episode89〜由々しき事態〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
「カヌアッ!」
やっと事の重大さを知り、カヌアの元へと辿り着いたウィル。
遅いよ!あんた何してたん!?とお思いでしょうが、ウィルがいた場所は、カヌア達がいたところと端から端の位置関係にあった。
しかも広大な社交場、この人数の参加者、ガッチリ包囲してくる女性達。
この状況はウィルがもってしても、カヌアの所へ辿り着くのには時間がかかった。
ウィルは血だらけの布を握りしめるカヌアの手を見た。
一瞬で顔色が変わるウィル。
「何が…あった?」
「あぁ、これですよね?ある意味自傷行為的な?ふふふ、大丈夫です!痛いですけど…あの、このドレス…すいません、汚してしまって…せっかく用意していただいたのに…」
「何を言っている!?こんな怪我までして…血が…何でそんな笑って…とりあえず早く手当を!」
するとカブラが急いで用意した物で、すかさず手当してくれた。
「応急処置なので、すぐに自室できちんと手当てしましょう」
と言うカブラは、少し強めに止血した。
「いっ痛ーっい!これ絶対お風呂染みるやつですよね!?」
カヌアは心配させないように明るく言う。
しかし、そんなカヌアにウィルは険しい顔で言った。
「何度も…何度も言っている…無茶はするなって…何でこんな事してまで…」
しかし、カヌアは微笑む。
「ウィル様?よぉく考えてみて下さい?首に傷がつくのと、手のひらに傷がつくの、どちらの描写がヤバいですか?」
(え?ヤバい?何語だ?)
と思いながらも、律儀にウィルは答える。
「えーと…」
こっち、と言うふうに手のひらを見せるウィル。
カヌアはコクッと頷き続けた。
「ふふ、ではその二箇所では、どちらの方が痛くないですか?」
こっち、とウィルはまた手のひらをかざす。
「ですよねぇ、ふふ、なのでこれで良いんです!私の手のひらでお二人の命が…彼らの心が救われたのならば」
カヌアは曇りない笑顔で言う。
しかし、ウィルは心配が溢れて、ため息をついた。
「はぁ…そう言う事じゃない…俺が言いたいのは…カヌア、もっと自分を大事にしてくれ。こんなんじゃ俺は気が気じゃなくて、心臓がいくつあっても足りない。だからもっと…」
そんなウィルの言葉を聞いて、カヌアはこれではダメだと思った。
そして自分の意思とは違う方向の言葉を出した。
「ウィル様…いつも心配ばかりかけてすみません…しかし…ウィル様はこの国の頂に立つお方…こんな私なんかに大切な時間や、その何個もある心臓とやらをかけてもらっては、ウィル様の時間がもったいないです…ほんと、私にはとてももったいない…だから…」
と言ってカヌアは黙り込んだ。
するとウィルは力強く、そして優しくカヌアを包み込むように抱きしめた。
「その頂に立つためには、カヌアが必要なんだ。カヌアじゃないとダメだ。俺は…」
(え…?な…んで?ダメだよ…そんなことされたら本気で勘違いしちゃう…本気で…好…きになっ…ちゃう…)
と思いながらウィルの身体を押し返した。
カヌアはどうしたら良いかわからなくなり、涙を溢していた。
それに気が付いたウィルは、とても動揺していた。
「カ…ヌア?なぜ…泣いてる?」
「あ、あの…もう…訳がわかりません…頭の中が大混乱ですっ!!ウィル様のせいですよ!!何なんですか!!どうして…ウィル様はこんなに…人の頭の中を動く歩道のように永遠と動き回ってるんですかっ!?追い出せなくなるじゃないですかっ!追い出せっなっ…くぅ…う…うわぁぁぁあんっ!!どうしたらいいんですか!?何で困らせることばっかり言うんですか!?」
カヌアは怒ってるのか、泣いてるのかわからなくなり、喚き泣き出した。
「え!?あ、こ、困っ!?えっ!?」
すると側で終始見守っていたカブラが、見かねて大きなハンカチをカヌアに渡した。
「ウィル様…とりあえず、傷の手当てをしに部屋へ行きましょうか?」
ウィルの肩をポンと叩きながら、悟ったような顔でカブラは言った。
その後手当てをするために、カヌアの部屋へと移動した。
ウィル自ら、カヌアの手の傷を手当てしてくれている。
その場の空気は重く、ウィルは冷や汗をかいていた。
「ヴゥ…ズズ…スンッスンッ…ズ」
カヌアは鼻を啜りながら、まだ泣いている。
そして、ウィルの動揺も加速していた。
その瞳はカブラに向けられていた。
(どうしたらいい)
ウィルはそう合図を送る。
(自分でどうにかしてください)
とカブラは念を送る。
少し経ち、落ち着き始めたカヌアが口を開いた。
「あの、ウィル様……先程はほんの少しだけ取り乱してしまい申し訳ございませんでした」
(え?あれでほんの少し?)
