94話 子供達が描いた僕の似顔絵
それから僕はエリカが居たという証拠を見つけるため家族のアルバムを自分の部屋に持って来てエリカを探した。だがアルバムの中の写真にはエリカは写っていなかった。
(エリカは僕の妄想が作り出した産物なのか…)
僕は座っていた椅子にもたれ掛かり、溜め息をついた。もうお手上げの状態であった。
僕は空間魔法で娘や息子が小さい頃に僕のために書いた手紙を出し、息抜きにそれを何となく見ていた。
「ふふふ、上手だな」
自分の子供達が僕の似顔絵を描いている手紙を見て僕の心は落ち着いた。僕は手紙を何枚も見ているとある一枚の手紙を見つけた。
「これは…」
その手紙には僕の似顔絵とお父さんいつもありがとうと書かれていた。そしてエリカよりと手紙には書いてあった。
「いた…。エリカは確かにいたんだ」
僕は涙を流した。手紙を持っていた手は震え、涙が数滴、手紙に落ちた。
「ああ、ああ!!」
その後すぐに、エリカの手紙の絵と文字は消えた。僕は消えないでくれと強く念じたが手紙は白紙になった。そして僕は意気消沈し、身体がだらんと力が抜けていった。
そして僕の記憶からエリカが消えた。
「お父さん、大丈夫?」
僕の部屋に僕の娘であるアリスとレイナが入ってきた。
「どうした?アリス、レイナ」
僕は聞いた。
「私たちはお父さんの言っている事、信じるよ」
アリスは僕にそう言った。
「何の事だ?」
僕はレイナの言うことが何の事を言っているのか分からなかった。
「お父さん、もしかして忘れちゃったの?エリカ姉さんの事だよ」
「思い出して、お父さん!!エリカさんは大切なお父さんの娘なんだよ」
レイナは僕を揺らし必死に僕の記憶を蘇らせようとした。
「そうだ。俺はエリカが存在していた証拠を見つけるためにアルバムでエリカを探していた」
「そうだよ、お父さん」
僕の記憶が少しずつ戻ってきた。
「俺は見つけたんだ…」
「何を?」
僕がそう言うとアリスは僕に聞いた。
「えっと…、何だっけ。思い出せない…」
「ゆっくりで良いから思い出して」
僕が思い出そうとすると僕の心拍が高まるような気がして呼吸も荒くなった。それをレイナは感じ取り僕の心を落ち着けさせようとした。
「もしかして手紙?」
アリスは僕の机にちらばっている手紙を見てそう僕に聞いた
「そうだ、手紙だ!」
「僕は手紙を見て存在している証拠を見つけたんだ。えっと誰だっけ…、エ、エ、エリ…」
「エリカさん?」
「そうだ、エリカだ。エリカ」
僕は完全に思い出した。
「そうこの手紙には僕の似顔絵とエリカの名前が書かれていたんだ」
「でももうこの手紙は白紙になってしまった。もう証拠は無い、終わりだ」
僕は諦めた様子でそう告げた。
「お父さん。ちょっと待ってて人を呼んでくる」
レイナは僕にそう言い部屋を出た。
「お父さん、お待たせ」
レイナはイアを連れて来た。
アリスはイアに事情を説明した。イアは顎に指を当て何か考えているようだった。
「お父さん。その今は白紙だが何で一定時間、エリカが描いてくれた手紙として存在していたか、心当たりはある?」
イアは僕に聞いた。
「それは多分、聖剣:フィエルボワにかけられた呪いのお陰かもしれない。この剣は持ち主をあらゆる魔法から守る、守護の魔法が込められているからな。この剣をしまっている場所と手紙をしまっている場所が同じ場所だから手紙が無事だったんだと思う」
僕はそうイアに言った。
「お父さん、その聖剣と同じ場所にエリカの写真は保管してある?」
「ああ、多分あると思うが」
「そっか、それならあの手が使えるな」
「お父さん、私に考えがある。皆も協力して」
「「分かった」」
イアは何か自信ありげな表情をしていた。何か作戦を思いついたようだ。
一時間後…。僕らは王都で買い物をしていた。
「何でお前が存在してる!!俺はお前を消したはず!!」
僕とレイナとエリカの姿をした者の前に敵が現れそう叫んだ。
「広範囲結界!!」
僕はそう叫び、広範囲の結界を張り敵が逃げれないようにした。
「!」
(騙された)
敵は驚いた。エリカの姿をした者の姿が本当の姿、アリスの姿に戻った事に…。
「お前がエリカを…」
「エリカを返して貰おう」
僕は敵にそう言った。
その後…。僕は敵を倒しエリカを元に戻させた。どうやらエリカの存在を消した男は昔、僕らを襲ってきた遙か先の未来から来たソラの仲間であったそうだ。遙か先の未来ではエリカの子孫がその男の家族に恨まれる事をしたらしい。それでその男は復讐するためにソラ達と共に過去へタイムトラベルしたようだ。
「みんなおかしいよ!!」
エリカが家族の集まるリビングでそう言い放った。
「みんなお父さんの事を信じずに病気だの何だの言って!!」
「信じないなんてそんなの家族じゃ無い!!家族じゃ無いよ!!」
エリカは涙を流しながらみんなにそう言った。
「エリカ…」
どうやらエリカは存在を消された後、自分が透明な存在として家の中にいたらしい。だからエリカは僕を信じない家族の態度をその場で見ていたようだった。
「ごめんね、お姉ちゃん」
「ごめんなさい」
エリカの妹や弟がエリカに謝った。
「いいよ」
エリカは涙を流す妹や弟の頭を撫でて許した。
「お母さん、何でお父さんを信じてあげなかったの?」
エリカは自分の母に問い詰めようとした。
「エリカ、もう皆を責めるのは止めなさい」
僕はエリカを止めた。
「何で…。私はお父さんのために怒っているんだよ」
「分かっているよ。お前が怒ってくれたことで僕は救われた。もうそれで十分だよ」
「皆、記憶を消されたからそうなったんだ。誰も悪くないんだ。だから皆を許してあげな」
「…、分かった。お父さんがそう言うならもう私は何も言わない」
「ありがとう。エリカ」
エリカは僕の意を汲んでくれた。
「エリカも無事に戻ってきたしパーティーでもするか」
僕がそう言うと子供達は喜んだ。お通夜状態のその場の空気は一変した。僕らは各自でご飯の準備をし、パーティーを始めた。パーティーは夜まで続いた。




