*青年の複雑な心
アパートに戻った健吾は、テレビも付けずにずっと考えた。
僕はどうしたいんだろう──
「深刻に悩むほどのものじゃない」ってベリルさんは言ってくれたけど、普通の人間が知ったからといって得をするような事柄でもないって事だよな。
もうこの際、それがどうでもいいような内容でも聞くのが怖い気がしてきた。それほどに、あの2人の雰囲気と自分とでは大きな隔たりがあると感じたのだ。
僕には到底、あの中に入れる勇気も力もない。そう思うと、
「なんか、悔しい」
きっとこれは、どんなものにでも言える悔しさなんだろう。そこに自分はいないという孤独感というのか疎外感というのか、妙な空虚感が心を襲う。
それを埋めようとするのか、そのままスルーを決め込むのか──ひと晩中、健吾は悩んだ。
朝──
「……完全に寝不足だよ」
布団から上半身を起こし肩を落とす。
バイトを休む訳にはいかない、重たい体を無理に起こして洗面所に向かった。歯を磨き、パジャマを脱ぎながら今日着ていく服を出す。
そうして、いつものようにバイト先に向かった。
いつものようにバイトを終えて、「お疲れ」の挨拶で店を出る──でもここからがいつもと同じじゃない。
健吾は、ベリルたちの泊まっているホテルに向かうべく歩き出す。
「!」
突然、腕を掴まれて振り向くと、掴んだ主は健吾の反応に構わずズンズンと歩き続ける。
「あ、イエ……ベリルさん」
「私の言葉に合わせてもらいたい」
「え?」
絶世の美女に扮しているベリルは立ち止まった。
「お前が選んで来いと言うからいくつか店を回ったが、私の欲しいアクセサリーは無かった」
少し大きめの声で健吾を見つめる。
「えっ!?」
一瞬、驚いてベリルが視線を示した先を一瞥すると、険しい目をこちらに向けている男2人が視界に入り慌てて笑顔を作った。
「き、君は選り好みが激しいねぇ。解ったよ、もう少し金額を上げていいからまた選んでおいで」
「本当に? ありがとう」
「──!?」
抱きしめられて、叫びそうになるのを飲み込んだ。
嫌じゃない、嫌じゃない! むしろ、なんかちょっと嬉しいけど……って僕はホモじゃなーい! でもまったくもって嫌な気がしないのはなんでだ!?
そんな心の葛藤を繰り返してようやく、見ていた男たちが去っていき、ベリルは小さく溜息を吐き出して健吾から離れる。
が、健吾の動悸はまだ収まらなかった。
「すまない」
「あっ、いや……あはは」
「さすがに同じ人間が店にいたのでは疑われてしまう」
「え? あ」
そうか、さすがに店も怪盗が現れた店舗の監視カメラはチェックしているよな。そこにいつもイエ……ベリルさんが映っていれば疑いもするか。
「また偵察に行ったの?」
「いや、遂行中はこの恰好でいろと言われてな」
「そうなんだ」
彼はそんなに有名人なのかな?
「今回は少々、手荒くいくか」
ベリルは小さく溜息を吐いて頭をかいた。





