*イライラが止まらない
<奴の動きに注意していてくれ>
「解りました」
ベリルの指示に応え、コーヒーをひと口含んで画面を見つめた。他の場所も流して見ているが、相手はかなり慌てているように感じられる。
あのサイレン手榴弾は最高だったな……と笑みをこぼす。
約20m離れたここまで音が聞こえていた。あれだけの音なら、そばにいた人は飛び上がるほどビックリしたんじゃないだろうか。
大人でも、軽くかくれんぼ出来そうな大きさなのは見取り図を見ても解る。そんな敷地に猫が2匹入り込んだようなものかも。
「猫よりも厄介だけど」
と口の中で発して、自分の作業に専念した。
一方、大賀邸──
「奴らはどこだ!?」
「離れにいたぞ!」
とにかく、2人の居場所が掴めなくて右往左往していた。
「ベリルなら解る……しかしどうしてブラスト・マニアまでが見つからん」
あいつは爆弾マニアであるだけで、ただの傭兵だ。
アルジャンは歯がゆくて舌打ちを繰り返す。居間に接近している様子は無く、ひとまずは安心だが、
「あんなデカイ図体で見失うなどあり得ん」
日本人である泉だが、鍛え方が違う。ここにいる警備などよりも立派な体格である。
「ここにいたりして」
天井裏の暗闇のなか、ぼそりとつぶやく。
泉は、進入してすぐに警備の目から逃れ数多くある部屋の一つ、その天井裏に身を隠した。動けば天井が抜けてしまうため何も出来ない訳だが、
<emerge(「出現」という意味)>
「アイサー」
ベリルの合図で、周りに人がいないことを確認してゆっくり降りる。
「さてと、始めますか」
発して警備を探す。
「! いたぞ!」
向こうから見つけてくれてラッキー。
「待て!」
口の端を吊り上げて駆け出す男を、数人の警備が追いかけていった。
居間──
「! 泉が現れた? 捕まえろ」
今までどこにいたんだ?
アルジャンは仲間の連絡に舌打ちし、再び連絡を取る。
「ベリルを早くなんとかしろ。 !? なんだと!? 消えた?」
今度はベリルが? どういうことだ。
奴らは最後の宝石を奪いに来たんじゃないのか? なのに、これはどういうことなんだ。居間にあるということはすでに解っているだろうに、一向に近づいてこない。
監視カメラを破壊することもしない。奴らの作戦がまったく解らない……男は初めて、背筋から冷たいものが走った。
「来るなら来いよ」
苛つき気味につぶやき、仲間が忠告した言葉を思い出す。
『奴と普通に闘えると思わない方がいい』
あれは、こういう意味だったのか? 無茶苦茶じゃないか。いくら豪邸とはいえ、それほど時間のかかる場所じゃない。
なのに、戦闘を開始してからすでに1時間が経っている。
奴らは何がしたいんだ!? 目的を忘れているんじゃないだろうな──こっちが不安になる。





