2話
深い赤色の揺らめく炎が日本の街を燃やしていた。
「あはははははははは、はははははははははははは」
男の悍ましい笑い声が燃え盛る街の中で響き渡った。
男の姿は 黒い鎧を身に纏い、剣を携え、首飾りと耳飾り、指輪を身につけていた。眼の角膜の色は赤く、瞳孔は黒く鋭く尖っていた。そして男の左の頬に、獣の爪で真っ直ぐ縦に抉られた四本の黒い傷のような物があった。
「ん?何だ?」
男は空を見上げると空から紫色の雷を纏った無数の球体が男に向かって飛んで来た。
男は深い赤色のバリアを自分を中心に展開させ攻撃を防いだ。空には紫色の大きな竜が飛んでいた。そして男の目の前に降りてきた。
「ガアアアアアアッッッ」
紫色の大きな竜は口を大きく開け、空気中に漂う魔力を集め始めた。紫色の球体となり男に向けて放とうとした。
「ほう、物凄い魔力だ。だが俺には無意味だ」
「火祀火術:火景火羅万象・火刃」
男は手の平を合わせ唱えた。
紫色の竜の周りに無数の大きく深い赤色の火の刃が出現し、紫色の竜の身体に火の刃が一斉に刺さった。 無数の火の刃は禍々しく深い赤色で燃えていた
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
紫の竜の口も火刃が突き刺さり、竜は痛みで泣き叫んだ。紫の竜が溜めていた魔力は分散し無くなった。無数の火の刃は禍々しく深い赤色で燃えていた。
「グガアアアアアアアアアアアアア」
紫の竜は無理矢理身体を動かし僕を襲い掛ろうとした。
「あんまり動くなよ」
「ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
僕がそう言うと、無数の深い赤の火の刃が現れ、紫の竜にまた刺さった。紫の竜は悲鳴を上げた。
「!」
無数の深い赤色の火刃が突き刺さった紫の竜は風船のように膨らんだ。そして風船のうように膨らんだ紫の竜は破裂し、紫の電撃が辺り一帯に迸った。
「暗黒防壁」
僕は自分を中心に黒色の円形の防壁を展開し、紫の電撃を防いだ。
「………」
破裂した紫の竜の中から黒いチャイナドレスを着た、黒い髪をした長髪の女が出てきた。
「良い攻撃だったぞ、メア」
「僕が以前、神威と戦った時、同じような攻撃を受けたから対処が出来た。これが初見だったら電撃でやられていたかもな」
男は女を褒めた。
「お父さん、もう街を燃やして人を殺すのは止めて」
メアは僕にそう言った。
「何で殺すのを止めないといけないんだ?コイツらは俺の息子を拷問して苦しめて殺した。生きる価値のない、ゴミ屑なんだぞ」
男はそう自分の娘に言った。
「分かっている。でももう復讐は終わったじゃない。関係ない人も殺して、お父さんは何がしたいの!!」
メアは僕にそう問いかけた。
「メア。何で俺の息子は拷問されたか分かるか?」
「………」
僕はメアに聞いた。メアは何も答えなかった。
「それはな、俺が人々から恐れられていないからだ」
「俺は甘かったんだ。別に俺は最後の人生、別に世界に名を残さずとも家族と慎ましく生活が出来れば良かったと思っていた。だがそれは間違いだった。人間は畏怖や恐怖を知れば何もしてこない。だが自分より弱い存在を見つけ、自分の周りに同じ意見の者が大勢集まると強くなった気がして弱い存在を袋叩きする。これが人間の本質だ。こんな奴ら全員死んだ方がいい」
「関係ない奴もいる?ふざけんなそう言う奴がいるから俺の息子は拷問されても見て見ぬふりをした。関係無い奴も同罪なんだよ!!」
僕は心の内を叫んだ。
「………、それでも私はここに住む人を守る」
「そうか。どうやら俺とお前は分かち合えないようだな。俺を止めたいのなら本気で来い」
僕はメアにそう伝えた。
ここら一帯の地から紫の色の魔力が吹き出した。
「紫龍神最終顕現」
メアは唱えた。この世界の空気中、地中にある無数の膨大な魔力がメアを中心に集まる。メアの身体は少し浮かび、魔力はメアに向かって流れ、包み込み、宝石のような紫の球体となった。球体の周りに紫の閃光が光った。そして球体は割れ地面に破片が落ちた。メアの宙に浮いていた足は地面に着いた。
紫の竜の腕と足、そして紫色の竜の尻尾。角と翼の無い竜人の姿となった。眼の角膜の色は紫に変わり、瞳孔は黒く鋭く尖っていた。そしてメアの左の頬に、獣の爪で真っ直ぐ縦に抉られた四本の黒い傷のような物が現れた。
「暗黒再臨」
僕は唱えた。黒い魔力が僕の方に集まり、僕の身体は少し浮くと黒い魔力は僕を包み込み、黒い渦の球体となった。
そして球体は割れ地面に破片が落ちた。僕の宙に浮いていた足は地面に着いた。僕の目の光は失われ冷たい目となった。先までの様子とは違った雰囲気を漂わせた。
「ヴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
僕の咆哮が街に轟いた。建物のガラスは咆哮に共鳴した。僕はメアに向かって走り出し、拳で殴り掛って来た。僕の今の状態は暴走した状態であった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
僕は拳をメアに打つけた。メアは僕の攻撃を防ぐ防御の姿勢を取った。
「くっ……」
メアは僕の攻撃を防ぐが思っていた以上の拳の重さに少しずつ後ろに後退していった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
