『しろと十ぴきの仲間たち 〜たいへんだ、巨大おやつ!?〜』
春の村は今日もにぎやか。
そして、にぎやかにしている元凶は、だいたい猫たちである。
今日も畑の小道を、十一匹の猫がドドドドッと走っていた。
先頭は白猫――しろ。
その横で妙に偉そうに歩く黒猫――くろ。
その後ろには、ぽやっとした子や、やたら足の速い子や、理由もなく転がる子まで、見事にまとまりのない猫軍団。
「ねぇ、くろ! 本当にあるの?」
「あるともさ! 村外れの丘の向こうに……」
くろは胸を張る。
「――巨大おやつの山が!」
「おやつーー!!」
「食べ放題!?」
「夢……じゃないよね!?」
猫たちが一斉に跳ねあがる。
その時。
「……何やってるの?」
呆れた声が背後から聞こえた。
ルークだった。
その隣でミーナがぱちぱち瞬きをしている。
「しろたち、また変なこと言われて走ってるの?」
「変って言うなよ、ルークくん! これは夢と希望の大冒険だぞ!」
胸を張るくろ。
「ちなみに誰情報?」
「ぼく」
「自分か」
ルーク、ため息。
ミーナはむしろ楽しそうだ。
「いいよ、行ってみようよ! だって猫たち、すっごくワクワクしてるもん!」
ルークは少し考え、結局苦笑してうなずく。
「……わかった。危なくないところまでな」
■ 丘のむこうは、ワクワクのむこう
猫十一匹+子ども二人の奇妙な旅が始まった。
道中はいつもの大騒ぎ。
「列をつくれー!」
「横に並ぶなー!」
「今はお昼寝タイムじゃない!」
くろの命令は三秒で崩壊する。
しろはと言えば――
「おやつ……おやつ……」
完全に頭の中がピンク色。
そんな彼らを見守りながら、ルークは苦笑いしつつも、どこか楽しそうだった。
ミーナはというと――
「がんばれー! しろ、かっこいいよー!」
全力応援である。
(猫たちのテンションがさらに上がるので、ルークは止めたいけど止められない)
■そして、ついに見つけた――!
丘を越えた先にあったのは。
きらきら光る、まるで宝物みたいな……
巨大な…………
「「「パン!!!」」」
風に揺れ、春の香りをまとった――
巨大な祭り用の丸パンの山!
「あったぁぁ!!」
「夢じゃなかったぁぁ!!」
「くろ天才!!!」
くろ、ドヤ顔。
しかし――
「はい、ストップ」
低くてよく通る声が響いた。
村のおばさまたちである。
春祭り準備のため、パンを焼いて干して冷ましていたのだ。
猫たち、硬直。
くろ、しれっと後ろに下がる。
「これ、村のみんなの分だからね?」
「食べちゃだめだぞ?」
ルークが言う。
猫たちはしゅーん……と肩を落とした。
しろも小さく座り込む。
しっぽだけが情けなさそうに揺れている。
ミーナはそんな猫たちを見て、口をむぎゅっと結んだ。
そして――
「じゃあ、いっしょに作ろうよ!」
ぱぁっと笑った。
「お祭りのお手伝い、したらさ――
きっと“おすそわけ”もらえるよ!」
その言葉に、猫たちの耳が一斉にピンッ!
「手伝う!!」
「働く!!」
「真面目!!」
突然勤勉になる十一匹。
ルークとおばさまたちは笑い、
こうして猫たちの“パン守り隊”が誕生したのだった。
■ しかし猫である
見張り中。
「……いい匂いするな」
「するなぁ」
「ちょっと齧ってもバレないんじゃ」
その瞬間。
背後の影が伸びた。
ギャリソン登場――ではない。
今回は畑の見回り役の村のおじさんである。
「ダメ」
猫十一匹、正座。
だが、不思議と怒られなかった。
「守ってくれてるんだろ?」
おじさんがそう言って笑ったからだ。
胸を張るくろ。
(さっき齧ろうとしたくせに)
しろはというと、
「みんなのパン……守る……!」
立派な顔。
ミーナ、拍手。
ルーク、ちょっと誇らしい。
■ そして夜
春祭りの灯りがともり、パンはついに配られた。
村の人も、子どもたちも、そして――
「猫たちの分もあるよ」
おばさまがにっこり。
「やったーーーー!!」
丸パンに小さく切れ目を入れ、猫サイズにしてもらった特別パン。
十一匹が一斉にかぶりつく。
「おいしい!!」
「しあわせ!!」
「くろ最高!!(理由はよくわからないがとりあえず褒める)」
しろは満足そうに目を細めた。
その横でミーナもパンを食べながら笑う。
「よかったね、しろや」
「……うん!」
ルークは空を見上げる。
あの日、雪の精が言った“春の約束”。
それが今、こうして笑い声になっている。
ほんの少しだけ胸があたたかくなる。
■ おしまい、だけど
食べ終えた十一匹。
「なぁ、くろ」
「なんだい」
「次は――」
「巨大プリンの山とか、ないかな!?」
「あるかもしれないなぁ!!!」
「行くぞーーーー!!!」
十一匹、再び全力ダッシュ。
ミーナ爆笑。
ルークは頭を抱えつつも笑っていた。
――春は、まだまだ賑やかが止まらない。
おしまい。
『11ぴきのねこ』を何となく思い出したので、こんな感じの物を書いてみました。
「巨大魚編」や「冒険遠征編」もいってみようかな。
『11ぴきのねこ』馬場のぼる著作です。




