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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
9/52

花音

  4月30日。土曜日の夜。佐野(さの)家にて。


「かのん!」


下の階から母に名前を叫ばれた。どうやら夕ご飯の準備ができたらしい。

名前を呼ばれるのは一回目。今は手が離せないのでスルーする。

友達から押し寄せた膨大な量のチャットを捌ききらなくてはならないからだ。


「か・の・ん!」


二回目の呼び声。もうちょっとだから待って。送信、送信、送信……。


「かっ・のっ・んーーーーーー!!!」


落雷のような母の叫び声が家中に響き渡る。

まだチャットを返信しきれてはいないのだが、さすがに三回目をスルーする度胸はない。

シロクマのスタンプをパパっと送信し、ひとまずチャットアプリを終了する。


「今行く!」


反動をつけてベッドから起き上がり、部屋から出る。するとお腹がぐうと鳴った。

スマホに集中していて気づかなかったが、私の空腹度は80%を超えていたようだ。

照明の明るい廊下を俊足で抜け、階段を蝶のように舞い降り、リビングの扉を蜂のように勢いよく開けた。

レース場『佐野家』のタイムアタック最速記録を更新したことに内心喜びながら。


「やっと来た……」


不機嫌そうな声を漏らす母を一瞥し、机の上に置かれた料理をユニークスキル『鑑定』を用いて品定めする。

透明なガラスの器に入ったそうめんは艶があり、梅と紫蘇で飾り付けられている。器の隣にはめんつゆの入った器が置かれている。

そして横には夏にぴったりのサラダが用意されている。具材は豆腐にきゅうりに大葉、ささ身にかつお節。豪華な夕食だ。品質はAランクと言ったところだろうか。

口の中にあふれる唾液をごくりと飲み込みながら、四人掛けのテーブルのうち、母の隣に座り手を合わせる。いただきます。


「ゲームしてたの?」

「いや、友達とラインしてた」


そうめんをつゆに浸しながら応えると、母はふーんと唸る。

今日は3度目の呼びかけ、もとい最後通告を聞いたため怒られることもなかったが、無視するとそれはそれは厳しいペナルティ、説教プラス片付けが待っている。


「花音はゴールデンウィーク、予定ある?」


向かいの席に座る父が問いかけてきたので、サラダをつまみながら「ない」と応える。新鮮な野菜にあっさり和風のドレッシングは至高。美食家である私の舌を唸らせるとはさすが大手食品メーカー。油断ならない相手である。


「誰とも約束してないの?」

「してない」


唸りつつ、次々に野菜を口に放り込む。そういえば連休の予定を考えていなかったけど、どうしようかな。

ネットで新作のゲームを探すか、格闘ゲーム『シナプスファイターズ』のオンライン対戦に没頭するのも一興だ。ちょうど先週新キャラが登場したことだし、性能評価をしなければならない。ゲーム三昧と行こうじゃないか。


「まさか『ゲーム三昧』なんて言わないわよね?」


母に思考を読まれた。さてはあなたはテレパシー人間だなーーというのは冗談で、何せ私は人生すらゲームと考えているクチなのだ。

人生はシミュレーションゲーム。人生について考える=ゲームについて考えるのと同意。

よって私はデフォルトでゲーム三昧の毎日を送っているわけだ。


ーーとまあ大げさなジョークもほどほどに、母の言い方にはなんだか含みがあるような気がする。

私も母から受け継いだ特殊能力『テレパシー』を発動してみる。

ふむふむ。母の言いたいことはーー「誰かと外で遊んだら」といったところか。


そう言われても私はいかんせん現代っ子。外出などせずとも友人とコミュニケーションが取れてしまうのですよ。


「散歩でもしようかなー。異世界散歩」


最後の方をすぼませて言うと、母は眉を寄せた。


「VRはだめよ。体を動かしなさい」


またしても母に思考を読まれてしまった。どうやらバーチャル空間を散歩するではだめらしい。

それにしても最近、母は口を酸っぱくして「運動しろ」と言ってくる。

この梅ぼし星人めーーそんな悪態を内心で吐きつつ、そうめんの容器から梅干しをつまんで口に放り込む。酸っぱい!


