? 通知?」
「そうですよ!!
ほらこれ、凄い数のコラボ依頼です!」
ギーシュはスマボの画面をマオの目の前に突き出す。
まだ眠そうな目を擦り、スマボに目を通すと、そこには見た事もない通知の数があった。
「これは凄いな! しかし、流石に全員とは……」
「それについては無論、僕の方でも選別はしますよ?
魔王様にはその中から選んでもらいます」
「それならいいのだが、選別作業は見ていても良いかな?」
「全然構いませんよ? 面白い物でもないですが……」
数十件もあるコラボ依頼とにらめっこをしながら、テキパキと振り分けを始める。
その作業を横目に見ながら、マオに疑問が浮かぶ。
「こういうの、やった事があるのかい?
何と言うか、やけに慣れてるよね?」
「え? あぁ、一応これでも領主の息子ですからね。
書類の選別作業とかって、よくやらされるんですよ」
「へぇ、なるほどねぇ通りで!
マネージャーが板に付き過ぎて忘れてたよ……
ちなみに、選別基準なんかはあるのかい?」
ギーシュは手を止めずに、眉間に皺を寄せながら少し難しい顔をして答えた。
「正直これに関しては分からない事が多いです。
明確な基準も無いですし、僕の基準でなら──」
手元のコラボ案件を提示しながら説明を始める。
最初に見せたのは企業からのコラボ案件。
魔道具店や、観光業、飲食店等も数件見受けられた。
「今魔王様に見ていただいてるのが、一般的に企業案件と呼ばれている物です。
その名の通り企業が商品の宣伝の為に、名のあるマギチューナーに商品紹介の依頼をする事があるんですよ。
これは優先順位を最も高くして選定しています」
「企業から来ているのか!
我が知っている企業も幾つかあるな……
生配信よりは動画にする方が良さそうか」
ギーシュはマオの発言に賛同しつつ、次の優先候補を提示した。
そこに並べられたのは、名が通っている且つ、大手の事務所等に所属しているマギチューナー達。
「これが僕的な優先順位2番目の、大手マギチューナーからのコラボ依頼です。
ほとんどの方が魔王様よりチャンネルの登録者が多いので、多くの新規視聴者を獲得するチャンスとなります。
そんで最後に……」
再びマオの前に幾つかの依頼を提示。
それらは一般的に個人勢と呼ばれており、事務所を介さない個人で完結したマギチューナー達だ。
有名な者から聞き馴染みの無い者まで幅が広い。
ちなみに言えば、マオもここに部類される。
チャンネル登録者数で言えば、上の下と言った所だ。
「ほほぅ、このコラボ依頼は桁違いに多いんだね?」
「まぁ僕の体感で、7~8割は個人勢からですね。
ただここら辺はかなりピンキリでして、有名な方はまだ良いのですが、それ以外の方となると……」
「何か問題があるのかい?」
「言い方は悪いですけど、単純に旨味が少ないんですよ。
今の魔王様が登録者数百人規模の方とコラボをしても、獲得出来る新規さんは少ないんですよね……
勿論これから伸びそうな人や、魔王様から見て興味がある方は積極的にコラボをすべきとは考えています」
「考え方としては投資と一緒かな?
そう思うとなんだか、世知辛いものだね……」
マオは苦笑いを浮かべながらも、自分宛のコラボ依頼の数々に目を通した。
そうしていると、いくつかの依頼が意図的に避けられている事に気付く。
「ギーシュ君、この依頼はどうして別枠でハブられているのか教えてもらえるかな?
君が言う所の、企業案件もあるじゃないか?」
「それなんですけどね……魔王様、と言うよりはマオちゃんの人物像に合わないものとか、極端にセンシティブなのは弾くようにしています。
中にはあるんですよ。女性用下着のレビュー動画をとか、選挙で領主を決める地区の候補者が売名の為とか……」
「うわぁ、本当だ。どこにでも居るんだねこういうの」
省かれたリストを漁りながら、若干顔を顰める。
魔王という立場上、その地位を利用しようとする者は昔からそれなりに居た事を思い出した故の表情。
「あ、あと過度に高圧的なやつも弾いてます。
中には名が通った方もいますが、個人的に腹が立つ文面が多かったので容赦無く」
「どれどれ……おおお! 『コラボしてやってもいい』とか書いてあるじゃないか!
実に勇敢、ここまで行くと蛮勇とも言えるね。
我は嫌いじゃないぞ?」
「いや、好き嫌いとかじゃないんですよ!?
後々面倒臭い事になるのが目に見えてるので……」
高圧的なコラボ依頼はどの人物も漏れ無く炎上常連の者であったり、無視できない事件を起こしているのだ。
そんなスキャンダルの種をマオに背負わせる訳にはいかない。
「折角なんで聞かせて欲しいんですけど、選別した中にコラボしてみたい方とか企業ってありますか?」
「う〜ん……種族は問わない、強いて言うなら勢いがある子、企業は礼儀がなってさえいればいい。
下調べとか我との相性云々はギーシュ君に任せるよ」
「分かりました。って言っても勢いか……
まぁ、僕なりに頑張って見繕ってみます」
2人でそんなやり取りをしていると、後ろから落ち着いた声がかかる。
「魔王様、そろそろ午前の会議が始まるかと」
「ありがとうセバスニャン、すぐに向かうとしよう。
ギーシュ君、後は頼んだよ」
「任せておいてください!」
ギーシュは魔王を見送り、選別作業に没頭した。
特に多い個人勢からのコラボ依頼は慎重に吟味しながら、マオと同等以上の知名度の者を優先する。
「かと言ってもなぁ……」
スマボの画面に映し出されるのは、配信者としてマオより格は上ではあるが問題が多いとされる者達。
言わば、炎上常連からのコラボ依頼。
マオもどちらかと言えば常連寄りなのだが、手元に表示しているのはスキャンダルが多い者。
「ハァァァ……
こう見るとクオンさんって、初めてのコラボ相手としては凄く良かったんだな……
今思うと疑っていたのが申し訳ない」
「ギーシュさん、おはようございます」
「おはようございます! えっと……ギーシュさん?」
「はい、ギーシュで大丈夫ですよ。
クオンさんに、勇者のユウキさん……でいいですよね?