とカブラは目を見開いた。
(もっと取り乱したらどうなるんだ?…少し…見てみたい)
とウィルは変態思考に移行していた。
しかし、頭を切り替えて言う。
「カ、カヌア…その…困らせるつもりはなかったんだ、ほんと…ただ気持ちが行き過ぎてしまっただけで…すまない…でも先程言ったことは…」
「違うんです…私の問題なんです…ウィル様に当たってしまいすいませんでした。先程のお話ですが、ウィル様は私の事が必要だとおっしゃいましたよね?それは…つまり、戦力としてですか?私が今回の大会で収めた成績が、良かったからそれを見込んで?……そう、ですか?」
(お願い!そうであって!頼む頼む頼む…)
カヌアは自分の気持ちを逸らすために、他の思考に塗り替えた。
そして願う。
全てを…この国を担うウィルのために。
(え…?何でそうなる?)
ウィルも困惑し始めた。
「あ、いや…確かに今回の事でかなりの腕なのはわかった。しかし、そういうことでは…」
すると部屋の扉からドアを叩く音がした。
外からワイムらしき声がした。
「急ぎ用があります……」
先にカブラに近づくワイム。
「何だと!?」
カブラが耳打ちをされて驚き、声を上げた。
それに反応したウィルは聞いた。
「どうした?」
「今しがた、サルミニア国殿下達の寝室が荒らされていたとのことです。その場で怪しい男を捉えており、所持品にこれが…」
カブラはそう言うと、王家のコインを何枚か見せた。
「何でこんなに?とりあえず向かうぞ!」
そのウィルの言葉に続いて向かった。
そこにはサルミニア国の双子の王子達もいた。
駆けつけたウィルは状況を説明しろと、従者に言った。
「はい。この使用人が部屋の前を歩いていたら、何やら大きい物が割れる音がしたとのこと。そのため近づくと部屋の扉が少し空いており、覗いたところ黒いフードを被った男が、この者を捉えていたらしいのです」
その目撃したという使用人は、カヌアの知る人物であった。
「リリィ!?あなたが目撃したの!?大丈夫?怖かったでしょ?」
カヌアは心配して声をかけた。
リリィのフラフィーはとても怯えていた。
しかし、リリィはしっかりとした口調で説明し始めた。
「はい。部屋の扉を開けた時に、わたくしは驚いて声を上げてしまいました。そのせいでそのフードの男の人は、逃げてしまいました。申し訳っ…申し訳ございませんっ!」
カヌアはリリィの背中を優しくさすった。
(リリィの声で他の従者が来て、取り押さえたってところか…それにしても黒いフードの男って…)
すると、ウィルが取り押さえられている男に言った。
「何故ここに忍び入った?」
黙る男。
「このコインは?王族のコインだろ?なぜお前がこれを持っている?誰の指示だ?」
ウィルが更に詰め寄る。
その手は男の頭を握るように掴んでいた。
「離せ!!俺じゃない!黒いフードの男がやった!」
カヌアとウィルには視えている。
男のフラフィーが嘘をついているのが。
「黙りなさい。残念ね、あなたが嘘をついてるのは丸わかりなの。正直に言わないと、この顎砕けるわよ?」
今度はカヌアが、男の顎を握るように掴んでいた。
その笑顔は恐ろしいほど、目がだけが笑っていない。
「もう一度聞く。ここで何をしていた?目的は?」
やはりその男は言わない。
「そうか…そう言うことならこの頭、今すぐにかち割っても良いんだぞ?」
ニヤリとしながら、今度はウィルが言った。
その目は恐ろしいほど笑っていない。
さすがに二人からの殺気を受けて、本当にやられると思ったのか男が口を割った。
「その…王家のコインをすり替えようとした。だが、どこを探しても見つからずにいたら、いきなりフードを被った男が…襲いかかって来たんだ…あの男…全然気配を感じなかった…」
その言葉を聞いて双子の王子達が応えた。
「あ、僕達、コインは持ち歩いてたから」
「いつも持ち歩いてるからね…でも何で…」
「トラストル家の旦那から依頼された」
そう男が言うと、ウィルが厳しい顔をして言った。
「トラストル家!?またか…これはいよいよだな…」
「どうしてその人はこんなこと…」
「そのトラ…ストル家の人はこの国の人なの?」
ウィルは二人に報告しなければならない事があり、改まって姿勢を直した。
「レアス様、リアス様。御二方に大事なお話がございます。応接間へとご移動願えますか?」
そうウィルが言うと二人は、頷き部屋を後にした。
カヌアは国同士の話し合いだと思い、共に行くのは控え…ようと思ったが、ウィルがそうさせてはくれなかった。
そうしてカヌアも同席し、昼間のコインの融解による疑惑の話をするのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




