第25話「強制的な栄転と、何もない大地(グリーンフィールド)」
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ルークが絶対安眠チェアで究極のサボりを謳歌していた平和な日々は、唐突に終わりを告げた。
「ルーク殿! 素晴らしいお知らせです!」
ある朝、アリスが領主の館での定例報告から、鼻息を荒くして帰還した。
「領主閣下が、ルーク殿のこれまでの偉業――治安維持、物流網の回復、そして何より『完璧な組織マネジメント能力』を高く評価なさいました!」
「……嫌な予感しかしないんだが。まさか、また面倒な役職を押し付けられるのか?」
ルークは安眠チェアから身を乗り出し、胃の辺りを押さえた。
「押し付けるだなんて! なんと、王国の東端に広がる未統治エリア『サン・アンド荒野』の初代総督への大抜擢です! まっさらな土地を、一から貴方の手で開拓・統治する権限が与えられたのです!」
「サン・アンド荒野……?」
ルークは手元の資料を漁った。そこは魔物が跋扈し、無法者の盗賊たちが縄張り争いをしている、インフラも法律も存在しない完全な「更地」だ。
「断る。冗談じゃない! 私はこの完成された安全なギルドで、定時までハンコを押すだけの生活を愛しているんだ! なぜわざわざ、電気も水道も(魔法的な意味で)通っていない無法地帯にゼロから工場……いや、街を作らなきゃいけないんだ!」
「ご安心ください! 私はすでに『ルーク殿なら、あの混沌の地を完璧な秩序で染め上げるでしょう!』と、ルーク殿に代わって力強く受諾してまいりました! もちろん、私とザックも総督補佐として同行いたします!」
アリスが親指を立てて、爽やかな笑顔を見せる。
(この筋肉CEO……!! 私の意図(事なかれ主義)を完全無視して、勝手に超大型の新規プロジェクトを立ち上げやがった!!)
ルークは絶望のあまり、安眠チェアに深く沈み込んだ。
前世で、無茶な海外の新規工場立ち上げプロジェクトに巻き込まれた先輩が、ゲッソリと痩せ細って帰ってきた姿がフラッシュバックする。
しかし、領主(と王家)からの直々の任命である。ここで逃げれば反逆罪だ。
「……わかった。行くしかないようだな。地獄の開拓事業に」
ルークは涙目で、辺境への赴任準備を始めるのだった。




