71.邂逅
『女鍛冶師はお人好しギルドに拾われました』が9/25に発売しました!
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「さ、さっきより激しくなってるよ!」
「噴火の間隔も短くなっているみたいですね」
「揺れも……大きい」
三人が感じているように、大地の怒りが激しさを増している。
着実に近づく俺たちを拒むように、噴火して流れ出たマグマが周囲を囲む。
さっきみたいに魔法で壁を作っていては先に進めない。
「仕方ないな。強行突破しよう」
「私もそれを推奨するよ。あまり時間をかけていると、相手の苛立ちを増幅させるかもしれないからね」
ローウェンもこれに賛同する。
目的地の山頂まではまだ距離がある。
今のところの最短ルートは二つ。
空を飛んで山頂まで移動するパターンだが、これは聊か危険だ。
マグマから逃れられる方法だけど、遮る物のない上空からの接近を相手が警戒していないはずがない。
よって選ぶべき方法はもう一つ。
マグマを押しのけ安全な道を作り、一気に駆け上がる。
「三人とも準備しろ! いっきに走り抜ける」
俺は両手を合わせ魔力を高める。
目指す山頂への一本道、マグマを遮り快適な道とするならば――
「アイスロード」
合わせた手を離し、しゃがみ込んで大地に触れる。
触れた箇所から氷結が伝播し、地面及び地面と接する鉱物が凍結していく。
さらに生成された氷が壁となり、左右を隔ててマグマを押しのける。
氷のトンネルはまっすぐに山頂まで続く道となった。
「走るぞ!」
「「「おおー!」」」
俺たちは氷のトンネルを走り抜けていく。
マグマが氷を溶かそうとぶつかってくるが、氷は溶けた先から再び凍る。
魔力が続く限り永遠に凍り続けるから、一瞬で全てを溶かされない限りは平気だ。
ソロモンの術式のお陰で、今の俺には魔力切れもない。
先頭を走る俺の隣で、ローウェンが囁く。
「本当によく使いこなすようになったね」
「みんなのお陰だよ」
「違うさ。力そのものは借り物でも、熟練に至ったのは君の成長だ。あの過酷な旅を通して君は驚くほどに成長した。きっと彼らも誇らしいはずだよ」
「そう……だと良いな」
俺の中にいる英雄たち。
共に戦い、力を貸してくれた偉大なる彼らに少しでも認められたのなら誇らしい。
だからこそ俺は挑まなくちゃいけないんだ。
この地を支配する精霊に。
彼らの期待と、呪いの王との約束を果たすために。
そして――
俺たちはたどり着く。
火山の頂上、マグマの噴火口へ。
そこは、一言で表すなら……
「地獄の底みたいだな」
煮えたぎるマグマで空気が赤い。
暑さなんてもはや感じられないほど、肌が常に焼けるように痛む。
魔法による結界で中和していなければ、俺たちは今頃溶けてなくなっていることだろう。
火山の頂上というのは、どこもこれほど厳しい環境なのか?
いや、明らかに異常だ。
そもそも、ただの自然が相手なら、これほどの威圧感など感じないだろう。
「感じるかい? ユーストス」
「……ああ」
感じているよ。
山頂にたどり着いてからずっと、刺すような視線を。
加えて圧迫感に、身体の内から焼け焦げるような力を……
間違いなくここに精霊がいる。
それも、呪いの王とは比較にならないほど強大な力を持つ精霊が。
ただ……
「先生、誰もいないよ?」
「そうだな」
キョロキョロとあたりを見回す。
アリアの言う通り、そこには誰の姿も見つけられない。
刺すような視線はあるのに、姿形はどこにも。
隠れているのか?
それとも単に、見定めているのか。
「ユーストス、あれを見せてみるのはどうかな?」
「あれ?」
「湖の精霊から受け取っていただろう? あの円盤さ」
「ああ!」
精霊の円盤のことか。
世界の精霊と謁見するための許可証。
まだ一つも埋まっていない証の一つを、ここで貰うために俺たちは来た。
円盤を出すことで、俺たちの目的も示すことが出来たら。
「大地を統べる精霊よ! この円盤を見てほしい!」
俺は懐から円盤を取り出し、煮えたぎるマグマに向ってかざす。
「俺たちは世界の精霊に会いたい! そのために貴方の許可がいると聞いた。どうか試練を受けさせては貰えないだろうか?」
問いかけに対しての返答はない。
静寂と呼ぶには荒々しくマグマが音を立てている。
呼びかけては見たものの、答えてはくれなかったか。
「駄目か……」
「いや、そうでもないみたいだよ」
ローウェンの言葉の直後、大地が激しく振動する。
先ほどまでの怒りとは異なる。
俺たちを阻む力とは別……これは誕生、否、目覚めの振動だろう。
地が揺れ、マグマが渦巻き、大気の熱が高まる。
「な、何?」
「師匠これは!」
「っ……熱が増して……」
「マナ! 結界の出力をあげろ! どうやら姿を現したらしい」
感じる。
今度こそ明らかに、圧倒的な存在感を。
渦巻くマグマが蛇のように蜷局を巻き、天へと遡る。
空中の一点に集まったマグマが凝縮し、まばゆい光を放って姿を変える。
「あーあ、見間違いだと思ったんだけどなぁ……」
光の中から声が聞こえた。
高く鋭い女性の声。
俺たちは目を凝らす。
うっすらと見え始めた容姿に、少なからず驚きを感じたのは確かだ。
「ちっ、どこの誰だよ。人間なんかに許可証渡したやつは」
「彼女が……大地の精霊ノロム?」
見た目の年齢はアリアたちと同じくらい。
紅蓮の髪と目に、燃えるような熱を放っているのに、肌は日を拒むように白い。
露出の多い服なのに、そういう気持ちにならないのは、その外見が子供だからなのか。
とにかく若い……女性ではなく女の子だった。
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