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第11話「過剰コンプライアンスと、正義の定義変更」

「ルーク殿! 本日の『都市経済基盤・防衛プロジェクト』における成果をご報告いたします! 悪質な経済テロリストを三名、拿捕いたしました!」


ギルドの執務室のドアが勢いよく開き、白銀の鎧(ただし武器は木彫りのバッジ)を身につけたアリスが、胸を張って入ってきた。

その後ろでは、ザックが縄で縛られた三人の怯える市民を引きずっている。


「……アリス様。経済テロリストとは?」

ルークは嫌な汗をかきながら、手元の書類から顔を上げた。


「はい! 中央広場にて、リンゴの芯を路地に投げ捨てるという『環境破壊工作』を行った男。さらに、立ち小便という『公衆衛生に対するバイオテロ』を企てた酔っ払い二名です! 即刻、極刑(斬首)が妥当かと存じます!」


「ひぃぃっ! 勘弁してくだせえ! たかが立ち小便で首を刎ねられてたまるか!」

捕まった男たちが涙ながらに命乞いをしている。


(この筋肉令嬢、正義のハードルが高すぎる……! このままではギルドが市民から恨まれ、暴動が起きて俺の平穏が消し飛ぶ!)


ルークは咳払いをして、立ち上がった。

「アリスCEO。貴女の徹底した防衛意識は素晴らしい。しかし、当ギルドでは『顧客満足度(CS)』と『段階的指導』を重視しております」


「しーえす……? 段階的指導?」

アリスが首を傾げる。


「ええ。彼らの行為は確かに重罪(※個人の感想です)ですが、即座に極刑を下せば、恐怖政治となり経済は停滞します。我々が目指すのは、市民が自発的にルールを守る『持続可能な社会サステナビリティ』の構築です」


ルークは前世でクレーム対応マニュアルに書いてあった横文字を適当に並べ立てた。


「ですので、初回は『厳重注意イエローカード』として、彼らに広場の清掃を一週間命じる『ボランティア刑』を適用します。これにより、彼ら自身に環境美化の精神を学ばせるのです。これこそが、真の教育的指導エデュケーションです」


アリスの青い瞳が見開かれた。

「なんと……! 悪をただ切り捨てるのではなく、労働を通して更生させ、社会の歯車として再利用する……! 血を流さずに平和を保つ、それが『さすてなびりてぃ』!」


アリスは感動のあまりワナワナと震え、捕まった男たちに向き直った。

「聞きましたね! ルーク殿の慈悲に感謝し、一週間、死ぬ気で広場を磨き上げなさい! 少しでもサボれば、私が直接『えでゅけーしょん(物理)』を施します!」


「や、やります! ピカピカにしますぅ!」

男たちはザックに連れられて、逃げるように広場へ向かっていった。


こうして、ルークの適当な言い逃れにより、アリスは「悪を斬る」ことから「悪を更生させる」ことへと、正義の定義を一段階アップデート(勘違い)してしまったのである。

アリスの極端な真面目さと、ルークの保身から生まれる勘違いの連鎖を軸に物語が少し進みます。

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