5こうかはばつぐんだ!
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少年がつま先で地を軽く突きます。
それを合図に、少年の身体は超神速で怪物に肉薄します。
『ッ!』
怪物も反応し、手の照準を再び少年に合わせ、力を発揮します。しかし、
「甘ェ!」
『ッ!?』
今度は怪物が吹き飛ばされる番でした。 少年は何をするでもなく、怪物の攻撃を甘んじて受けただけで、怪物を吹き飛ばしてみせたのです。
逃げ場の無い狭い岩場に追い詰められた怪物に、少年は止めの拳を打ち下ろします。
「相手が悪かったなァ!」
『!』
ドガァアアアン!
大岩をも粉砕し、生じるは爆発の如き衝撃波。人智を超えた破壊力。
しかし、少年の拳には手応えがありませんでした。
(消えやがった……?)
気配を辿り、少年が振り向いた先にはすでに怪物が牙をむいていました。
鞭のようにしなる巨大な尻尾が、少年の顔面を破壊せんと迫っていたのです。 しかし、
「無駄だ」
『!?』
凶悪な尻尾の鞭は少年の顔面に触れたと同時に強く弾き弾き返されます。
突如として跳ね返ってくる尻尾から伝わる莫大な衝撃を持て余し、怪物はきりもみするように吹き飛ばされてしまいます。
止めの一撃を放たんと少年が動きを見せた途端、怪物の姿が再び消えます。
(この感じ……空間転移だァ?念動力に空間転移……複数の能力を行使することは不可能なはずだが……まァ関係無ェ)
少年の世界では起こるはずのない予想外なことの連続ですが、少年の優位は揺らぎません。
「どンな能力だろォが関係ねェ……とっとと無様にくたばりやがれェ!」
怪物の気配を辿り、少年はひとっ飛びで怪物に肉薄します。 そして、必殺の拳を怪物に叩き込もうと、
『いけません!』
「あァ?」
女神様の警告。しかし、少年は警告の意味を手遅れになると同時に理解します。
(動けねェ……だと……!?)
ズバァアアン!
「ガハッ!?」
今度こそ、怪物の尻尾の鞭が少年を捉えます。 少年は腹部に生じた爆発的な衝撃によって吹き飛ばされ、地面に叩きつけられながら転がっていきます。
「ク……ソ……!」
ひとたまりもない一撃でした。腹部は裂傷を負い、地面に打ち付けられた場所は鈍痛で悲鳴を上げ、視界が引っくり返ったように揺れます。
それでも、少年は奇跡的に生きていました。
『伝説のきび団子の効果ですね。あなたの生命力は飛躍的に向上した状態にあります。おじいさんに感謝ですね』
「……ンなこたァどォでもいい……野郎ォ……何をしやがった……?」
『あなたの力を無力化したのは、かなしばりの力です』
かなしばり。怪物が発揮した三つ目の異能です。
『それほど長い効力はありません。その証拠に現在はあなたの力は戻っているはず。ですが……』
「こうかはばつぐんだ……ってなァ」
『その通りです』
命こそ繫ぎとめたものの、紛れもない深手です。次はありません。 それでも少年は立ち上がります。
「もうやめて!礼太君!」
おばあさんが少年に駆け寄ってきます。そして、おばあさんだけではありません。
「……すまなんだ。考え無しに巻き込んで……坊主をここまで傷つけてしもうた……」
おじいさんも少年に駆け寄り、そして怪物から少年を背で庇います。
「ごめんね、礼太君……ごめんね……!」
おじいさんとおばあさんは涙を流し、少年に謝ります。
「ばあさん。坊主を連れてここから逃げるのじゃ。ワシがこの怪物を足止めする」
「おじいさん!」
「勝手に盛り上がってンじゃねェ。どけ」
「なっ!?」
少年はおじいさんの決死の覚悟を無視し、おじいさんを後ろに放り投げます。
しかし、おじいさんの身体は羽のようにフワリ飛んでいき、岩場に軽く尻もちをつくのでした。
「礼太君……どうしてそこまでするの?あなたがここまで傷いても戦う理由なんて無いじゃない……」
「巻き込ンでおいてよく言うぜ……」
「それは……」
少年は面倒臭そうに頭をかいて、言います。
「……最強だの無敵だの、今のオレにはどォでもいい。けどな、負けて這いつくばったまま終わっちまうザコにまで成り下がった覚えはねェんだよ……!」
少年の瞳には熱が宿っていました。そしてその熱は次第に膨れ上がり、やがてギラギラと彼の魂を焦がすのです。
「待たせたなァ……つーわけで、第2ラウンドといこォじゃねェか……!」
少年がつま先で地面をつき、再び怪物同士が激突します。
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