↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/75

52.良い夢

 賑やかなパーティーが終わる。

 姫様の悪戯とか、弟子たちからの説教とか。

 色々とハプニングがあったけど、おおむね楽しい時間を過ごせた。

 その分疲れたし、今日はぐっすり眠れそうだ。

 何だか良い夢を見られる予感がする。

 そんなことを考えながら、瞼を閉じると――


「やぁ、良い夢に割り込んでしまってすまないね」

「――いいや、これこそ一番見たかった良い夢だよ。ローウェン」


 美しい花園が広がっている。

 ヒラヒラと舞い踊る蝶と一緒に、かの魔術師は佇んでいた。


「久しぶりだね、ユーストス」

「ああ」


 呪いの王都の戦い以降、彼は一度も俺の呼びかけに答えなかった。

 一か月ぶりに声を聞いて、少しほっとする。


「良かった。消えてなかったんだな」

「ん? 私がかい?」

「そうだよ。呼びかけても全然反応しないし。てっきり終わって満足したから、どこかに行ってしまったのかと思ってたんだ」


 ローウェンの望みは叶っている。

 呪いの王を倒し、報いた時点で満たされている。

 そう思ったから、いなくなってしまっても仕方がないと考えてた。

 俺がそう言うと、ローウェンは笑って言う。


「はっはっはっ、そんなことはないさ。約束しただろう? 次は君の望みをかなえるために協力しようと」

「そうだったな」

「おうとも。それにまだ、私の目的も半ばと行った所さ」

「え、そうなの?」


 ローウェンは小さく頷いて答える。


「呪いの王は倒された。しかし残念なことに、その影響で消されてしまった彼らの記憶は戻っていない」

「あぁ、そういえば」


 呪いの王に挑んだかつての英雄たち。

 その記録と記憶は、呪いの力によって世界から抹消されている。

 誰の記憶にも残らない戦いは、今も尚知らないままだ。


「私はそれが残念でならないんだ。どうにかして、彼らが生きてきた証を残したい。世界を救った英雄としてでなくとも良い。ただ、そういう人たちがいたのだと、今の時代に伝えてあげたいのさ」

「ローウェン……」

「そのためにも! 君の目指す未来に協力させておくれ」


 そう言って、ローウェンは握手を求めてきた。

 俺は迷いなくその手を握り返す。


「一緒に戦おう」

「ああ」


 かつての英雄とその後継者。

 自分の言うのも何となく恥ずかしいけど、二人なら世界を変えるくらい簡単に出来てしまいそうだと思った。


「さて、ではさっそく作戦会議と行こうじゃないか」


 ローウェンがパチンと指を鳴らす。

 すると、蝶たちがヒラヒラと舞集まり、目の前にテーブルと椅子が出来上がる。


「便利な力だな」

「そうでもないさ。私にだって、出来ないことがたくさんある。それを補ってくれていたのが彼らであり、今の君だからね」


 なるほど。 

 そう言われると、悪い気分じゃない。

 俺たちは向かい合って椅子に座り、今後のことについて話し合う。


「世界の法則を変える。呪いの王を二度とこの世に生み出さないような仕組みを作る……って、簡単に言ってみたけど、実際にそんなことが可能なのかな?」

「う~ん、結論だけ言ってしまうと、不可能ではないと思う」


 可能とは言い切らない所に、何か不安要素が隠されていそうだ。

 ローウェンが続ける。


「知っての通り、呪いの王は人の悪感情によって生まれた精霊だ。より正確に言うなれば、人から無意識に漏れ出た悪感情と魔力の集合体。人は怒ったり感情が高ぶると、魔力の制御が利かなくなって、無意識に垂れ流す。その時に流れる魔力には、悪感情がそのまま残っている」


 怒り、悲しみ、恨み、妬み……

 強力な悪感情のまじりあった魔力は、呪いの王という存在を誕生させた。

 それらの感情は全て、他人に向けられたものばかりだ。

 そう考えると、呪いの王が人に牙をむいたことも、至極当然だとわかるだろう。


「つまり、人間から悪感情をなくせば、呪いの王も誕生しないというわけさ」

「ローウェン、それは……」

「わかっているさ。そんなことをすれば、人間の人間らしさが欠けてしまう。良いも悪いもひっくるめて人間だ。私は人でなしだけど、それくらいは理解しているよ」

「他の方法は?」

「そうだね。後は全人類に魔力のコントロールをマスターさせることかな」


 ローウェン曰く、魔力のコントロールが未熟だから、感情の高ぶりで魔力が漏れ出てしまうらしい。

 つまり、全人類が魔法使いになれば、呪いの王も生まれない。

 ただし、この方法はあまり現実的ではない。

 今いる人間と、これから生まれてくる人間。

 全ての人に魔力のコントロールを覚えさせるなんて、普通に考えて不可能だろう。


「じゃあ魔力をなくすか」

「そうだね。まだそっちのほうが現実的だと私も思う。だが、魔法技術の発展と共に繁栄を築いた文明だ。その基を失うことは、すなわち衰退を意味する」


 俺もそう思う。

 仮に魔力を失えば、困ることも多い。

 それを受け入れられるかは、人それぞれの許容によるからな。


「八方ふさがり……か」

「いいや、少なくとも現時点ではだよ。わからないなら、知っているかもしれない者たちに聞けばいいのさ」

「知っている? そんな人がいるのか?」

「いるとも。呪いの王は精霊だった……ならば、同じ精霊に話を聞くのがベストだと思わないかい?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。