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文学少年の恋物語 〜令和版源氏物語〜  作者: AYASAM
1年生1学期
6/51

気になる隣人との初会話

さあ、一発目の会話です。うまくいくかな?

 次の日。

俺は少し寝不足だった。なぜかというと、隣の席の彼女がどういう人物なのか気になって仕方がなかったからだ。


艶のある金色の髪、サファイアの瞳。そして、心が包み込まれるような美しい笑顔。ライトノベルや漫画に登場するどの人物よりも色鮮やかで、立体感があって、美しかった。


なんでもいいからとにかく話をしてみたい。



教室に人が増えていくのを、彼女が来ないかどうかそわそわしながら眺めていると、朝会の五分前になったところで彼女が教室へ入ってきた。


「おはようございます」


彼女は昨日と変わらない美しい笑みを見せた。


「…………」


「あの、小暮さん。大丈夫ですか? ぼーっとしてますけど」


「……え、あぁ、大丈夫です。おはようございます」


俺は脳裏を焦がされて、数秒近く固まっていたようだ。頬が並々ならぬ熱さになっているを感じて、顔を下にそらした。



キンコンというチャイムとともに、先生が登場したことによって、俺の非日常的な朝は終わった。




午前中に話しかけることが叶わなかったが、昼休み、ついに俺は琴吹さんに話しかけることができた。


「あの、琴吹さん?」


「はい?」


「えっと、部活、何に入るか決めてますか?」


「部活ですか? えっと、運動はあまり得意ではないので、文化部に入ろうと思ってます。でも、具体的にはまだ決めてないです」


「あ、そうですか」


俺は心のなかで跳ね回った。これなら文芸部に誘うことができる。


「自分文芸部に入る予定なんですけど良ければ放課後部室見学に行きませんか?」


いざ勧誘するとなるとなんだか緊張して、普段より早口になってしまった。ちゃんと伝わったのか。


「えーと、はい。お願いします」


「良いんですか? ありがとうございます!」


よし、上手くいった。放課後が楽しみだ。



 

 琴吹さんと会話してから放課後になるまで、非常に時間が長いように感じた。授業を垂れ流すように聞きながら、気づかれないように隣の人を観察してみた。

結果として彼女は、真面目に授業を聞き、ノートもしっかりとる優等生であることがわかった。

俺は彼女が勉強熱心であることに感心して、ますます興味が湧いた。


「琴吹さん。行きましょうか」

「はい」


俺は琴吹さんを伴い文芸部の部室に向かった。並んで歩いていて、彼女が俺より十数センチほど低いことがわかった。あまり女子と話すのは慣れておらず、緊張して何を話せばいいかわからなくなっていたため、並んで歩かず少し前を先導するようにしていた。

何も話さないとはいえ、歩くペースには気を使う。彼女の外見からして、普段から運動をがっつりやっている系ではないと判断してのことだ。



数分近く歩き、目的の場所へとやってきた。俺は後ろを振り返り、琴吹さんに到着した旨を伝える。

すると、彼女はにこりと微笑んだ。


「じゃあ、入りますね」


俺はそう言って、ガラッと部屋の扉を開けて中に入った。すぐ後ろから琴吹さんが続き、同時に声をそろえて挨拶をする。


「「こんにちは」」


「こんにちは……あれ、あなたは?」


霞先輩が顔を上げ挨拶する。視線を俺の隣の琴吹さんの方に持っていき、興味深そうな表情で問いかけた。


「一年B組の琴吹実です。見学に来ました」


琴吹さんは改まって返事をする。丁寧な声音だ。


「あら、そうですか。私は二年の高橋霞です。ゆっくりしていってください」


霞先輩は微笑を浮かべながら彼女を歓迎する。琴吹さんは「はい」と軽く頭を縦に振って応えた。


「あれ先輩、篠原さんは?」


「まだ来てないーー」


ガラッ! 扉が勢いよく開かれる。誰かと皆が視線を送ると、噂をした人物が部室に入ってきた。


「こんにちは。あれ、アンタは……?」


篠原さんは霞先輩から俺を一瞥し、琴吹さんへと視線を向けた。相変わらず不愛想な態度で問いかける。


「一年B組の琴吹実です。部活動を見学しに来ました」


「ふーん、そう。1Aの篠原栄子。私も見学だから。よろしく」


「あっ、はい。よろしくお願いします」


どうやら篠原さんは琴吹さんに興味がないようだ。窓際の席に腰掛けると、窓の方に顔を向けてしまった。



 その後、俺たちは文芸部の活動について話し合った。

琴吹さんは積極的に活動内容について質問していた。普段の活動内容や、文化祭について、その他不定期に行っている活動など根掘り葉掘り聞いていた。霞先輩は物怖じすることなくすらすらと簡潔に答えていた。俺は二人の会話を近くで聞き、篠原さんは遠くの席からたびたび耳を傾けているようだった。

ひとしきり話が終わったら、今度は何の本を読んでいるかなど、差し障りのない雑談を少しだけして部活が終了した。



帰り際に、俺は琴吹さんに話しかけた。


「琴吹さん、文芸部はどうでしたか?」


「雰囲気のいい部活動でしたね。文芸部の活動についてよく理解できました」


琴吹さんはそう言って微笑んだ。おおむね良い印象を持ってくれているようだ。


「よかったです。人数不足なんで、ぜひ琴吹さんも入ってほしいところですけど……」


俺が願望を伝えると、琴吹さんは困り顔をした。即決とはいかないようだ。


「まあ、他にもいろいろ見て回った上で決めた方がいいですね。もし文芸部のことで聞きたいこととか思いついたときはいつでも声かけてください。じゃあ、今日はこれで」


「はい、さようなら」


俺は琴吹さんと別れ、帰路に着いた。



日々精進します。よろしくお願いします。

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