↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/75

64.精霊の円盤

 クリスタルが砕かれたことで、植物は枯れていく。

 紫色の花が散り、うねり動いていた触手もボトボト落ちる。

 床や壁にへばりついていたベトベトの液体も、じゅうと焼けるような音をたてて蒸発していった。

 アリアがカチャリと剣を鞘に納める。


「やりました! 先生」

「ああ、上出来だったよ」

「えっへへ~」


 俺が褒めると、アリアは嬉しそうに笑う。

 そこへティアとマナも歩み寄ってくる。


「二人ともお疲れ。良い動きだったよ」

「ありがとうございます!」

「これくらい余裕」

「ははっ、そうだな」


 三人とも、以前に比べ格段に強くなっている。

 毎日の努力の成果ではあるけど、一番はあの旅を経験したからだろう。

 練習じゃない本物の戦い。

 命をかけた戦いの数々を経て、彼女たちは成長した。

 実戦じゃないと学べないことも多いと、改めて実感する。


「先生」

「どうした?」

「これで湖の水は戻るのかな?」


 アリアは魔物が巣くっていた場所を見つめている。

 さらに続けて言う。


「さっきの魔物が、ウルネ様を苦しめてた原因なんだよね?」

「ああ」


 魔物の毒素が大地に浸透して、湖に宿るウルネへ影響を与えていた。

 そしてウルネが弱っていたことで、雨を降らせることも出来ず、水不足に陥っていた。

 自然の雨が降っても、大地に吸収されてそのまま魔物の養分にされる。

 さっきの触手の成分は、おそらく水が大半を占めていたに違いない。


「元凶は去った。あとはそうだな。この地の汚染を浄化しよう」


 俺は両手を壁にあて、瞑想して祈る。

 

「主よ――この地に再び、命の息吹をお与えください」


 聖女の奇跡。

 天へ祈りを捧げることで、様々な奇跡を起こす。

 正しきものには祝福を、悪しきものには罰を。

 この地は、町の人々が生きるために必要なものだ。

 彼らは日々、貧困に苦しみながらも懸命に生き続けている。

 時に助け合い、励まし合って。

 それは強く、正しい行いだ。


 白く淡い光が大地へ注がれていく。

 緩やかに広がって、辺り一面を白く染め上げる。


「いつ見ても綺麗……」

「偉大な聖女の力だからな」


 光が一瞬強まって、眩しさでみんなが目を閉じる。

 次に目を開けた時には、白い光は消えていた。


「浄化は終わった。これで大地は元通りになったよ」

「じゃあウルネ様も元気になったかな?」

「本人に聞いて確かめよう。地上へ飛ぶから、みんな俺に掴まって」

「うん!」


 アリアは右腕に抱き着く。


「わかりました」


 ティアは左腕に抱き着いた。

 そしてマナは正面から俺の腰に抱き着き、下から俺を見上げる。


「準備万端」

「……そこまで引っ付かなくていいんだけど」


 まぁ嫌な気分じゃないし、ここまま転移魔法を発動することに。


「じゃあいくぞ」


 転移の魔法陣を展開。

 足元が光り、パチッと音がして俺たちは消える。

 一瞬の浮遊感に襲われて、気が付けば湖の辺に移動している。

 ソロモンの転移魔法は、一度訪れた場所であれば、そこを思い浮かべるだけで移動できる。

 とてつもなく便利な魔法だけど、その分消費魔力は大きい。

 だからこれを使うと、ちょっと疲れる。


「ふぅ、っ、眩しいな」


 しばらく暗い地下にいた所為か、日差しが普段より眩しく感じる。

 

「先生」


 アリアが湖を指さす。


「ウルネ様は?」

「……戻ってない」


 戻ってきたけど、湖は変わらず枯れかけていた。

 ウルネの姿も見当たらない。

 だけど、俺には感じる。


「大丈夫」


 ウルネの力……精霊の力が強まって弾ける。

 最後に残った僅かな水から、特大の水柱が天に昇る。


「わぁー! 水だよ水!」

「こんなにたくさん」

「冷たい」


 水柱の上に視線を向ける。

 そこには水を操る美しい女性の姿があった。


「ウルネ様だ!」

「力が戻ったみたいだね」


 これで町の人たちも安心できるだろう。

 ホッとする俺にウルネが微笑みかけてくる。

 そのまま水が噴き出し湖が満たされると、ウルネは俺たちの前に移動してきた。


「体の具合はどうですか?」

「お陰様で回復しました。まだ違和感はありますが、じきなくなるでしょう」

「そうですか。なら良かった」

「はい。まさかこうもあっさり解決してしまうとは。ありがとうございます。これでまた、務めを果たすことが出来る」

「お礼は必要ありませんよ。俺たちも無償で戦ったわけじゃないですから」


 俺がそういうと、ウルネはニコリと微笑んで、右手を差し出す。


「そうでしたね。これを貴方に」

「ありがとうございます」


 彼女の右手から、精霊の円盤を受け取る。

 手に取るとずっしり重く、見た目以上に硬い。

 加えて今まで感じたことのない種類の魔力が流れている。


「これが……世界の精霊にたどり着くための鍵」

「はい。四つの試練を乗り越えた先に道は開けます。貴方たちならきっと、そこへたどり着けると信じております」

「はい」


 俺は円盤を握りしめる。


いよいよ明日、第一巻発売です!

ぜひぜひご興味のある方は、カドカワブックス様のサイトで試し読みもできますよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。