適度な運動で、健康的な体を手に入れろーーその命令は正しく真っ当だ。

だが、わかっていてもやる気が起きないんだよやる気が。これはメインクエストではなくサブクエストの分類だ。

メインクエストとなればいち早く行動するだろうーーそう、必要に迫られればやるのだよ。


まったく私はいかに小市民なのだろう。もしこの世界が誰かのプレイするゲーム空間なのだとしたら、プレイヤーに私の思考はもろバレということになる。

そう考えるとなんか恥ずかしくなってきた。だが、キャラクターの私が世界に干渉することは不可能に近い。

結局のところ、考えをテキストで伝えることしかできない。痩せる魔法とか、健康的になる魔法とかあったら是非とも覚えさせてほしい(小声)。


おっと、またしても雑念が過ぎた。「体を動かせ」に対する返答をしなければ。

目的が運動ではどうしてもゲームしたい欲求に負けてしまう。ならば、運動しながらやるゲームはどうだろう。そういえばフィットネス系の新作ゲームがあったな。


Fit(フィット) BOX(ボックス)とか?」

「ゲームから離れなさい」


せっかくの名案だったのに棄却されてしまった。理不尽な。

私からゲームを取ったら何も残らない。世界観が崩壊してしまうではないか。


「んまあ、機会があったら外出するよ」

「あんたの『機会があれば』は結局やらないでしょ」


私の曖昧な返答に、母は深くため息をついた。またしても見破られてしまった。


「背筋が曲がっているし、ちょっと太ったんじゃない? なんてだらしないの」


小姑のような母の嫌みは煩わしい。少し防御力が上がっても困ることはないと思うのだが……。


「せっかく美人に生まれたんだから、ルックスを活かさないと。ねえお父さん?」

「そうだね。母さんの言う通りだ」


父が母に同調する。敵が増えた。ええい面倒な。


「ほら、お父さんもこう言ってるし、ゴールデンウィーク中だけでも外で運動しなさい」


はいはいわかりましたよ。ささやかな抵抗もこれまでにする。

別に運動を絶対にやりたくないというわけではないのだ。


「誰か暇そうな子を誘ってみたら?」

「暇そうな子、ねぇ」


ラインのメッセージを見る限り、どの子も予定がありそうな感じなんだよな。


「みんな忙しいから無理な気が……」

「あら、明里(あかり)ちゃんも?」

「ーーはっ!!!」


とんだ盲目だ。新しい学校の友達と会話にかまけて、大事な友人との交流がご無沙汰になってしまっている。

もし同じ学校だったらこんなことにはならなかったのにーーなんて嘆いても仕方ないか。よし、ご飯を食べたらすぐ連絡しよう。当たって砕けろの精神だ。


「いきなり大声出さないの。びっくりしたじゃない」

「明里の予定聞いてなかった!」

「なら夕食が終わったらすぐに聞きなさい。すぐに」


母が諭すようにいう。まったく、言われなくてもやりますってば。

煩わしい母に内心ため息をついていると、父がこちらを伺う視線を向けてくる。


「もしずっと暇だったら、ポーカーを一緒にと思ったんだけど、どうかな?」

「フルハウス?」

「うん。知り合いを何人呼んでね」


『フルハウス』は遊技場の名前で、その店はトランプやルーレットなどを気軽に遊ぶことができる。近くの大通りの片隅にひっそりと構えている。

お金は賭けないので未成年でも安心。ただし、18歳未満は20歳以上の同伴者が必要だ。

父の言うポーカーとは、テキサスホールデムのことだ。海外で人気のある種目だ。


前フルハウスに行ったのはいつだったか。3年くらい前だったか。

プロゲーマー兼プロギャンブラーの父に誘われたのは、あの時が初めてだった。

どんなゲームもガチ勢の私だが、初見で深いところまでゲーム性を理解することはできず、苦い記憶として残っている。

現在は細かいルールやゲームに参加する手札、それにGTO(ゲーム理論)も一通り覚えたから、ちゃんと戦えるだろう。

リベンジに行くのもありかもしれない。


「無理そう?」


