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悪役令嬢わるもの作戦

昼休憩中の学園のロビー

中庭で友人とランチをしようとする女子の集団、

食堂に向かう男子、おしゃべりに夢中なグループ

——— たくさんのモブで溢れていた


そのなかに…王子とレティシアがいた———群衆の中でも金と銀の配色は目立つ


そして邪魔してきそうな従者は近くに姿は見えない。

ラッキーと私は思わず心の中で呟いた。


『うっかり転んじゃって王子に抱き着こう!身体接触事件でドキドキ!!作戦決行』


わざと茶化してみたが心はちっとも軽くはならなかった。

嫉妬せざるを得ない状況を作った時、レティシアがどんな反応をするか見てみたくて…乙女ゲームのテンプレを選んだけど…

正直やりたくなかった。

階段の上で転ぶなんて…前世を思い出して足がすくむ。

けど、これが一番効率的なんだ……やるしかない


「王子さまっ!こんにちは!わぁ…今からお昼ごはんですか?」

覚悟を決めて階段上から王子に声をかけた。

王子が私に気づいて視線を向けてる事を意識しつつ、足早にロビーに向けて階段を降りる。


(ここで……転ぶっと……)

段差に右足をかけた。

怖い。視界がにじむ、私の喉から勝手にきゃあっという声が漏れる


私を受け止めようとする王子の姿を何とか確かめて…恐怖のあまり私は目をつむった。

抱きとめて貰えるはずだった


ガタンっっ!!

大きな衝撃が身体に響いた。

痛い—痛い——痛いよ。クソ痛い


「アリシア嬢、顔から落ちたぞ!」

「大丈夫のなのかしら!」

「レティシア様!?」

モブたちの声が遠くから聞こえる。


(痛っ·····痛っ!!なに?なんなの??レティシア??)


私は顔面の痛みに耐えつつ、周囲を冷静に観察した。

地面に突っ伏した視点の先——

レティシアは王子に抱きつくような体勢で倒れている。

王子は驚いたような、照れたような、慌てたような……感情が渋滞した面白い顔をしている。

普段の微笑みよりよっぽど人間らしくて好きな顔だった。


「殿下·····お怪我は?」

王子は我に返ったように

「何もないよ」

レティシアにひと言かけると、私の方に向かってくる。


「アリシア嬢…怪我はないかい?……顔に擦り傷があるよ。立てるかい?医務室に行こう」

そう言って王子が手を差し出してくる。

差し出された手を私は握る。


その瞬間、

「きゃ~!!」

「ロマンチック!!」

「殿下とアリシア嬢お似合いね」

野次馬が私と王子の関係を邪推して盛り上がっていた。


(…違う。こういう方向に使いたくて、この作戦を選んだわけじゃない)


モブはどうでもいいの、レティシアは?

私が周囲を見渡すと、レティシアはいつもの凪いだ瞳も取り繕った無表情でもなく——

茫然とした顔でこちらを見ていた。


(………っ)


私はどうしたら、この騒ぎを落ち着かせられるか必死に考え始めた。その時、


「みんな、騒がせてしまって申し訳ない」

王子の柔らかい声がロビーに響いた。


「おわびに料理人にランチにデザートを1品足すように言っておこう。

 昼休みは短いから食べ切れるかな?」

配慮が行き届いた…言葉に我に返ったのか、何人かは慌てて食堂に向かっていった。


(場のおさめ方が私に似てる……)

果実水の時と言い、王子に既視感を感じる瞬間が怖かった。


「アリシア嬢…改めて医務室に行こうか」

「あっ顔をすりむいただけなんで」


私は自分の顔の擦り傷を治癒の力で治した。

乙女ゲーってこういうのは便利。体の傷は簡単に治る。レティシアは?


「レティシア。どうしたんだい?君らしくない。理由を—」

「殿下、騒ぎを起こして申しわけありません」

「いや、理由を」

「王子の身の安全を守る行動をとっさに取りました…」

「そう…。ありがとう、レティシア」


婚約者2人は相変わらず感情の中身がない会話をした。


「アリシア嬢·····怪我は…大丈夫なのですね·······、ごめんなさい」

「レティシア様…あの心配してくれて、ありがとうございます」

「いえ…私が原因だから当然のことです」

レティシアは表情を揺らさず答えた。


「王子様!」

「なんだい?アリシア嬢」

「レティシア様は王子様が心配だから庇ったんですよ?」

「…………」

レティシアは会釈をして、ゆっくりと去っていった。


レティシアは”私”を見てはくれなかった。



レティシアは雑木林にいた。

「····················」

レティシアは大木に額を当てて黙って立っている。

表情は見えなくて、もどかしい。


レティシアはいつも人の居ないところで涙を見せ、感情を出す。

今回はそれすら見せてくれなくて…苦しい。

ちょっと嫉妬して、本音をひと欠片でも見せてくれたら良かっただけなのに。


(私…何がしたかったの?)

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