お二人共おはようございます」
声を掛けたのはクオンとユウキ。
2人は興味深そうにギーシュの作業を観察していた。
「それ、もしかしてコラボの依頼ですか?」
「お察しの通りです。
今はその選別作業中ですね……
企業とか事務所とか個人とか、いわく持ちとか……」
「いわく持ち、言い得て妙ですね……
私もマギチューナー駆け出しの時にそういう人とコラボして、痛い目を見ちゃいましたから」
昔を思い出しながら、遠い目をするクオン。
そしてユウキは興味深さそうに、ギーシュの作業を周りをウロウロしながら見学している。
「こっちの世界でもこういうのってあるんだ……」
「と言うと、ユウキさんの世界でもあるんですか?」
「う〜ん、こっちのとは若干の違いはあるけど、かなり似てるかな?
私も詳しい訳じゃないけど、配信とかでそういうコラボみたいなのはよく見てました!」
「であれば、いち視聴者の意見として聞かせて欲しいのですが、コラボってどんなのが望まれているのでしょうか?」
ユウキは腕を組みながら、う〜んと唸りながら考え、自分なりの1つの結論に辿り着いた。
「物事の価値観が似ている人とのコラボが良いと思います」
「価値観……ですか?
僕も推しがいますので色んな配信を見ているのですが、違っている方が面白そうじゃないですか?」
「う〜ん、何て言うのかな?
人としての在り方が真逆とかは有りだと思うんだけど、配信を単なるお金儲けだと思ってるとか、自分だけが楽しければ良いって考えの人だと、やっぱり見てる側は違和感があって……」
「あ〜、そう言われると覚えありますね……」
思い当たる節々に、ギーシュは既に選別し終えたコラボ依頼を引っ張り出し、再度選別を始めた。
「あの、何かお手伝いしましょうか?」
「私も手伝いたい!」
「折角なのでお願いします。正直かなり助かりますよ」
ギーシュはコラボ依頼者の名前をクオンに伝え、クオンが検索結果を解説した後、ユウキの直感も交えて決める。
工程こそ多くなるが、3人が思っていたよりは順調に作業は進む。
数時間もすると、依頼の数々はほとんど選別済みの状態となった。
「いやぁ、助かりましたよ!
お2人ともご協力、ありがとうございました」
「いえいえ! こちらも楽しめましたし。
ね、ユウキちゃん?」
「はい! 役に立てたかはともかく、楽しかったです!」
選別も無事に終わり、3人で談笑していると、会議を終えた魔王が帰って来る。
「あ、ギーシュ君……その様子だと終わった感じ?」
「お疲れ様です……なんか、ちょっと痩せました?」
「勇者襲来騒動の後始末の件の会議で……まぁ、ね?」
「あ〜、ご愁傷さまです」
そこまで聞いて、慌てたように当事者であるユウキが割って入る。
「あのあの、その節は本当にごめんなさい!」
「いや、君は悪くないさ。どっちかと言えば、部下を短期間に酷使した我が悪いからね?」
「ありがとうございます……
その、一人称って我なんですか? それと姿も……」
それを聞き、思い出したかのように仮想姿の魔法で魔王ルディウスの姿からマオちゃんの姿へと早変わりした。
「とまぁ、こっちの方がいいよね?
でもまぁ一応は魔王だからね、少しは威厳とかを気にしている訳なんだよ」
「わっ、一瞬でマオちゃんに戻った!
いや、さっきのが元々の姿で……ん?」
「その認識で間違いないよ。
仮想姿の魔法で美少女を受肉しているんだ!
ギーシュ君曰く『バ美肉』と言うんだって」
元の世界で聞きなれた言葉の登場に少しの驚きもありながらも、すんなりと受け入れる事はできた。
マオはそんな事を気にすることも無く、ギーシュの近くにあったスマボを手に取り、振り分けられたフォルダの1つを開いた。
「どれどれ、どんなコラボ相手さんがいるのかな、と」
「あ、そのフォルダ違いますね。そこは残念ながらお断りする予定の……」
「ん? こいつは古い知り合いだね。
手始めならこいつがいいよ、扱い易いし。
お断りリストってまぁ、らしいっちゃらしいけど」
「あの、知り合いというのは?」
驚いた様子のギーシュが問うと、多少呆れたような表情でマオは答えた。
「こいつはね、学生時代の同級生なんだよ。
まぁ、問題児四天王の一角みたいなやつだね」
読んで頂きありがとうございます!
来年はもっと書けるといいな……




