26.SSSランク冒険者
三か月――
ゴブリンロードの襲撃から、三か月が経過した。
襲撃によってレガリアの街並みが破壊され、多くの人が傷つけられたけど、少しずつ落ち着きを取り戻している。
破壊された街は徐々に修繕され、以前の賑やかさを見られるようになった。
そして、俺はと言うと……
穏やかな朝の陽気に包まれながら、ふかふかの布団にくるまっていた。
窓から日差しが入り込んで、ちょうど顔にかかる。
眩しさから逃げようと寝返ると、ベッドの端っこから落ちてしまう。
「痛っ……もう朝か」
窓の外、時計の順番に目を向ける。
空は雲一つない良い天気だ。
時計の針は、朝の六時半を告げている。
「準備するか」
着替えは昨日のうちに用意してある。
服を着替えてから寝癖をとかし、身なりを整える。
装備の確認も、昨日の夜には済ませてある。
念のために朝も確認して、問題なかったのでそのまま部屋を出る。
ガチャ――ドン!
「うっ!」
「えっ、あ……」
今の声はアリアか?
扉を開けた時、何かにぶつかる音がしたぞ。
「痛た……」
「やっぱりアリアか」
扉をゆっくり開けなおすと、彼女がおでこを撫でながら立っていた。
ちょっぴり涙目になりながら俺に言う。
「おはよう先生。先生が早起きなんて珍しいね」
「珍しいとは失礼だな」
「えぇ~ いつも私たちの誰かが起こさないとギリギリなのに?」
「ギリギリでも間に合ってるから良いんだよ。それよりおでこ大丈夫だったか?」
「うん。急に開くから驚いちゃったけど」
アリアはニコニコしながらそう答えた。
彼女の笑顔を見ていると、自然にこっちも笑顔になる。
「他の皆は?」
「もう起きてるよ。後は先生だけ。朝ごはんも出来てるから早く降りようよ」
「ああ」
今更だけど、ここは宿屋ではない。
新しく購入した俺たち専用のホームだ。
冒険者の多くが宿屋を拠点にする一方で、お金をためて自分たちのホームを持つ者も少なくない。
ゴブリンロード討伐の報酬が大量に入ったから、思い切って俺たちもホームを買ったんだ。
二階建ての木造建築で、ちょっとおしゃれな喫茶店のような雰囲気が気に入っている。
一階に降りてダイニングに向うと、すでに二人が席についていた。
「ティア、マナ、二人ともおはよう」
俺が声をかけると二人が振り向く。
「師匠! おはようございます」
「おはよう、お兄さん」
ティアはきりっと背筋を伸ばして座っている。
マナは眠そうに欠伸をして、アリアのおでこに気付いた様子。
「おでこ、どうしたの?」
「あーこれ? さっき先生にぶつけられちゃって」
「……お兄さん、起こされたからって暴力は駄目だよ」
「いや違うから」
なんて冗談を言えるようになったのも、数か月共に過ごしたお陰だ。
レガリアへ向かう道中で出会って、一緒にパーティーを組んで、弟子入りを申し込まれて。
この数か月で色々なことがあった。
色々ありすぎて、何がきっかけでどう変わったのかは思い出せないくらいだよ。
まぁでも、一番のイベントはやっぱりロードとの戦いかな。
あの戦いのせいで、俺たちを取り巻く環境が大きく変わったんだから。
「師匠、今日はどうされますか?」
「いつも通りで良いよ。ギルド会館にいって、良さそうなクエストを探そう」
「わかりました」
朝食を済ませたら、俺たちはホームを出る。
ホームはギルド会館からちょっと離れていて、歩いて十五分くらいかかる。
「もうすっかり元通りだね~」
「ああ」
アリアが街並みを見ながらそう呟いた。
俺たちが歩いている通りも、ゴブリンとの戦闘で激しく壊された場所だ。
まだ所々に傷跡は残っているけど、おおむね元通りになっている。
これも街の人たちの頑張りと、それを手伝った冒険者たちのお陰だ。
すると――
「あ、ユースさん! 今日もクエストにいくんですか?」
「はい」
「よかったら帰りに寄って行ってください。良い素材がたっくさん入荷したんですよ」
「本当ですか? じゃあ帰りにまた」
声をかけてくれたのは、道具屋のおばさんだ。
他にも道を歩いていると、街の人によく声を掛けられる。
こうなったのも、ゴブリンロードとの戦いがあってからだ。
「ねぇ見て! ユース様よ」
「本当だわ。朝からお顔が見られるなんて、今日はとっても良い日ね」
街の女性も噂している。
それを横目に見ながら、アリアがぼそっと言う。
「さすが先生、大人気だね」
「からかわないでくれ。注目されるのは慣れてないんだ」
まったく困ったものだ。
ゴブリンロードを討伐したという話が広まって、街を救った英雄扱いされてしまっている。
お陰で最初はもっと大変だったよ。
ホームを買ったのだって、一つはそれが理由だし。
加えてもう一つ、大きく変わったことがある。
それはギルド会館に入ればすぐわかる。
「おはようございます。ユースさん」
受付嬢があいさつをしてくれた。
それに返すと、会館内にいた冒険者たちの視線が集まる。
ここでも注目されることに、若干の息苦しさを感じるが仕方がない。
「本日もユースさん指名のクエストがありますが、どうされますか?」
「またあるんですね……ちなみに何件?」
「五件です」
「き、昨日より多いですね」
「ふふふっ、ユースさんはこの街唯一のSSSランク冒険者ですからね」
パーティーはF~Sのランクに区分される。
本来なら、パーティーに対して定められるランクなのだが……
ロードを倒した功績を評価され、特別認定という形で俺個人にSSSランクが与えられた。
一応、パーティーとしてもAランクには昇格している。
そんな感じで、街中でもギルドでも、注目を集めるようになっていた。
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