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眩しくて何も見えなかった日々

執務室のドアをノックする音が聞こえる。

「入れ」

足音を立てない優雅な所作で入室してきたのはレティシアだった。

「リチャード殿下」

「どうしたんだい?」

「前触れもなくやってくるなんて君らしくない」

10年一緒にいて、こんな事は初めてだった。

さすがに慌ててしまう。


「今紅茶を入れさせてこよう」

カインが隣室で待機してるはず…

袖を握られた。

誰に?まさか?レティシア?


「どうしたんだい?」

心の準備も出来ないまま振り返った。

顔のすぐ下にレティシアの顔はあった。

いつものような美しい氷の無表情ではなく…


(緊張してる?)


「リチャード殿下·····」

「私はあなたの事を愛しています」

「心から」

予想外の言葉が飛び出してきた。

心臓が大きく跳ねて、言葉にならない。

私も愛しているよと、婚約者なのだから、そう返答するのが当然だ。

レティシアが泣いている。キラキラ宝石みたいにキレイな涙を流して…

どんな時も泣かなかったレティシアが泣いている。

だから、表面だけ綺麗な言葉を紡ぐことは出来なかった。



どんな時もレティシアは正しく、そして誰よりも努力していた

だから…僕も……

何故か涙が零れていた。

その俺の涙を泣きながらレティシアは指ですくった。

「レティシア·····」

「はい」

「君は信じてくれないかもしれない」

「………」

「ありがとう」

僕は彼女を抱きしめた……。


────────────


終業式の後、

学園ではダンスパーティーがひらかれた。

その舞台の真ん中で金と銀が踊っている。

それを横目で見ながら私はビュッフェの食事に夢中になっていた。

·····果実水もある。誰も飲まないけど。

わたしは誰も手を伸ばさないそれをグラスに入れて1口飲んだ。


(スッキリしてて飲みやすいよね·····

本当はもう少し甘くないのが好みなんだけど)


「あ、アリシア嬢?そんなもの…飲んで…」

「ほら、こちらのドリンクの方が君に似合うよ」


(うっとうしいな…)


「ありがとうございます!お気持ちだけ頂きますね!」

声をかけてきたやつらは顔を真っ赤して目を逸らした。


(やっぱり·····”純真でかわいい女”は使いやすいよね)

ふふん、少し得意げになった私に王子の従者が声をかけてきた。なんの用よ?


「アリシア嬢·····こちらも良ければ」

「甘みのないものです」

アイスティーを渡された。

氷なんて、こっちじゃ高級品で…手間もかかるし、一般的でもないものだった。

「·····ありがとう」

だから、きっとそう、珍しいものだったから…思わず微笑みがこぼれ落ちた。

「いえ。それと殿下たちがいらっしゃいます」

本当だ。

王子とレティシアが私に向かって歩いてくる。


「やあ、アリシア嬢。楽しんでるかい?」

「はい!とっても!」

「王子さまもレティシア様も本当に綺麗でした!」


あの後、2人に何があったのか私は知らない。

確かめられない。

でも、さっきの2人の姿を見ていたら、私の知りたかった事への答えは出ている感じがした。


「ホンモノを見せてくれてありがとうございます!」


すると、レティシアが小首をかしげた。

初めてみた…本当に不思議そうな表情。

レティシアはそこまま私に問いかけた。


「ホンモノってなんですの??」

「えっと、つまり、王子さまとレティシア様はホンモノの愛で結ばれてるんだなって」

「はあ?でしたら、私と殿下はホンモノではないかもしれません」


(は……?)


「気持ちは移ろいゆくものです。

私の殿下への想いが同じ時なんてありませんでした」

「あなたに問い詰められなかったら、あのまま消えて無くなっていた想いかもしれません」

「だから」

「試してみましょう」

レティシアは優雅に微笑んで私に宣戦布告をした。


「私とあなたがホンモノになれるか」

「私とお友だちになってくれませんか?」



私の名前はアリシア!

乙女ゲーム「トゥルー・ピュア・ガーデン」の主人公。

明るくて無邪気で少し天然…な仮面を被ったずるい女。

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