【第11話】魔王の娘、体験入居!? 異世界福祉に試練の風!
ある日、セカンドリーフの門前に、高級そうな馬車が止まった。
金の装飾、紫のレースカーテン、魔法の紋章が輝く旗――
(え……なにこのセレブ感)
と、職員一同が戸惑うなか、扉がガチャリと開く。
「庶民施設の皆さん、ごきげんよう!」
馬車から降り立ったのは、ド派手なドレスに角つきカチューシャをつけた少女。
年齢は見た目14〜15歳、背筋をぴんと伸ばし、口角は常に上向き。
「わたくし、リリス・アスモデウス! 魔王の娘にして、この地の福祉に興味を持ったの!」
「……え、なんで?」
「王都の“福祉特集番組”で観たのよ。あなたたち、世界初の介護施設を作ったんですって?」
(……誰だその番組作ったの)
リリスは数日間の“体験入居”を希望してきた。
「現場を体験して、魔界にも福祉を広めるの。さ、わたくしの部屋はどこかしら?」
「……ええと、利用者でもないし、賓客用の部屋なんてうちには……」
「ないの!?」
その日の夕方、案内されたのは――
「ここが、スタッフの仮眠室だ」
「……布団が3枚、床に直置き……?」
「俺は倉庫に寝てるし、サラは屋根裏。レオンは書庫。グランは……納屋だな」
「馬扱いじゃないか!」
「まあ、彼、実際ケンタウロスだし……」
さらに食堂では――
「本日の夕食、スライム野菜スープとドラゴン根菜ごはんでーす!」
「え、これ……見た目ゼリーだけど……」
「見た目はアレでも、栄養バランス抜群だぞ」
「わたくし、王都式七品前菜がないと眠れない体質なんだけど!?」
「……健康になれる体質だと思ってくれ」
そして翌朝――
「わたくし、夜中に3回蚊に刺されたわ! あとグランさんのいびきで3回目が覚めた!」
「生きてる証だな」
「お風呂は……どうせまた薪風呂なんでしょ!?」
「ドワーフ式。最新モデルだ」
「……ある意味すごいわね、この施設」
だが、リリスはふと、ミルダと話しているサラの姿を見て、何かが引っかかった。
「……あなたたち、ここでただ“働いてる”んじゃないのね」
「うん。たぶん“誰かの人生に付き合ってる”感じかな。
それって、案外……悪くないよ」
リリスはしばらく黙っていたが、ぽつりとつぶやいた。
「……王族のわたしが“誰かと一緒に暮らす”って、初めてかも」
その夜、彼女は自ら厨房に立ち、翌朝のパン生地をこねていた。
「なんか……“やる側”ってのも、悪くないわね」
次回:「定員オーバーと訪問支援隊! 広がるセカンドリーフの輪」
施設に入りきらない高齢者たち、広がる支援のニーズ。
優一たちは“訪問型介護”という新たな一歩を踏み出す――!
第11話までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、少し異なる立場や価値観を持ったキャラクターが
介護という現場に関わるお話を描いてみました。
介護の現場には、いろいろな人がいます。
経験の浅い人、プライドの高い人、不安を抱える人――
でも、そういう“違い”が集まるからこそ、生まれる気づきや優しさがあります。
異世界という舞台でも、「分かり合うこと」は簡単ではありません。
でも、分かろうとする気持ちさえあれば、少しずつでも距離は縮まっていく。
そんなことを、このお話でも伝えていけたらと思っています。
次回もまた、新しい出会いや出来事をお届けします。どうぞお楽しみに。




