55話 〈白の解放団〉
「やあ、充。元気だったかい?」
片手を上げ、充に声を掛けるアレン。
「何故、ここに?」
「君たちが試験に合格したと聞いてね。お祝いに駆け付けたのさ」
充の問いに答え、瑠香たちを見渡すアレン。
「うーん、こう見ると壮観だね」
「なあ」
そこで心が立ち上がる。
「充、だったか? お前とアレンは知り合いなのか?」
「ああ。お前もか?」
心の問いに頷く充。
聞き返す充に、心も首肯する。
「アレン、これはどういうことだ?」
アレンの方に向き直り、充が説明を求める。
「まあまあ、まず始めに、みんなに自己紹介をさせてくれよ」
それを手で制し、瑠香たちの方を向くアレン。
「顔見知りも、そうじゃない人も、まとめて挨拶させてもらうよ。僕はアレン。君たちの味方だよ」
そう言い、アレンはお辞儀をする。
その言葉にハッとする充。
「アレン、まさか、こいつらが──!?」
「察しが良いね、充。そうだよ、彼らはみんな『人柱』だ。──まあ、違う人もいるようだけどね」
あっさりと言うアレン。
その言葉を聞き、その場が騒然となる。
珠輝と実辰が。
隼人と日和が。
一華と心が。
凛と茉菜が。
互いの顔を、驚いたように見た。
「あなたも、人が悪いですね……」
騒ぎが収まった後、アレンに向かってジャスティスが言う。
「いやぁ、別に言わなくてもいいかな、って思ってたけど……まさか、こんなことになるとはね」
困ったように頭を掻くアレン。
「もう一組人柱がいることくらい、言ってもよかっただろ」
「全くだぜ」
充が言い、心もそれに同意する。
どうやら、瑠香と充以外の組は、互いに人柱だとは知らなかったようだ。
まあ、そう易々と晒していい情報でもないので、教えなかったのは正しい選択だろう。
しかし、アレンがもう少し話していれば、このような混乱は防げたのではないか。
みんなの思考はそこで一致し、呆れの混じった眼でアレンを見る瑠香たち。
「み、みんなの視線が痛い……助けてくれよ、ジャスティス……」
「──自業自得じゃないのかい?」
ジャスティスにも溜め息を吐かれ、肩を落とすアレン。
しかし、すぐに顔を上げる。
「そうだ、確認しなきゃいけないことがあったんだ」
そう言い、瑠香の前まで歩いてくるアレン。
「君が、神条瑠香だね?」
「は、はい」
「ちょっといいかな?」
そう言い、瑠香の前に屈むアレン。
「あ、あの……?」
戸惑う瑠香の前で、アレンは水晶玉のようなものを取り出す。
そして、それを瑠香の目の前にかざす。
それを見つめていると、透明な水晶玉の中に光が灯る。
「うん、間違いない。君も人柱だ」
「ほ、本当ですか?」
「うん、充に連れてきてもらってよかったよ」
そう言い、アレンは立ち上がる。
そして、今度はリーの下に向かう。
「さて、聞いた話によると、君も人柱なんだって? 試してもいいかい?」
「ええですよ」
リーは軽く承諾する。
アレンは瑠香の時と同じように水晶玉をかざす。
水晶玉に光が灯る。
「どうやら、君も人柱のようだ。彼と同行していたのは君だったかい?」
そう言い、珠輝の方を見るアレン。
「ええ、そうです」
珠輝は頷く。
「そうか。助かったよ。ありがとう」
珠輝に向かって礼を言うアレン。
そして瑠香たちの方に向き直る。
「さて、じゃあ、これからの話をしようか」
「これからの話、ですか……?」
首を傾げる日和。
「うん。まず、君たちにはこの世界でレンジャーとして活動して、力を付けてもらおうと思っているんだ」
「アレンさん、それに関してだけどね」
そこでジャスティスが声を上げる。
「さっき話した通り、アクシデントがあってね……」
そして、瑠香たちが異能犯たちに襲われたことを説明する。
「なるほど、そんなことが……ユナイテッドの意向は?」
「資格は授与するけど、安全が確認されるまでは当面の間活動禁止、だそうだよ」
「そうか……」
ジャスティスの言葉に渋い顔をするアレン。
「ユナイテッド内で訓練するのはダメかい?」
「掛け合ってみよう」
アレンの提案にジャスティスは頷いた。
勝手に話が進み、置いて行かれてしまう瑠香たち。
「アレン、説明してくれ」
顔を顰めて、充がアレンに言う。
