episode87〜疑いが確信に〜
初連載の続きです。なんとか毎日投稿出来てます。ゆるく読んでいただければと思います。
今夜は二日目の社交界が始まる。
その前にカヌア達は、確認したい事があった。
よって今から先日ウィルと約束した場所に、行く事となった。
そう、例のコインの件を調べるため、フェクダへと。
その目的地である、ファイスの所へと足を運んでいた。
朝早く出発したため、工房ではなく住まいの方の扉をノックした。
朝食後であったのか、夫妻はお茶を飲んでいたゆっくりしていた。
「はい…っ!?ウィ、ウィルテンダー殿下!?それにカヌアさんまで!?朝早くお越し頂いて…その一体いかがされました?ハッ!もしや、先日手入れをした剣に不備が!?申し訳ございっ…」
扉を開けて慌てて謝ろうとしてきたのは、ここの店主であるファイスだった。
彼は車椅子なので、カヌア達より少し目線が下になる。
しかし、そんなわけがないので、すかさずウィルがそれを制した。
「あ、いや、違うんだ。むしろこちらが約束もなく、朝から来てしまいすまない」
そう言うウィルに、更に驚いてファイスは慌てた。
「そっそんな、滅相もございません!いつでもいらしていただいて構いませんので!どうぞ中へ」
ファイス夫妻は嫌な顔せず、家の中へと案内してくれた。
「それで、本日は一体どういったご用件でいらしたのでしょうか?」
少しドキドキしながら、ファイスは聞いた。
「あぁ、実は少し頼みたいことがあってな。これなんだが…」
ウィルは例のコインを、ファイスに差し出して見せた。
「これは…もしかして、サルミニア国の旧硬貨では?昔に王族のコインとして作られたものですよね?」
ファイスのその言葉を聞いて、ウィルとカヌアは顔を見合わせた。
「これを知っているとは…さすがだな。実はこのコインをある温度で熱して欲しいんだ。今流通しているサルミニアのコインと比較したくてここへ来た。できるか?」
「なるほど。周りに施されているシリコンブロンズが、その温度で溶けるかどうかを調べたいのですね?つまり殿下はこれが本物かどうかを見極めたい…と言うことでしょうか?」
ファイスの早い想察と理解力に、ウィル達は大いに驚いた。
「そういうことなら話が早い。それを試したいのだが、思い当たる所がここしかなく…その…ここなら目立たずにできるかと思い…」
歯切れの悪い言い方のウィルを見て、ファイスはさらに感を働かせて言った。
「ここなら人の出入りもほぼないですし、もちろんわたくしども夫婦は、この事を口外したりは致しません」
(うわっ!すごい…鍛冶の腕も良いし…もったいないなぁ)
カヌアはファイスを称賛の目で見つめる。
すると、同じような事を思っていたのか、ウィルが口を開いた。
「ファイス…ここまで頭が回るとは…恩にきる。更に無理を言うようですまないが、出来ればこれからやってもらいたい。頼めるか?」
「この金属を熱するのに、かなりの高温にする必要がございます。少しお時間がかかりますが、それでもよろしければ…」
ファイスのその言葉を聞いた瞬間、ウィル…ではなく、カヌアが前のめりに出て来て言った。
「ありがとうございますっ!鍛治の腕もいい!話もわかる!天才ですかあなたは!!ロディーさん!あなたは幸せ者ですね!こぉんな素敵な方と、生涯を共にできるなんて!いつまでも待ちます!」
(社交界を蹴ってでも!いや、むしろ是非夜までかけて欲しい!)
そのカヌアの悪巧みの思惑は、すぐに打ち砕かれることになるのは、言うまでもない。
ファイスに対してのカヌアの言動に、こちらの男も思うことがあったらしい。
(え?カヌアはファイスみたいな男を好むのか?新事実だ…)
勘違い発生事例がまた起きた。
そして、カヌア達がお茶菓子をほうばりながら待っていると、ファイスが家の扉を開いた。
「準備が整いました。こちらへ」
ファイスがそう言って、工房の方へと案内してくれた。
その中は熱気がすごく、瞬時に汗が吹き出した。
念の為、溶接用のマスクを装着させられた。
窯の中は現コインが溶け、王族のコインが溶けない温度に調節されていた。
サルミニアの現コインと、例の怪しい王族のコインを並べて入れた。
すると、現コインはゆっくりと溶けていき、原形をなさなくなった。
その隣の王族のコインはというと…
「あ!溶けてる!?」
カヌアが声を上げた。
そう、両方のコインは、同じ速度で同じように溶けていたのだ。
「ウィル様…やはり…」
「あぁ。この王族のコインは偽物か…どこで誰がこんな物を…」
ウィル達は、その事実を知れた事で、リアスの疑いが晴れて良かったと思った。
その代わり、更なる問題を抱えてしまったのは否めない。
工房の外に出てて少し涼んでいると、溶けた二つのコインを冷ましてファイスが持って来てくれた。
「礼を言う、ファイス。この借りはいつか必ず返す。なんなら王宮専属の鍛冶屋として、取り繕うことも可能だが…」
と言いかけたウィルに、ファイスは笑顔で制した。
「ウィルテンダー殿下、お気遣い痛み入ります。しかし、私達はここで細々と出来るだけで、十分ですので。もちろん何かご依頼があればいつでも駆けつけます」
「そうか。あと…念を押すようで申し訳ないのだが、このコインの件については、口外しないように願いたい」
ファイス夫妻はもちろんですと承諾してくれた。
王宮への帰り道、馬車の中でカヌアは羨ましがっていた。
「はぁ〜あんなに腕が良くて人が良いのに、もったいないですよねぇ。でも、やっぱり好きな人とゆっくり時間を分け合いながら、日々を過ごすのが幸せなんでしょうね!いいなぁ〜」
「その…カヌアはファイスみたいな人が…好みなのか?」
ウィルは直球を投げた。
「え?あぁ、いえ。ファイスさんがというよりは、私もそういう人と一緒になれたらなぁって思ったんです。へへへ」
そうニコッと笑うカヌアにウィルが叫んだ!
心の中で。
(それは俺がなるっ!!絶対に!)
ここまで読んで頂きありがとうございました!
突っ走って書いているので、何かお気づきの点があればコメントの方よろしくお願いします。
大変恐縮ですが、評価を頂けると幸いです。




