↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/75

66.次の機会に

 虹が消えるまで、俺たちは湖を見つめていた。

 冷たい風が吹き抜けていく。

 ギリギリで生きていた森が、大地が喜んでいるような気がして、何だかほっこりする。


「さて、一旦町へ戻ろうか」

「うん!」

「はい!」

「わかった」


 ここでやるべきことは終わった。

 町にあった不安も、これで解消されただろう。

 三人とも早くみんなに伝えたくてソワソワしている。

 親に自分の武勇伝を自慢したい子供みたいに。


「ねぇ三人とも。町の人たちには、みんなから説明してくれるかな?」

「え、私たちが?」

「師匠から説明された方が」

「うん。ボクたち、説明得意じゃないよ」


 三人ともそう言うが、本当は話したいのだろう。

 譲ろうという姿勢に現れている。

 俺に遠慮しているのかもしれないけど、今回は特に彼女たちも頑張ったんだ。

 それにここは、彼女たちの故郷でもある。


「いいや。この町のことは、君たちから伝えるべきだよ。だから頼める?」


 その役目は、彼女たちにこそ相応しい。

 俺がそう言うと、三人とも吹っ切れたように表情を明るくする。

 それから三人は足を早めて町の人たちの元へ向かった。

 

 町へ戻ってからは、最初にシスターの所へ行った。

 大まかな説明をしてから、町の人たちに声をかけて、一か所に集まってもらう。

 みんなが集まったら、聞こえるように大きな声で、事の顛末を話した。

 この町で起こっていたこと。

 精霊ウルネが今もいて、ずっと町を守ってくれていたこと。

 問題はすでに、俺たちの手で解決されたことも。

 三人が説明している間は、俺は黙って見守っていた。

 そして、話を全て聞いた町の人たちからは、ポツリポツリと安堵の声が聞こえてくる。


「そうか……ウルネ様は私たちを見捨ててはいなかったのか」

「守ってくれていたんだな……ずっと」


 長く続いた不安から解消され、感極まって涙を流す人もいる。

 この小さな町にとって、精霊と湖がどれほど大切な存在だったのか。

 彼らの反応を見ていれば明白だ。

 だからこそウルネは、苦しみながらも守ろうとしたのかもしれないな。


「ありがとう。アリア、ティア、マナ」

「シスター」


 シスターからの言葉を聞いて、アリアの目は潤んでいるように見えた。

 名前を呼ぶ声も、少し震えている気がする。

 シスターは続けて、俺のほうを見る。


「ユーストスさんも」

「いえ。俺よりも三人に」

「そうですね」


 ニコッと微笑んで、シスターは改めて三人を見つめる。

 見えない瞳で、彼女たちに真っすぐ向き合う。

 そして伝える。


「三人とも私の……いいえ、この町の誇りです」

 

 シスターの言葉に、周りの人たちが賛同するように拍手をする。

 続けていくつもの賛辞が飛び交う。

 誰かに認められること嬉しい。

 認めてくれる相手が誰なのかも重要で、彼女たちにとってこの賛辞は、紛れもなく最高の祝福だ。

 

 良かったな、三人とも。


 アリアたちは泣きそうな顔で、泣かないように堪えていた。

 嬉しいときは笑顔でいよう。

 そんな風に努力しているのかもしれない。

 本当に強くなった。

 力も、心も。

 これからも一緒に旅が出来ることを、俺は誇らしく思うよ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 この日の夜は盛大に宴が催された。

 町中の人を集めて、大人数でワイワイと騒ぐ。

 大人は酒を飲み交わし、子供みたいにはしゃいでいた。

 宴が終わり、みんなが寝静まった頃、俺は一人教会の外で涼んでいた。

 空を見上げると、真ん丸な月が輝いている。


「満月だったか」

「そうだったんですね」


 不意に声が聞こえた。

 あの時と同じで、声の主はシスターだ。


「こんばんは」

「シスターさん、こんばんは」

「お隣よろしいですか?」

「はい」


 会話まで同じ。

 シスターは俺の隣に座る。


「ありがとうございました。ユーストスさん」

「感謝の言葉ならたくさんもらいましたよ」

「いいえ、今のはウルネ様のことではなく、あの子たちのことです」

「アリアたちの?」

「はい」


 シスターは俺に顔を向ける。

 目は見えなくとも、声が聞こえるほうへ話しかける。


「あの子たちから、ユーストスさんの話をたくさん聞きました。何度も助けて下さったんですね。それに今回も」

「今回は違いますよ。三人とも頑張ってくれましたから」

「ふふっ、そうですね。でも、ユーストスさんがいてくれたから、あの子たちはここにいる。生きてまた会えたことが何より嬉しい」

「ですね」


 三人とも、シスターを本当の母親のように慕っていた。

 彼女自身も……血は繋がっていなくても、母親なんだな。


「また帰ってきますよ。ちゃんと三人で、たくさん土産話も集めて」

「はい。その時は、あの子たちのことを聞かせてください。あの子たち、恥ずかしがってあんまり教えてくれないので」

「はっはっはっ、そうなんですね。じゃあ期待していてください」


 翌日、朝早くに町を出発する。

 次に会う時は、もう少しゆっくりしていこう。

 それから、彼女たちの話をしよう。

 自慢げに、我が子のように、弟子の成長を語ろうと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。