第24話 Side カーミラ 天使降臨
「ルミア!」
教室から出てくるルミアを見つけて思わず抱きしめた。
ん~、いい匂い。
「お、お姉さま。苦しいです」
「大丈夫だった?いじわるする人はいなかった?お勉強はきちんとできた?」
「うん。みんな親切にしてくれたし、授業も大丈夫だったよ」
「そう、本当に良かった。お姉ちゃんなんて先生の言ってることが何一つ分からなかったからルミアのことが心配で・・・」
「お姉さまこそ大丈夫だった?授業時間外に何度も殺気が飛んでたよ」
「う、うん。ほら、見ての通り大丈夫だったよ」
「そうそう、私にちょっかいかけてきた命知らずがいた以外にはしょうもない理由だったものね」
「う・・・」
うぅ・・・しょうもないなんて・・・。
「そうですか・・・ご無事で何よりです」
「ありがと。そうそうこの3人があたくしたちと一緒に昼食を取りたいそうよ」
「騎士クラスの方・・・ですか?」
「はい、騎士クラス1年のミハエル=レディエンスです。お見知りおきを、可愛らしいお嬢さん」
「お、お姉さま。お行儀が悪いです。挨拶していただいているんですから離れて・・・」
「・・・・・・はい」
私はしぶしぶルミアを離した。やっぱりミハエルは私の敵なのかもしれない。
みんなの自己紹介はすぐに終わる。ミハエル、デューク、シルフォンス・・・憶えられるかな。
自己紹介が終わったところで再びミハエルが口を開く。
「それにしてもお二人は本当に似ていますね」
私がこの愛らしいルミアと似ているとは思えないけど、そう言われるのは素直に嬉しい。
「私たち双子ですから」
「「え!?」」
男たちの声が重なる。何をそんなに驚いているんだろう?
「む、これでも私は17歳です!そりゃあ、お姉さまと比べたら背とか・・・とかは・・さいかもしれないけど・・・」
ルミアが腰に手を当てて口を膨らまして言う。いつもの怒ってますポーズだ。
なんて可愛いんだろう。抱きしめてチュッチュしたいな・・・。
「カーミラ・・・獲物を狙う鷹の目になっていますわよ・・・・・・」
なんて言われてもよく分からない。
「い、いえ、本当に少しだけ想像と違っただけです。ルミアさんのように道を歩けば誰もが振り返るような愛らしいレディに対して失礼な物言い、申し訳ありません」
ミハエルは取り乱したようにまくし立てる。
「そ、それは褒めすぎです!」
ルミアの顔が真っ赤に染まる。そしてそれを見ていたレアが驚愕の表情で呟いた。
「こんないたいけな少女を口説いて・・・・・・ロリコン?」
「犯罪はさすがにやめとけよ」
「・・・」
「うぅ・・・私はロリで犯罪を危惧されるほど子供に見えてしまうんですね」
「ご、誤解です!」
よく分からないけどルミアが落ち込んでいる。ところで・・・。
「ロリコンって何?」
「ロリコンというのは、大人のくせにルミアちゃんみたいな小さい子が好きでうまいこと言って口説いたり、家連れて帰ったり、結婚を迫ったりする変態のことよ。つまりミハエルのような男のことね、あっ」
「プ、プリンセス!」
ルミアを・・・家につれて帰ったり・・・結婚を迫ったり・・・?
ルミアと結婚・・・結婚なんて・・・なんてうらやま、いや許せない・・・、許せない!
やっぱり思った通り危険な人だったんだ!ルミアと、け、結婚なんて!結婚なんて!結婚なんて!結婚なんて!!!
そんなこと出来ないように、虐殺対象なんて生物はこの世から消え・・・
「カーミラ!冗談だから!ミハエルがロリコンっていうのはただの冗談だから!」
「そう・・・なの?」
しゅるしゅると殺気が溶けていく。
「も、もうダメかと思いました・・・」
そう言ってしゅるしゅるとミハエルが尻もちをつく。
「はっ!さすがはリセの竜殺し!ぞくぞくするような殺気だ」
なぜかデュークがニヤリと笑っている。
「さっきからこの調子だったのよ・・・」
「もう、お姉さまったら・・・」
何だか二人から呆れられたような目で見られた。何でだろう・・・
「・・・昼食」
・・・シフォン?から蚊の飛ぶような声が聞こえた。彼は本当に声が小さい。むしろそんなに小さい声を出す方が難しいと思うくらいだ。
「そうね。こんなところで立ち話なんてしている場合じゃなかったわ。早く行きましょう」
私たちは急いで食堂へと向かった。食堂ではお金を払わずにそれぞれ好きなものを注文できるようになっている。私は当然お肉を注文した。
みんなプレートに乗ったご飯を受け取ると、テーブルへと移動する。
いただきまずをしてお肉を口に入れる。ちょっと味付けは濃いけど肉汁が口の中に広がりなかなかに美味しい。
私は満足しながら次のお肉を口に含むと、デュークが口を開いた。
「なぁ、確かカーミラとか言ったな、あんた」
「ん?もぐもぐ」
「傭兵として名を馳せたあんたが何で今更学園に入ろうなんて思ったんだ?」
「ふぇあひはほはへははあ」
「何言ってるのかわからねぇ・・・」
「お姉さま、口にものを入れたまましゃべるのはお行儀が悪いです・・・」
「ひゃい」
またルミアに怒られてしまった。私はもぐもぐと口の中のものを噛んでは飲み込んでいく。
「あたくしがリセまで行って拝み倒したのよ」
「プリンセス自ら、ですか」
「なるほどな。朝の一件で姫さんの行動は無駄じゃなかったと証明されたわけだ。姫さんは確かカーミラが一人でバジリスクを倒すところを見たんだよな」
「ええ、そうよ」
「しかし暴獣相手にどうして一人で戦おうなんて思ったんですか?仲間と協力したりはしなかったのですか?」
「仲間?きょうりょく?」
「聞いても無駄よ。リセでカーミラたちはほぼ孤立状態だったし、文字も読めないし、お金の価値も分からないから全部酒場の主人の言いなりになっていわ。バジリスクのときも一人1000Gなんて詐欺みたいな報酬で討伐に出てたしね」
「つまり一人で討伐したから1000Gしか出さないってわけか。ハンターを舐め腐ってやがる」
「さすがに私の権限で正当な報酬を毟り取ったけどね」
「あのときは本当に驚きました。お姉さまったらいきなり40000Gも大金を持ち帰ってくるだから」
そう言いながらも言葉とは反対にルミアはくすくすと笑っていた。
「暴獣か・・・俺もいつか討伐してぇな」
デュークは遠い目をして想いを馳せているようだった。
レアやジークたちとご飯食べたときもそうだったけど、大勢でご飯を食べるのは本当に楽しい。
きっとそれはルミアの嬉しそうな顔を見ながら食べられるからだと思う。




