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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
7/52

文芸部入部 前編

彼女は文芸部に来てくれるのか。和人は気が気ではないようです。

 4月29日。金曜日。

今日は部活動入部届の締切日だ。すなわち今日から正式な文芸部の部員になる。


 俺や篠原さんはほぼ毎日のように文芸部の部室に訪れていたため、入部するのはもうわかりきっていることだが、問題なのは琴吹さんだ。

彼女は以前文芸部に来て以来、他の部活動もたくさん訪れていたようなので、結局どの部活動に入るかわからずじまいだ。なので俺は毎日のように、琴吹さんよどうかどうか文芸部に来てくださいと心中祈っていた。


晴れて正式部員となった俺は朗らかに挨拶をしながら部室への扉を開けた。


「こんちは!」

「こんにちは」


霞先輩は朗らかに応えてくれた。


「やっと正式に入部ね」

「はい、改めてよろしくお願いします!」


俺は厳しい年齢格差社会を超えた名残で、勢いよく頭を下げた。

先輩という存在が、敵になるか味方になるかは俺の実力と姿勢次第だ。

霞先輩とは良好な関係を築いていきたい。


「こんにちは、今日からよろしくお願いします」


まもなく、篠原さんが部室に入ってきた。どこか愛想のないしれっとした挨拶だが、彼女の雰囲気的にはふさわしい。


「ええ、こちらこそよろしく」


霞先輩は丁寧に挨拶を交わした。


「そういえば、1Bの琴吹さん、彼女は来てくれるのかしらね……?」


霞先輩がふと思い出したように、俺たちに問いかけた。


「さあ、どうでしょうか……」


わからない。

彼女が何の部活に入るかは、彼女のみぞ知る。

霞先輩が言うには、部活動見学に来たのは俺と篠原さん、琴吹さんの三人だけらしい。

よって、他の部員が獲得できる望みは極めて薄い。

同学年の部員が二人だけというのは少し寂しいので、琴吹さんにはぜひ来てもらいたい。

今一度、彼女の来訪を念じておこう。



 そして数分後。もう来ないのか、いやまだ時間はある。


きっと来てくれる。一緒に見学したときの印象は良好だったんだから。



いや、でも結構迷ってたみたいだし。帰り側に勧誘したら曇り顔してたからなー。



ああ、わからん。一体どっちなんだ。来るのか来ないのか。休み時間とかに聞こうと思えばできたんだけど、断られるのが怖くて結局聞けなかったんだよな。


負の感情が脳内に増殖し、もう少しで頭がオーバーヒートするかというところで、



ガラッ。



部室のドアが開かれる。一体誰が!?


「こんにちは!」


なんと、入部届のプリントを手にした琴吹さんが、


「今日からよろしくお願いします」


と、あの素晴らしい笑顔を俺達に向けた!


「琴吹さん来てくれたんですね。やった!」

「あら、よろしくお願いしますね」「よろしく」


俺たちは各々返事をした。

いずれの声にも安堵と喜びの要素が含まれているように聞こえた。俺は内心号泣していた。


うれしい。うれしすぎて泣ける! 

日頃の行いをよくしていたおかげだな。神様に感謝しなければ。


ーーいやいや、感謝すべきは琴吹さんか。琴吹さん、本当にありがとうございます。


「新入部員は計三名ですね。これでまた様々な活動をすることができます。改めてよろしくお願いします」


「「「よろしくお願いします!」」」


「ええと、顧問の先生がもうすぐ来られると思います」


ガラッ!


「あ、来ましたね顧問の……って一ノ瀬先生?」

「顧問の一ノ瀬です。よろしくね!」

「よ、よろしくお願いします」


俺は狼狽しながら返答した。

まさか一ノ瀬先生が文芸部の顧問だったとは思わなんだ。


「一ノ瀬先生は去年から文芸部の顧問を務めていらっしゃいます。今年も引き続きよろしくお願いします」

「もう、霞ちゃんたらお堅いんだからー」


先生が手をひらひら振りながら言うと、霞先輩はふいっと目を逸らした。


「それじゃ恒例の歓迎会といきますか!」


先生が張り切った様子で言った。


「え、歓迎会なんてあるんですか?」


俺は素っ頓狂な声を出した。以前所属していた運動部にはない要素だからだ。


「ええ」


霞先輩は淡々と応えた。


「ありがとうございます! ……で、具体的に何をするんですか?」

「詩を作ってもらいます」

 

俺たちの困り顔を見て、先生はニヤリと笑った。



執筆は大変です。でも頑張って書いております。

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