僕はメアの首を手で握り、左のビルのガラスにメアの身体を打つけた。ビルのガラスは大きく割れた。
「死ね死ね死ねえエエエエエエエエエエエエ!!!」
僕は怒りの全てをメアに拳で叩きつけた。
「がああっ!」
メアは紫の電撃を自分の身体から放った。僕は感電し、攻撃は止まった。僕は電気が身体に流れた痛みを感じ、後ろに後ずさりした。
「ガアアアアッ!!」
メアは僕の顔面を殴り飛ばした。僕はまだ身体に電撃の痛みが残っていたので傷を癒やすためビルをよじ登り逃げようとするがメアは追いかけて来た。ガラスを突き破り、真っ暗なビルのオフィスの中で殴り合った。僕は助走をつけて走り、向こう側のビルまで飛んだ。メアは助走をつけて飛ばずに割れた窓の上の部分を両手で握り、回転し両足をビルの固い部分につけ力を込めた。そしてメアは僕のいるビルへと自分のいるビルを破壊し飛んできた。
「ギヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
メアは僕の身体に拳を打つけた。僕はあまりの痛みに叫んだ。
僕とメアはその後も互いに打つかりあった。
メアは押され、ビルの下で両膝をつき、自分の痛めた左腕を握っていた。
「………」
僕は両手を地面につけ、獣のような姿勢となった。僕は口を大きく開けると周りに赤い閃光が走った。
「古竜固有魔法:究極の火景の砲撃」
僕は口から力をメアに向けて放った。深い赤色の力がメアと共に後ろのビルを破壊した。
攻撃による舞った土煙は収まり、メアの姿が見えた。メアは紫のバリアを張り、攻撃を防いだ。
「くっ…」
メアはバリアで攻撃を防いだが魔力の大半を使い防いだ為、身体はボロボロであった。
「死の耳飾り:ヌト。能力顕現:全回復」
メアは僕に手を向けるとそう唱えた。するとメアの身体は全回復した。
「そういえばお前、人の力を使う事が出来るようだがここまでだとは思ってもみなかった」
僕は感心していた。
「まだ遊べそうだな」
僕は剣を抜き、剣先をメアに水平に向けた。
「死の剣。暗黒咆哮」
僕は唱えた。メアは剣を空間魔法で取り出し、剣を抜き構えた。
「斬り裂け!!」
僕は唱え。剣を下から上に振り上げると荒い斬撃となり、メアに向かって行った。
「くっ……」
メアは荒い斬撃を防いだ。僕は何度も荒い斬撃を飛ばした。
「!」
メアは接近戦に持ち込もうとした。
「くっ…」
僕の苦手な接近戦なので冷や汗が出た。剣同士が打つかりあった。
「ぐっ!!!」
僕はメアの剣術に押され刃が僕の身体に当たりそうなる。
「おらあっ!!」
僕は押し負けそうになり、僕は自分の剣に力を込め荒い斬撃を弾けさせた。メアは回避できず攻撃を受けた。
「ほう。咄嗟にバリアを張ったのか」
メアは紫のバリアを張って防御したようだ。メアは荒い斬撃の威力で後ろの方に弾かれた。
メアは剣を仕舞い、両手の手で魔力を集めた。魔力は紫の閃光を散らし、紫の玉を作り出した。そしてメアは幾つもの紫の玉を作り出し、メアの周りには無数の紫の電気の玉が浮いていた。
「死ね」
メアは僕に向けて作り出した一部の紫の電撃の玉を放った。四方八方から紫の電撃の玉が僕に目掛けて飛んできた。
「ふっ…」
僕は両手で剣のグリップを握り、身体を回転させながら剣を振ると荒い斬撃を作り出した。一つの斬撃で無数の紫の電撃の玉を薙ぎ払った。
「一部の力であわよくば俺を倒そうとしたか…」
「甘い、この俺を舐めすぎだ」
「………」
僕はメアにそう言い放った。
「死の聖剣。能力第一顕現:暗黒八岐大蛇」
僕は剣先をメアに水平に向け唱えた。僕の両側に二匹の黒い蛇が現れた。
「噛み殺せ」
僕は黒い大きな蛇二匹をメアに向けて放った。 黒い蛇はメアが放った紫の電撃玉に打つかりながらメアに向かって行った。
「紫神防壁」
メアは紫の防壁を作り出し、僕の攻撃を防御した。
「!」
だが黒い二匹の蛇の牙から猛毒が流れ出て、紫のバリアを徐々に溶かした。
「冬景防壁」
メアは俺の力を使い、深い青の防壁を張った。黒い二匹の蛇は凍りつき、破壊された。
「これはどうかな?」
僕は剣を上に向けると、上空に黄色の光りが遠くの場所から集まり球体となった。
「死の聖剣。能力第二顕現:暗黒太陽神」
僕は剣先をメアに水平に向け唱えた。すると上空に黄色い太陽の光が集まった球体から僕の剣に向かって雷の如く降ってきた。
「太陽斬撃」
僕は剣を振った。僕の剣から太陽の光の斬撃が放たれた。太陽の光の斬撃がメアのバリアに打つかる。太陽の光の斬撃は威力が凄まじく、メアのバリアに罅が入った。
「くっ……」
僕は何度も太陽の光の斬撃をメアに打つけた。メアは僕の攻撃に押されていた。
(このままじゃ、拙い。あの技を使うしかない!)
「古竜固有魔法:絶対零度」
メアは両手の平を合わせ唱えた。
メアは黄色い太陽の光の球体と僕が飛ばした斬撃を凍らせた。青く凍った黄色い太陽の光の球体は地面に落ちてきた。僕はそれを避けた。
「ふっ…」
僕は大きな深い青色の凍った球体をメアに向かって蹴り飛ばした。メアは剣でそれを斬った。斬られた球体はビルに突っ込んだ。
「俺の力を上手く使い熟しているな、流石、俺の可愛い娘」
「………」
僕が褒めてもメアは黙ったままだった。