エピローグ
ルシェが遠征から戻って来ると、また夕食は四人で取ることが多くなった。変わらないように見える四人の仲だが、少しの変化が見られるようだ。
「今日も疲れた~」
盛大に息を吐き出したイオルが机に突っ伏す。
「行儀悪いよ、イオル。これからご飯食べるのに」
「だって~疲れたんだもん~!」
リコルにたしなめられるも、イオルは動く気配がない。
「ルイフィス様にこき使われてたのよ! ベルサロムの関所への通信をさ? 遠いから疲れるって言ってるのに、超長話するんだもん! しかも三回も!」
イオルは愚痴を吐き出してから机に顔を埋める。
「ちょっとルシェ、ルイフィス様にあたしのことこき使うなって言っておいてよ~」
「それはイオルさんの能力を高く評価してのことなので、仕方ないですよ」
「あ~ルシェもルイフィス様の味方なんだ~」
「そういうわけではないですけど……」
くぐもった声のイオルがルシェに攻撃を仕掛けた。
「もう無理だ~、食欲も湧かない~」
「しょうがないなぁ、イオルは。ちょっと、ベルロイどうにかしてよ」
リコルに矛先を向けられたベルロイはくすりと笑ってからイオルの頭を撫でる。撫でられたイオルは、
「ちょっと!」
と、人前でそういう行為をするベルロイを非難する声を出す。しかし、その声とは裏腹に顔が少しニヤけている。
「お疲れ様、イオル」
「……うう」
「あーっ、ごめんルシェ! 私があんなこと言うから!」
「別にいいですよ」
すっかり振られたキャラが定着したルシェは苦笑いを浮かべる。こうしてからかえるようになったことも、元通りの仲が良い四人に戻れたことの一助になっている。
「さ、食べよう」
ベルロイが頭を撫でるのをやめると、すっかり大人しくなったイオルも食事を開始する。
「あ、何か食べ始めたら食欲湧いてきたかも!」
「まったく、イオルは人騒がせなんだから」
リコルがそう言うと四人で顔を見合わせて笑った。
***
食後、ベルロイの鍛錬に付き合うのがイオルの日課だ。ぼんやりと物事を考える時間となっているだけでなく、ベルロイのたくましい背中を見ていられる時間であることが、イオルには嬉しい。本人には言わないけれど。
鍛錬が終わるとイオルはベルロイにタオルを渡す。汗を拭き終えると、ベルロイが、
「おいで」
と、イオルを手招きする。イオルは素直にそれに従って、ベルロイの胸の中に収まった。
「疲れたって言うから、癒してあげないとね」
「……うん」
イオルは恥ずかしそうにしながらも、こうしてベルロイと触れ合っている時間が好きだ。
「イオル」
どこか艶のある声で名前を呼ばれて顔を上げると、甘いキスが降ってくる。普段よりも深く、長いキスを終えて唇が離れた時には、イオルはとろんとした表情をしていた。
「可愛い」
ベルロイが素直な感想を言うと、イオルは顔を赤く染める。
「やめてよ、そういうこと言われると……」
「言われると?」
途中で言葉を切ったイオルにベルロイは笑いながら続きを促す。
「……何でもない!」
ドキドキするから、なんて言えない、と、イオルははぐらかす。
「何だよ。言ってくれないと、お仕置きするよ?」
「な、何よ、お仕置きって」
「もっとイオルが恥ずかしいと思うことを言う」
「……どんな?」
「イオルのキスの後の顔が可愛い。そそられる」
「……っ!」
頬を真っ赤に染めたイオルは強めに頭をベルロイの胸にぶつける。
「もう! バカ!」
「そうやって照れ隠しするのも可愛い」
「や、やめてよ!」
イオルはボンボンと頭突きするも、ベルロイはただ笑うだけだ。
「あたしのこと癒やしてくれるんじゃなかったの!?」
「ごめん、つい。虐めてるのが楽しくて」
「もう!」
「イオルが可愛いから」
「……っ! ベルロイ!」
二人はそんな言い合いをしながら、再び唇を重ねる。ベルロイにドキドキさせられっぱなしのイオルが安らかな癒やしをもらえる日が来るのは、まだまだ先のことになりそうだ。
これにてベルロイルートも完結です!
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!