「ああ、ごめんよ。君たちには強くなってもらいたいんだよ。それで、訓練だけでも出来ないかと思ってね」
「それに関しては、僕が相談してみるよ」
アレンとジャスティスが言う。
「で、君たちの活動に関してだけどね」
話を変えるアレン。
「君たちは強いけど、バラバラに活動するのは危ないと思うんだ」
「確かにな」
腕を組み、心が言う。
「そこで、君たちには『チーム』を組んで欲しいんだ」
「チーム、ですか?」
一華が訊く。
「そう、ここにいる全員のチームだ。どうだい?」
瑠香は周りを見る。
出身や種族もまちまち。
知り合いもいれば、初対面の人もいる。
大丈夫だろうか。
「いいじゃないか。みんなで力を合わせて戦う。憧れるね」
ジャスティスが楽しそうに笑う。
「いいな、それ!」
「ああ、何かワクワクしてきたぜ!」
心と隼人が立ち上がる。
「協力できるのは悪くないな」
「素直に楽しそうって言えばええのに」
腕を組む珠輝と、それを肘で小突くリー。
「にゃは! 楽しそうだにゃ!」
「そ、そうかな……、なんか大変なことになりそうだけど……」
「私は、実辰と一緒ならいいよ」
「日和……」
笑って言うティア。
実辰と日和が笑い合う。
「チーム……皆さんと、お友達に……」
「うん、なれるよ。きっと」
スズが呟き、一華が頷く。
「……これ、大丈夫ですかね……?」
「既に収拾がつかなくなってるよね」
不安そうに茉菜が言い、凛が肩を竦める。
「はぁ……」
「充?」
瑠香の隣に座っている充が、頭に手を当てて溜め息を吐く。
「うんうん、みんな賛成みたいだね」
アレンが、がやがやと話す瑠香たちを見て頷く。
全員が賛成とは言っていないのだが。
「さてと、ここで提案なんだけど、団結力を高めるために名前を付けてはどうだろうか」
そう言い出すアレン。
「はい! ヒーロー戦隊ナントカジャー!」
「ダサい」
「はぁ!?」
心の案を一蹴する日和。
「シンプルに、『人柱の会』とかはどうや?」
「そんな大事な情報を名前に入れるのはマズいだろ」
「冗談やて」
真面目に返す珠輝に、肩を竦めるリー。
「はいはいはい! にゃんこ隊!」
「にゃんこなのは、ティアだけだよ」
「あ、そうだったにゃあ!」
元気よく言うティアと、呆れたように首を振る実辰。
「瑠香ちゃんは何かいい案ある?」
瑠香に話を振ってくる凜。
「え、えぇ……そうだな……」
瑠香は顎に手を当て考え込む。
そしてこちらを見る皆を見渡す。
なんとも、個性的なメンバーが集まったものだ。
髪の色はほぼ全員が黒なのに、とてもカラフルに見える。
「色、はどうかな。いろんな色が混ざってる感じ」
その言葉に珠輝が腕を組む。
「色を混ぜて行ったら、『黒』になるって言うぞ」
「黒か……」
その言葉に顔を顰める充。
「どうしたんだよ?」
「いや、黒と言ったら〈黒の使徒〉だからな……」
首を傾げる隼人に、充はそう言う。
「なるほどな……」
渋い顔をして頷く珠輝。
「じゃあ、いっそのこと、『黒』の反対の『白』ってのはどうだ?」
心が手を叩いて言う。
「『白』か。ええな、それ」
「ああ、『原点』って感じがするな」
頷き合うリーと珠輝。
「あと、私、異世界に行って思ったの。この力を、助けるために、誰かを苦しみから解放するために、使いたいって」
「瑠香……」
隣の充が驚いたようにこちらを見る。
「〈白の解放団〉……」
アレンが呟く。
「なんだ、それ?」
心が訊ねる。
「──いや、今思いついたんだけどね。こんな名前は、どうかな?」
「いいな! 〈白の解放団〉!」
「ああ! かっけえ!」
興奮したように言う心と隼人。
「な、お前らもこれでいいよな!?」
心が全員に向かって問う。
頷く瑠香たち。
「よおし! じゃあ、今この瞬間から、俺たちは〈白の解放団〉だ!」
拳を突き上げる心。
瑠香たちも、同じように拳を掲げた。
そして、歓声が上がる。
『『虚ろを埋める空白』……。そうか、お前たちが……』
世界軸のその呟きは、歓声に遮られ瑠香には届かなかった。
瑠香たちは、まだ知らない。
その言葉が、どのような意味を持つものなのか。
そして、その名がどれほどの意味を持つことになるのかも。