父が様子を伺っている。もしガチなら雪辱を晴らしに行ける。だが、エンジョイならそれは不可能となる。

野菜を飲み込んでから問いかけた。


「エンジョイ、それともガチ?」

「水曜と木曜の二日やる予定で、水曜は真剣勝負、木曜はわいわい楽しくやる予定だよ」

「じゃー水曜で」


ガチ勝負ができる、か。ふふ、楽しみになっていきた。

エンジョイとは違い、ガチは弱肉強食の世界だ。前は食われるだった私だが、今度は食う側に回るのだ。


「わかった。時間は昼過ぎからだよ」

「了解」


快く返事をすると、父は「お前はどうする?」と母の方を向いた。

母も誘うのか。あまり身内が増えると真剣にゲームがしづらくなるのだが。


「私はパスで。忙しいの」

「そうか。仕方ないな」


父はしょんぼりするが、すぐに真顔に戻る。母はどちらかというとエンジョイの場が似合っているため、断ったのは正解と言える。


「同年代の子も連れて来るよう言っておくね。その方が居心地いいだろうし」


父が私の方を見て柔らかな声で言った。さすが父。その気遣いに花丸をあげよう。


「頼んだ」


そう言って、残り少ないそうめんを全て口に運ぶ。

ふう、今日の夕食も美味しかった。さすが母。料理上手には、称号『料理の達人』を与えよう。


「ごちそうさま」

「おそまつさま。明里ちゃんに」

「わかってる」


母の言葉を遮って返事をし、食べ終わった器を食器洗浄機の中に置く。

そして冷蔵庫から紙パックのアップルジュースを取り出してリビングを出た。


自室に戻りベッドに腰掛け、チャットアプリのラインを開く。

また何人かから返信が来ていたので、それに応答する。

話の大半は雑多な内容だ。学校での些細な出来事や、人間関係。噂話。

大抵の会話は無難な返答でスルーしているが、たまに非日常を感じさせるような面白い話が聞けることため、止められない。

SNSがなくても過ごせないことはないだろうが、一度娯楽を覚えると、何もしない時間がもったいなく思えてくる。

なんと慣れとは恐ろしいものなのか。おや、またしても友達からのメッセージが来たようだ。


「そういえば皆、ゴールデンウィークは何して過ごすの?」

「私は前から言っていた通りーー」


学校で話題に上がったことを詳しく話して盛り上がる愉快な仲間たち。

家族と海外旅行するであったり、彼氏と豪華ランチであったり。

愉快に加え、裕福な仲間たちは休暇を満喫するようでなによりだ。

素早く反応するため、シロクマのスタンプ『素敵!』で返事をする。


さて、学校でのパーティメンバーとの会話もひと段落したことだし、ゴールデンウィークの予定を立てなくては。

まずは我が親友である明里へお誘い文、もといクエスト依頼を送ろうではないか。


「あかり、連休って暇? 遊びに行かない?」


チャットを送信する。ほんの数分後に既読がついて返信が来た。


「暇だよ。どこか行きたいところはある?」


え、マジですか。もしかして私のために予定空けてくれてたとか? ーーいや、それはちょっと自意識過剰か。


「どこかの観光地」

「なら遊園地はどうかな?」


遊園地か。何年か前、隣の県の遊園地に明里と行った。

ジェットコースターが非常に楽しかった。明里は1回でやめたが、私は2回乗って具合が悪くなり看病してもらったのは良い思い出だ。

今回も遊園地でスリリングな経験をするか。いや待て、どうせなら違う場所も検討してみたい。


「うーん、違うジャンルで何かない?」

「水族館、博物館、植物園、それともスポーツしに運動公園とか?」


候補を列挙される。さすが生きデータベース明里さん。

まだ体験したことのないダンジョンは膨大な数があるため、どれにしようか迷う。

明里は何がいいと聞くとすぐに既読がついたが、返信は即座には来ない。彼女も考えているのだろう。


私もどうしたいかしばし考えてみよう。良し悪しの厳選だ。

博物館は少し退屈そう。行く場所にもよるが、今回はパスで。

水族館は楽しそうだが、あまり運動量は少ない気がする。どこも混雑しているだろうから、チケットが買えるか微妙。

