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3怪物の世界

読んでくださってありがとうございます。

次の世界は果たしてどのように突飛な世界なのか。身構えていたおじいさんとおばあさんでしたが、

「ここは……洞窟ですか……?」

「そうじゃな……」

「……どォやら話はマジだったみてェだな……」

状況が大雑把にしか掴めない三人に、女神様が語りかけてきます。

『ここはモンスター……怪物が蔓延る世界です。三人にはこの洞窟の奥にいる怪物を仲間にしてもらいます』

「か、怪物……ですかい?」

「少し恐いですね……」

ゴクリと喉を鳴らすおじいさんとおばあさん。

「行くぞ。ジジイ、ババア」

「お、おい坊主!」

「待って礼太君!」

少年は恐れを知らぬようにスタスタと先を歩きます。

おじいさんとおばあさんも慌てて後に続きます。

少年はチラリと後ろを振り返り、

「ちっ……」

不機嫌そうに舌を鳴らすと、歩く速度が少しゆっくりになるのでした。

「坊主……」

「礼太君……」

おじいさんとおばあさんは今度こそ三人一緒に歩いていきます。

『そこを左です』

女神様の導きに従って洞窟の中を進んでいくと、

「な、なんじゃあれは!?」

「か、怪物です!」

現れたのは大きな怪物でした。

鬼のように大きく、岩山のような体つき。肌も岩でできているようで、見るからに頑丈そうです。 特徴的なのは鼻にあたる場所に立派な大きな角があることです。 その怪物は仁王立ちし、三人に睨みを利かせてきます。

そんな怪物ですが、

『あれはハズレです』

「何じゃと……?」

女神様が目的の怪物でないと告げました。

『あれも能力的には悪くないですが、水と草が4倍……こほん。水に弱かったりと弱点も多いのです。今回は無視してください』

「無視と言われましても!どうしましょう!?おじいさん!」

「あちらが無視してくれませんじゃろうて……」

命の危機を感じるおじいさんとおばあさんでしたが、

「……下がってろ」

なんと少年が怪物を前に一歩踏み出します。

「礼太君無茶よ!逃げましょう!」

「そうじゃ!危険じゃ!」

おじいさんとおばあさんは無謀としか思えない少年の行動を止めます。しかし、

「あンなザコ、危険でも何でもねェ」

少年は止まりませんでした。

怪物と少年の間に一触即発の空気が生じます。やがて、

「グォオオオオ!」

先に仕掛けたのは怪物の方でした。

岩山のような身体が恐ろしい程の速さで迫ってきます。この突進を受けてしまえばどんな者もひとたまりもありません。

対する少年の取った行動は非常に単純でした。

ゆらりと怪物に近づき、右の拳をぶつけるだけ。

「坊主ぅ!?」

「礼太君!?」

少年が木っ端微塵に弾き飛ばされる。そんな光景が訪れるはずでしたが、

「グァアアア!?」

弾き飛ばされたのは怪物の方でした。

怪物は洞窟の壁を壊しながら、遥か遠く、見えなくなるまで飛んでいったのです。

少年は先ほどの激突が何事も無かったかのようにその場に立っているのでした。

「坊主……おまえ何をしたんじゃ?」

「……言ってもどうせ分かンねェよ。行くぞ」

少年は女神様のように説明してくれるでもなく、また道を進んでいくのでした。



洞窟を進む道中、先ほどとは異なる怪物が度々姿を現します。

水辺の近くに二足歩行のアヒルの怪物が出てきます。

「女神様!あの怪物ですかな!?」

『あれは半端な力しかないザコです』

はたまた、キノコを背負ったカニのような怪物が現れたり。

「女神様!あの怪物ですか?」

『胞子がウザいだけで燃やせば一発のザコです』

お腹に卵を宿した丸く可愛い怪物も出てきました。

「女神様、あの可愛い怪物は?」

『あのような悪魔を従えて戦う人は人としてどうかしています』

このような具合に、なかなか当たりは出てきません。

立ちはだかってくる怪物達を少年が退けながら、奥へ、奥へ進んでいきます。 やがて、少し開けた場所に出たところで、

「……少し休むか」

「何のこれしき。ワシらはまだまだ行けるわい」

「そうですよ礼太君。皆の苦労を思えばこれくらいどうってことありません」

おじいさんとおばあさんはまだまだ元気と言いますが、

「老いぼれどもがバカ言ってンじゃねェ。自分の歳を考えやがれ」

少年はおじいさんとおばあさんの申し出を断り、自身が岩場に腰掛けます。 露払い役である少年がこの調子では、おじいさんとおばあさんも休む他ありません。

「……すまんな」

「……俺がかったるくなっただけの話だ。余計な気を回してンじゃねェ」

「ありがとうね。礼太君」

元気と口にしたものの、おじいさんとおばあさんには少なくない疲労がありました。

おじいさんとおばあさんは少年の善意に甘え、腰を下ろします。

しかし、少年は腰を下ろさずに、スタスタとこの場を離れていきました。

「「……?」」

少年が向かったのは水辺の方でした。 二人からは少し遠い位置にいるので何をしているか詳しく分かりませんが、岩を砕くような音が聞こえました。 やがて、用を終えた少年が戻ってきます。

「飲め」

岩で出来た器を、おじいさんとおばあさんに差し出してきます。 中身は水でした。

「水質は加工したから問題ねェ」

「ありがとうねぇ、礼太君」

「すまないな。坊主」

おばあさんは少年の頭を撫でて感謝を告げました。

「ちっ……」

少年は鬱陶しそうにしながらも、おばあさんの手を振りほどこうとはしませんでした。

久々に訪れたまったりとした時間。 おじいさんとおばあさんの世界が鬼に奪われてから初めての穏やかな時間かもしれません。

おじいさんとおばあさんの疲労が少し和らいだ頃に、少年が話を切り出してきます。

「いい機会だ。鬼について詳しく聞かせろ」

続きもお願いします。

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