2話
「おい夏目。今度の休みにみんなでショッピングモールでも行こうぜ。」
竜也が断る権利なんか無いように大きな声で威圧してそう言ってくる。
「あいつらが服を見に行きたいそうなんだ。」
「で荷物係になれと?」
「そ。」
「休日なのに休日じゃないな。」
「まあそういうなよ。学年のお姫様が誘ってるんだ断ったりしたらどうなることやら。」
竜也はやれやれといったような口ぶりで言うが顔は楽しそうに笑っている。
そう、比奈子と稔は学年でトップを争う美少女だ。
こんな冴えない僕といることが奇跡だが、周りと顔が広い竜也がいてくれるから責められずに済んでいる。
「そうだな。行くよ、特にやることないし。」
「よし!荷物軽くなった!」
そう言っていつもみたいに大きな声で笑う竜也だった。
*
「日本国は我らアメリカと共同研究をしませんかな。」
偉そうで高価そうなスーツをビシッと決めた大人が多く座り話し合い、そこはどこか硬くピリピリとした空気が漂っていた。
「各国独自の研究をなさるという結論に至ったではありませんか。」
「日本国が断固と拒否するのはもしや何か進展でもあったのですかな?―――のような。」
場が静まり返っていた。何か禁忌に触れるようなことを言ったのだろうか。
僕には聞き取ることができなかった。
「まあそうですな。共同研究をしないということは国際連盟が存在する価値も下がるというもの。圧倒的多数が国際連盟の価値がないということをおっしゃるならもう存在する必要もなかろうに。」
そう男が大きな声で場全体に響き渡るように言った後、一度ざわついた後男は席から立ち去った。
それに続くように大人たちは次々と席を離れていった。
目を開けると外は明るかった。
今日は3人で買い物に出かける日だ
昼から集合なので朝はゆっくりと食事出に食べ準備をしよう。
1週間たまりにたまった洗濯物を干しているときに、付けていたテレビのニュースが聞こえてきた。
「近頃、反政府組織の活動が活発化しているようです。政府軍関係者によると武器の密輸がなされたとのこですがその現場を押さえることをいまだできていないとのことです。もし反政府組織による攻撃があった場合速やかに屋内に避難し、政府軍の指示に従ってください。次は今日の天気予報です。今日は午前晴れ午後からは曇り・・・」
そんなことを聞くがきっと自分とは無縁なことだろう。世界はこんなに広いんだ。そう思いながら僕は洗濯物を干しつづけた。
*
「やっほー!ナツ!」
まだ集合時間前なのにすでにみんな来ていた。
一番初めに呼んでくれたのは比奈子だった。一瞬誰だか分らなかった。見慣れたメンバーだがこうやって化粧をして出かけるのはいつぶりだろうか。
普段とは違う私服姿に新鮮さを味わいながら近づいて行った。
「どう?この服?いつも学校だから制服だけど…」
「別人かと思ったよ。似合ってる。」
そういうと比奈子は少し恥ずかしそうにもじもじしながらほほを赤らめた。
「もう。私達もいるんですから!行きましょう。」
そう稔は笑いながら言い竜也の背中を押して歩き始めた。
・・・
親とショッピングに行くことがないからどんなものか分からなかった…が長い、長すぎる!試着するのに時間がかかるのは分かるが一つのお店を隅々から見ていく…
「なあ竜也。僕もう女とショッピングに誘われてもいかないかもしれない…」
「確かに苦痛だ…だが、お前も男ならこのくらい笑って過ごさないと将来やばいぜ?」
「ショッピングに打ち負かされて独身はなんかやだな…」
「そうだろ?まあそういうことだ。」
なんだか訳の分からないことを言っている竜也だがその顔は誘ったときのように笑っていない。むしろ死んでいるかもしれない。もしかしてこいつ俺にも同じ苦痛を味わわせる事で平常心を保っているのか…
「ただいまー。終わったよー。」
―――バタン!