植物園は敷地の広さにもよるが、運動量はそこそこありそう。広いところであれば入場はできるだろうが、気温が高いと歩くのはつらみ。

何かのスポーツは運動量は申し分ないだろうが、目的が運動になっているのでダメだ。観光できるスポーツとかがあればいいが、なかなか思いつかない。たぶん考えれば適したものがあるとは思うが、なんか面倒になってきた。


「植物園がいいんじゃないかな?」


明里からテキストが送られてくる。候補をふるいにかけていったところ、同じ選択肢にたどり着いたようだ。


「そうだね。そうしよっか」


そう返信すると、明里からシロクマのスタンプ『OK!』が送信される。


「場所と日時はどうする? 数か所候補があると思うけど」

「3日の火曜日でお願いしたい。場所はこれから調べる」

「わかった。よさそうな場所が見つかったらシェアしてね」


シロクマのスタンプ『よろしく!』を送信する。


「じゃまた」

「うん」


明里からシロクマのスタンプ『See you!』が送られてくる。さて、イッツ・リサーチング・タイム! あまり時間がないので、早めにチェックしておかないといけない。できれば今日中に決定したい。

ベッドにどさりと寝転がり、ネットの波に溺れた。


***


 5月1日、日曜日の朝。俺は軽くランニングをしながら雑多な思考をする。


高校での生活も徐々に慣れつつある。

仲良くなったクラスメイトたちと外出するのはラブコメのテンプレではあるが、悲しいかな片手で数えても指が余るほどしか友達はいない。

不甲斐ないが、仕方ない。

二年になったら本気出すーーそう俺は心に決め、思考を切り替える。


さて、何をするか今から考えよう。

高校入学時ボーナスとも言えるこの連休をいたずらに過ごして終わるわけにはいかない。

最近ネットで話題になっている刑事ドラマを一気見するという案は、今回は却下だ。

中学のときと違って体を動かす機会が減っているので、運動をしたい。ただ漠然と運動するというのもつまらないので、どこか開拓でもしようかな。


遠出するのがよいか。運動プラス観光ができる場所。

広い運動公園とか、遊園地とか。

距離はそこそこ遠くても大丈夫だ。とにかく知らない場所を開拓していきたい。


そういえば明里の予定を聞いていなかった。家に戻ったら聞いてみよう。



 ランニングを終えて家に戻ると、明里はリビングで朝食の準備をしていた。


「おはよう」

「おはようございます、お兄さん」


明里はエプロン姿で微笑む。全く何物にも代えがたい素晴らしい笑顔だ。

その愛らしい表情を脳内フォルダに永久保存しながら、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し、ゴクゴク飲む。かー、最高だ。冷たい液体が火照った体に染みわたる。

そして、朝食の用意されたテーブルに腰掛けた。


「明里は連休に何か予定あるのか?」

「はい。友達と遊びに行く予定です」


予定ありか。予想していたことだ。連休は火曜から木曜の3日間あるわけだが、暇な日はあるだろうか。


「空いてる日はあるか?」

「えっと、木曜日は空いてますけど、課題を終わらせようと思ってます」


明里は申し訳なさように応えた。

彼女の手際の良さから言えば、連休より前に課題を終わらせていてもおかしくはないが、予想以上に課題が多く出されたのかもしれない。

後回しにするのはあまり良い手とは言えないが、言うまでもなく理解しているだろうから心配する必要はない。


「そうか。一緒にどこかに行こうと思っていたんだが、仕方ないな」


俺の言葉に明里は神妙な表情をした。しかしすぐに顔色を変え、口を開く。


「火曜日、花音ちゃんと出かけるんですけど、お兄さんも一緒にどうですか?」


花音とお出かけか。中学校が別々になってしまったため、付き合いがなくなったのではと心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。

