表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/15

不届き者

「大丈夫ですか!?」


突然の出来事に唖然として固まっていた私に、カリノアさんが肩を揺らしながら問いかけてくる。

私はその言葉と行動で正気に戻り、カリノアさんの顔をじっと見つめる。

そして、私たちを襲ってきた人を見ようとして…カリノアさんに止められた。


「やめたほうが良い。君には少し、刺激が強いだろうからね」

「は、はい…」


刺激が強い…殺されちゃったのかな?

魔法使い達の晩餐会でこんな事したら、殺されちゃってもおかしくない。

…でも、見ないほうが良いほどってどんなの―――ッ!!


好奇心から、カリノアさんに止められていたにも関わらず、ソレを見てしまった。

そこにあったのは、体を縦に真っ二つに切断された死体。

その断面が見えてしまった。


「―――ッ!!!」

「大丈夫か!?」


思わず涙を流して吐いてしまった。

見なければよかったと後悔もした。

けれど、見えてしまったものは仕方がない。

ほんの数秒…いや、1秒かそれに満たない時間しか見ていないにも関わらず、私の脳裏に焼き付いたその光景。

思い出しただけで何度も吐き戻してしまう。


何度もその場で吐き、床を吐瀉物で汚しきった私は、ついに吐く物がなくなってしまった。

それを見計らったカリノアさんに抱えられ、晩餐会の会場を離れる。

建物の外に出ると、たまたま近くを通りかかった使用人に水を用意させ、その水で口と手を洗ってくれた。


「ありがとう、ございます…」

「いえいえ。当然のことをしたまでですよ淑女が苦しんでいると言うのに、遠くから見るだけで何もしないなど、紳士としてあるまじき行為ですからね」

「本当に…ありがとうございます…」


ハンカチを取り出して私の手と口周りを拭いてくれるカリノアさん。

こんなに優しくて謙虚で…それに見た目もすごく好み。

いいなぁ…やっぱり、運命の出会いってあるものなんだなぁ…


カリノアさんの優しさに触れ、さっきまでの嫌な気持ちが吹き飛んでつい浮かれてしまう。

けれど、すぐに自分の本来の仕事を思い出して首を横に振る。


「ごめんなさい。私、魔女様とのお仕事が…」


私には大切なお仕事がある。

魔女様の横で、何かあればどんな仕事も引き受けると言う大切なお仕事があるんだ。


しかし、カリノアさんは変わらず笑みを浮かべながら私の言葉に話を続ける。


「テラ様の側付きの話かい?それなら問題ないと思うよ」

「どうしてですか?」

「さっき、君を襲った不届き者の雇い主…要は、暗殺を手引きした奴を追いかけて出ていったからね。今は多分、来て欲しくないんじゃないかな?」


暗殺を手引きした者…刺客を送り込んできた人って事か。

そして、その不届き者を始末する。

そんな現場を私に見せない為に、魔女様は私を置いてそっちに向かったんだね。


「テラ様が戻ってこられるまでの間、ここでゆっくりすると良いよ。このお水でも飲んでさ」

「ありがとうございます。いただきます」


カリノアさんは私がもっと落ち着けるようにお水をくれる。

こんなに気遣いが出来るなんて…魔術師は危険ってのは嘘なんじゃないかな?

学校で習った事は間違いだったとか?


(魔女様はどうしてそんな事を学校で教えてるんだろう?個人的に魔術師が嫌いなのかな?)


お水を少しずつ飲みながらカリノアさんと楽しく談笑する。

カリノアさんは本当に良い人で、私のどんな話にも合わせて、笑ってくれる。

そして、いつの間にか眠たくなって気がつけば私はカリノアさんの腕の中で眠ってしまっていた。










ようやく薬が効いたようだ。

大魔女の守りの魔法も、同じ大魔法使いの作った薬の前には無力。


「あとはこの娘を引き渡すだけ。全く、危ない橋を渡ることになったものだね」


正体不明の依頼人。

おそらく大魔法使いかその候補だろう者が私に接触し、大魔女テラ・ニューライトの専属メイドを攫うよう命令して来た。


「何故私のような無名の有象無象に…まあ、おかげでここまで容易く接触出来たわけなのですが…」

『その通り。貴様のような人畜無害な有象無象ほど、奴も警戒しないというもの』

「……どうでしょうね?あの疑り深く警戒心の強い魔女が油断するとは思えませんがね」


私の背後に現れた依頼人。

隠匿の魔法でその存在感を隠されていたせいで、全く探知出来なかった。

私は腕の中で眠る魔女見習いを引き渡すべく一歩前に出る。


その瞬間、急激に私の腕にのしかかる重みが増え、ガクンッ!と体が傾いてしまう。

なんとか体勢を崩さないように耐え、何事かと腕を見るとそこには魔女見習いは居らず、首の無い男の死体があった。


「全く、油断ならんな。しかしまあ、まだこんな連中が居るとは思わなかった」

「っ!?」

『しくじったな…クソガキめ』


依頼人とは反対方向から聞こえる声。

今この場に居てはならない者の声。


「テラ、様…」


“英傑殺し”『見えざる大魔女 テラ・ニューライト』

私が連れ去ろうとした見習い魔女の主であり、師匠。

敵として相対すれば死しかないと言われるその人物が、そこには立っていた。


「最近音沙汰なかったじゃないか。死んだのかと思っていたぞ。ブェルメト」

『黙れ。その名は捨てた』

「……ふぅ〜ん?」


ブェルメト…確か、北の塔所属の元大魔術師候補だった男。

抗争で傷を負ってから音沙汰なかったと言うのは聞いていたが…まさかこんな所でお目にかかるとは。


「抗争の傷…傀儡化されたか。哀れだな」

『黙れ』

「それしか言えんのだろう。誰がお前をそんなのにしたか。興味はないが…まあ、お前の名誉のためにもここで闇に葬ってやろう」


そう言って人差し指をブェルメトに向けるテラ様。

ブェルメトもすぐさま杖を抜いて魔法で応戦しようとするが…突然首を切断され、地面に倒れた。


……これだ。

大魔女テラ・ニューライトが、『見えざる大魔女』と言う二つ名で呼ばれる由縁。

不可視の斬撃を放つ魔法を使い、下級の魔法使いなら即死。

熟練した魔法使いであっても防ぎる事は困難。

そんな斬撃を簡単に、一度に大量に、或いは断続的に放つ事が出来る。


しかも、防げなければ例え熟練した魔法使いでもこのザマだ。


「次はお前だな」


その言葉が聞こえた時には、膝から下の感覚が無くなり、体を支える力を失った私はその場に崩れ落ちる。


「安心しろ。苦痛なく殺してやる」


頭上に魔力を感じる…

しかし魔法は見えない。

これは、テラ様のもう一つの見えざる魔ほ―――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