突如、モールすべてで停電した。携帯も…繋がらない。
まだ昼だから真っ暗なわけではない。全然周りが見える。
その時あることが脳裏をよぎった
『反政府組織の活動が活発化しているようです。』
取り合えず落ち着こう。女子を守ることが優先だ。声をかけて落ち着かせてあげよう。
「て、停電だね。とりあえずフードコートにでも行って飲み物でも買って座ろう。電気なくても買えればいいけど。」
「そうだね。周りの人も普通にしてるし。」
確かに比奈子の言う通りだ。周りの人も普通…
―――――バババンッ!
銃声が聞こえた。戦争は終わったはずなのに。
こんな一般人の多いショッピングモールでだ。
反射的にしゃがんだ状態で顔を上げると、紺色の服を着て覆面をかぶっている集団が迷彩柄の軍服を着た…政府軍と銃撃戦が繰り広げられていた。
流れ弾に当たってまた一人また一人と一般人が倒れていく。
「おい夏目。おい!夏目!」
竜也がすごく険しい顔をして呼びかけていた。
「…」
「どうする。どこか避難するところあるか?」
「すまない。とりあえず反対側に行って落ち着ける場所、があればいいが…」
そんな場所確信はない。でも、ここにいて巻き込まれるのは避けるべきだ。
「竜也先頭を進んでくれ。僕は女子を挟んで後ろからついていく。」
「わかった。背中は任せるぜ。」
竜也はいつになく慎重な顔つきでそう頷く。本当に頼りになる友達だ。
*
「おかあさん。いつ帰れるの?」
「政府軍は何してるんだ。」
「夜になると恐ろしいな。」
フードコートに2、300人の一般人が集まっていた。
政府軍に囲まれている避難所は不安や恐怖などいろいろな感情が混ざっている。
大人の声不安そうな声が聞こえることで子供は泣きそうになり親の膝にしがみついている光景は僕の知っている日常とはひどくかけ離れていた。
「政府軍少佐の相道だ!この中に反政府組織の仲間が混ざっている今すぐに出てこい。名前は…氷室夏目、だそうだ。」
相道と名乗る男はこの場全体に響き渡るようにそういった。
え?今僕の名前が聞こえた気がするがまさか。僕なわけがない。普通に生活して学校行って遊んで…そんなわけがない。
「夏目…お前そうなのか?」
え、竜也まで何言ってんだよ。そんなわけないだろ。
訳が分からないといった顔をしながら僕の顔を覗き込むように言ってきた。
―――バババンッ
「おかあさん!おかあさんどうしたの?ねぇ!おきてってば!」
女性が倒れている。体から無数の穴をあけて血を垂れ流している。
そのそばで子供が声をあげながら必死に母親と思われる女性の体を必死に揺さぶっていた。
「誰が反政府かわからなければ殺していくしかないな。速く出て来いよ1分に1人ずつやっていくぞ。」
容赦がなさすぎる。僕は反政府組織には入っていないがもし出ていくとどうなるか簡単に想像がつく。その女性の今も止まることの知らない血を見ると気分が悪くなった。
「おいどういうことだよ夏目!」
小声でそう言ってきた、僕に分かるわけがない。
竜也も比奈子も稔も恐怖をしている顔で僕を見てきている。
―――――バババンッ
こうしているうちにどんどん人が殺されていく。
止めるには僕が出るしかない。そう思うしかない状況に足を出そうとした瞬間。
―――――バンッ
この場に煙が立ち込めた。もう1メートルも先が見えないこの場で大切な3人を必死に捕まえようとするが
―――――バババババババババンッ
永遠に感じる銃声と共に周りで人が倒れていく音が聞こえる。
周りにうっすらと見えていた3人の影が重力に身を任せるように崩れていくのが見えた。
―――――夏・・・
今にも消えてしまいそうないつも聞いていた声を最後に後ろから誰かにつかまれ何かを口に押し付けられたかと思うとそこで僕の意識はこの世界から途切れてしまった。
まだまだ謎が多く構成も軽いので修正していくかも…
次回は話が結構進む予定です。