明里が誘ってくれたことは、花音と二人だけで外出すると決めているわけではないだろう。

あとは花音が許可してくれるかどうかだが。


「ぜひ行きたいところが、花音がなんて反応するかだな」

「嫌がることはない……のではないかと思います」


明里の語尾が弱々しい。

これまでで彼女らのお出かけに同伴したことはそこそこある。

今のところ一度も拒否されたことはないが、無条件ということはなく、荷物持ちであるとかお使いであるとか、まるで使用人のような振る舞いを求められていた気がする。

今回は純粋に遊びに行く目的であるため、返事がどう来るか予測するのは難しい。

ひとまず場所を聞いてみよう。行先の距離は大事だ。


「それで、どこに行くんだ?」

「県立植物園です」


なんと、植物園か。これまで植物園という名の付く場所に訪れたことはほぼない。

幼い頃どこかの植物園に一回だけ行ったような気がするが、記憶はごっそり抜けてしまっている。


「どこら辺にあるんだ?」

「北北東に二十キロぐらいで、電車で二十分くらいで行けます」

「電車か」


俺たちの住む愛野市愛野町には私鉄の『恋々(れんれん)電車』略して恋電(れんでん)がある。

恋電を使う場合、最寄り駅である愛表(あいのもて)駅から乗車する。

愛表駅は愛野町の中心駅であるため複数の路線があるのだが、今回は北方向なので愛華町(あいかちょう)行の路線に乗っていくことになる。

愛華町は隣町で北東の方角にあり、愛野市の中で一番人口が多く栄えている町だ。


「二十分ってことは愛華町にはぎりぎり入らないな……種田(たねだ)駅あたりか」

「そうです」


種田駅は愛表駅から7個目の駅だ。

愛野町と愛華町のちょうど境目に位置しており、こぢんまりとした田舎の駅である。

普段愛華町に行くときは準急や特急に乗ることが多いため通過してしまう。もし訪れるならこれが初めての機会になる。


「そこからは歩きか?」

「はい。すぐ近くに入場ゲートがあるみたいです」

「なら迷うことはなさそうだな」


駅近なのはいいことだ。行き方はわかったが、入場できるかはどうだろう。植物園など初めてなので、予約する必要があるのかもわからないわけで。


「入場券はネットで事前購入だったりするのか?」

「ネットでも購入できますけど、入場ゲートのそばに券売機があって、そこでも購入できるそうです。当日でも大丈夫みたいです」


どうやらネットで混雑具合までチェックしているようだ。なかなかリサーチが進んでいるようだ。


「なるほど。結構調べてるじゃんか」

「ふふ。花音ちゃんが頑張ってくれてます」


なに、花音が調査しただと。あいつ、あんまりアウトドア好きじゃなかったような気がするんだが、何か心変わりがあったーーいや、親に説得されたパターンだな。


「何か見たいものでもあるんかなー?」

「特には聞いてなかったですね。……あ、運動不足を解消したいと言ってましたね」

「ふっ」


くだらない理由に鼻で笑う。俺のように毎日朝ランでもすればいいものを。


「植物園にした理由はなにかあるのか?」

「運動しながら観光もできる場所を探していて、植物園を見つけました。ちょうどどちらも行ったことがなかったので、ここに決めました」

「ほう、そういう経緯か。花を愛でながら運動とは、良い場所を見つけたな」

「はい」


明里が口に手を当ててくすりと笑う。


「予定は理解した。俺も参加していいか花音に聞いてくれるか?」

「はい」


明里が笑顔で頷いた。快い返事を待つことにする。

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