4あ!野生の怪物がとびだしてきた!
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「鬼か……」
おじいさんは少しだけ苦い顔を見せ、そして語ります。
「鬼は強い。大きな身体に途方も無い怪力。剣よりも鋭い爪に、鉄をも噛み砕いてしまう強靭な牙……人間がかなう相手ではなかった」
「だが、一度は倒せたンだろ?」
「ああ。桃太郎ときび団子の力を得たお供達が倒した」
余談ですが、この一度目の戦いは誰もが知る所の物語として広まっていました。
「聞かせろ。一度目と二度目の違いを。どォして二度目は一方的な展開になったってンだ?」
「……理由は大きく三つある」
おじいさんは三つ指を立て、一度目の戦いと二度目の戦いの違い、敗因を順に説明していきます。
「まず一つが数じゃ。やつらはその数を急速に増やした。数字は定かではないが、万を超えるという話もある」
一つ目の理由だけでも絶望的です。しかし、絶望はまだ二つ残されています。
「もう一つが妖術じゃ。やつらは妖術を使うようになった」
「妖術だァ?」
「坊主と同じように不思議な力を使うのじゃ。炎や雷を操ったり……いろいろあるみたいじゃが、妖術に関しては分かっていないことが多い。人間達は妖術をほとんど使われるまでもなく負けてしまったのじゃからな……」
数。妖術。そして、残る一つ。
「最後の理由は新たなる鬼の王、滅鬼じゃ。桃太郎は滅鬼になす術なく負けてしもうた」
「……そいつはどンな妖術を使う?」
「……分からん。桃太郎は妖術すら使われずに負けてしもうたのじゃ」
数、妖術、そして新たなる鬼の王『滅鬼』……人間がどうにかできる相手ではありませんでした。
「期待してねェが確認までに聞いておく。やつらはどォやって力を得た?」
「どうやってと言われても……気がついた時にはとしか言えんな」
「そォかよ」
少年はこれ以上聞くことは無いと言わんばかりに、会話を切り上げて立ち上がります。
「……そろそろ行くぞ」
「うむ」
「そうね」
三人は休憩を終え、再び洞窟の奥へと進んでいくのでした。
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先へ進むこと半刻程。とうとう、
『見つけました!あれです!』
「「!」」
女神様のお告げがありました。 少し盛り上がった岩場の上に、それはいました。
『………………』
人型の怪物です。後頭部にある丸みを帯びた二つの角……あるいは耳のようにも見えます。長く、太く、しなやかに伸びる大きな尻尾。手足の指は玉のように丸く、不思議な形をしています。
その怪物は閉眼しており、自分の世界に没頭しているようでした。
『………………』
怪物は三人の存在に気がつくとゆっくりと目を開けます。
「あれに団子を食わせりゃいいンだな?」
少年は一歩踏み出し、怪物と対峙します。
『はい。ですが、一筋縄ではいきません。戦って弱らせてから食べさせることをおすすめします』
「だろォな。向こうもやる気みたいだぜ」
怪物はゆっくりと右手を上げ、照準を合わせるように少年に向けます。
『……!』
「あァ?」
ドン!
「っ!?」
見えない何かが迫ったと少年が感じた時には、少年の身体は吹き飛ばされていました。 少年が道中の怪物にしてきたことと同じように、今度は少年の身体は洞窟の壁に強く叩きつけられました。
「坊主ぅう!」
「礼太君!?」
おじいさんとおばあさんの悲痛な叫びが聞こえてきました。 しかし
「騒ぐな。どォってことねェ」
少年は全くの無傷でした。
「おぉ!」
「大丈夫なのね!?」
しかし、傷こそ無いものの少年には一つの懸念が生まれていました。
(念動力系の能力……人間以外の能力者か)
それだけではありません。少年はただの念動力なら吹き飛ばされることはありませんでした。
(こっちの能力とは根本的に別物ってワケか……)
少年は再び怪物ににじり寄ります。
『………………』
怪物も少年の異質を感じ取ったのか、場の空気が張り詰めます。
「行くぞ」
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