96話 優一が死ぬ未来
ある日の朝。僕はイアの隣に座りコーヒーを飲んでいた。
「お父さんの膝に座って良い?」
イアは僕に聞いてきた。
「良いけど…」
僕がそう言うとイアは僕の膝に座ってきた。
「流石に大きいな…」
僕はそう呟いた。
「じゃあ、これでいい?」
イアは自分に魔法を掛け自分の身体を小さくした。
「お父さん、私の頭を撫で撫でして」
「お…、おう…」
僕はイアにそう言われ、イアの頭を撫でた。イアは僕に撫でられると嬉しそうにした。僕は昔、イルとイアと一緒に暮らしていた頃を思い出した。あの頃もイアは僕の膝に座りよく頭を撫でるのをせがんだものだ。
「お父さん、もっと撫で撫でして」
僕はそう言われイアの頭を撫でた。
「お父さん来て!」
僕がイアに頭を撫でていると僕の息子が僕を呼んだ。
「どうした?」
「レイナの様子がおかしいんだ」
僕は息子にそう言われ、レイナの寝ている部屋に向かった。
「どうしたんだ?」
僕がレイナの居る場所に辿り着くとレイナが涙を流していた。レイナは息が荒くなり、過呼吸の状態になった。
「大丈夫か。ゆっくり息をするんだ」
僕はレイナの手を握り落ち着くように言った。
「一体、どうしてこうなった?」
暫くするとレイナは落ち着いたのでレイナに聞いた。
「ここでは言えない。お父さんと二人で話したい」
レイナはそう言い、僕とレイナの二人で部屋で話すことになった。
「何があった?レイナ」
僕は聞いた。
「お父さんは私が魔眼を使えるのは知っているよね」
「ああ」
僕は頷いた。
「私は先、魔眼で未来を見ていたら恐ろしい未来が見えたの」
レイナは怯えていた。
「どんな未来だ?」
僕は聞いた。
「お父さんが死ぬ未来」
レイナはそう言うと涙をもっと流した。
「僕が死ぬのか?どうやって死ぬんだ?」
「分からない。でも雨が降っている日に私たちは喪服で集まり、お墓の前で悲しんでいるの」
「お墓の名前を見たらお父さんの名前が書かれていた」
レイナはそう言った。
「そうか。ちょっとイアを呼んでくるから少し待ってくれ」
僕はそう言い、部屋を出てイアを呼びに行った。
「………」
レイナは待っていた。
「入るぞ」
イアはそう言い、僕と共に部屋に入った。
「お父さんから事情は聞いた。レイナ、君が見たのは数ある未来の内の一つなのかもしれない。大丈夫かどうか私の魔眼で君が見た未来を見るから私の手を握って」
イアがそう言うとレイナはイアの手を握った。
「お父さんは部屋を出て、集中したい」
「分かった」
僕はそう答え、部屋を出た。
「じゃあ、私の力を君に流すから受け入れて」
「うん」
レイナは頷いた。イアは魔眼でレイナの見た未来を見た。そしてその未来に辿り着くまでの過程も全て見た。
「どうだった?」
「………」
イアは黙ったままであった。
「お姉ちゃん?」
「大丈夫。レイナが見たのは数ある未来の一つだったから」
イアは答えた。
「数ある未来の内の一つって事はもしかしたらその未来の出来事が起こるって事?」
レイナは聞いた。
「そうだよ。もしかしたらお父さんは死ぬかもしれない。でも私の言う通りにすれば回避出来るから大丈夫」
「どうすれば良い?」
レイナは聞いた。
「簡単な事だから大丈夫。まず一つ目は魔眼をもう一生使わない。二つ目はお父さんの力、暗黒竜の力を貰わないようにする。この二つを守れば最悪な未来は回避出来る」
「出来そう?」
「うん」
イアが聞くとレイナは頷いた。
「じゃあ、話は終わり。お腹減ったからご飯を食べに行こ」
イアはそう言い、レイナと共に部屋を出た。
「あ、お父さん」
イア達は部屋を出ると扉の外に優一が立って二人を待っていた。
「大丈夫そうか?」
僕は聞いた。
「うん、大丈夫。レイナ、お父さんと二人で話したいから先に行ってて」
「分かった」
レイナはリビングに向かった。
「イア、僕は死ぬのか?」
僕は恐る恐る聞いた。
「お父さんは死なないよ」
「そうか」
イアの言葉にそう答えた。
「お父さん、これ上げる。お守り」
「おお、ありがとう」
イアは僕に黒色の手首に付けるブレスレットを渡してきた。
「このブレスレットを肌身離さず持っていれば大丈夫。これで最悪な未来は避けられる」
「付けてみて」
僕はそう言われ先ほど貰った、右の手首に黒いブレスレットを付けた。
「おお、良い感じだな」
僕は手を上に上げブレスレットを見て喜んだ。
「お父さん、自分が死ぬかもしれないのに暖気だね」
「そうか?父さんは今まで何度も死にそうになった事があるから、今回も死なないと思うんだ」
僕はそう答えた。
「それにこのブレスレットを付けていれば大丈夫なんだろ?」
僕はイアに聞いた。
「うん。肌身離さず持っていればね。お風呂に入る時も外しちゃだめだよ」
「分かったよ」
僕はイアの言う通りにしようと誓った。
「あと大事な事だけど、暗黒竜の力はレイナに絶対に譲渡しちゃ駄目だよ。他の人に譲渡するのも駄目。分かった?」
「ああ、分かった」
僕は深く心に刻んだ。




