1話 天翼の支配者
荒れた大地に二人の姿が見えた。
「ヨミ。お前は何故、自分の運命に抗おうとする?お前の家族は守る価値のある物なのか?」
「お前の家族の男共は自分の事しか考えてないゴミ屑だ。死んだ方が良い」
運命王は僕に聞いた。
「俺の家族の男共は確かに自分の事しか考えられない奴らだ。こうなったのは全て俺の責任だ。俺が全て悪い」
この物語の主人公であるヨミはそう言う。
「そうだな。子供の罪は全て親の責任だ。全部、お前が悪い」
運命王・クロムは答える。
「見てくれよ、この鎧を!」
『大崩の鎧・アビス』
運命王は自分の身に付けている深い青色の鎧を見せた。手は指先から手首まで禍々しい深い黒色の化け物の手になり、指先の爪はどんな物でも斬り裂く鋭利な爪になっていた。両足は化け物みたいな禍々しい深い黒色の三本鉤爪のみで足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪で人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような大きな爪であった。運命王は既に戦闘の準備が出来ているようだった。
「奪ったのか?俺の孫から」
「ああ。でも安心しろお前にの孫は傷付けて無い」
運命王に怒りが湧いたがその言葉を聞いて落ち着いた。
「お前がその鎧を使うなら私もお前に見せてやる。最強の鎧を」
僕は大嵐に包み込まれた。そして大嵐は消えた。
『支配の鎧・クリムゾン』
僕は深い赤色の鎧を身に纏い、深い赤色の首輪を身に付けた姿となった。鎧の下には黒いコンプレッションウェアを着ていて、臍が見えるような鎧とインナーを身に付けていた。
「俺と戦う覚悟は出来ているか?」
「ああ、出来ている」
大風が吹き荒れ、僕を風で包み込み大きな風の渦の球体となった。僕を包み込んでいた風の渦の球体は消え、中が露わになった。
「暗黒大禍」
頂点二つが上にくる正六角形の形の胸の鎧の部分にマヤ暦占星術における太陽の紋章の中の一つ『赤い月』の紋章が浮かび上がった。鎧の胸の部分の形は平べったいのでは無く、膨らんでいて前に正六角形の形が出っ張っている形であった。白い蜘蛛の巣が僕の鎧の中央と両肩に張り付いた。僕の瞳孔は黒く鋭く尖っり、目の光りは失われ冷たい目となった。
そして両眼の下に黒い刻印が浮かび上がった。その刻印は目の下一センチ空けて、眉毛と平行な直線で耳元から鼻近くまで伸びている。そして直線の真ん中から耳垂に向って一直線に黒い刻印が伸びている。まるで耳に向かってYの文字が横に倒れているかのような刻印だった。口の中の下顎の両方の第一大臼歯は発達し、硬い物を貫くかのような上に突き上げた黒い大顎となった。黒い大顎は僕の目の辺りに向かって突き上げた形となり大顎は角張った形をしていた。
両手は真っ白な陶器のような色の天翼族の大翼となり、両足は化け物みたいな禍々しい深い黒色の三本鉤爪のみで足の爪の部分に二本、踵に一本の鉤爪となった。人の頭を鷲掴みし、粉砕する事の出来るような大きな爪であった。球体状の風の渦が消え、中が露わになった時、僕は怒りで力が込み上げ、有り余る力を支える為に大きな両翼を自分の身体の前の地面に突き刺し、四足歩行の獣のような姿勢になっていた。地面に突き刺した大きな両翼は防御しているようなV字型をしており、真正面にV字の尖った先が向いていた。そして僕はその場で咆哮した。
「双盾」
運命王はそれほど大きく無い二つの深い青色の盾を出し握りしめた。盾の形は上の部分が平らで両側は下に真っ直ぐで、下の部分は尖ってる形だ。盾の裏の上の部分に盾を持つ為の持ち手がある。
「ブレード」
僕は真っ白な陶器のような色の大翼を刃のように硬くした。
「行くぜ!」
「ああ!」
僕と運命王は構えた。
ガキン!グググググ。
僕は右の大翼を振り下ろした。運命王は左手に持っている盾でそれを防いだ。
バリン!バリンッ!!バリンッ!!
互いの大翼と盾が打つかり合って音が鳴り響く。
「うおらああっ!!」
「ガキンッ!!」
僕は身体を回転させ大翼をぶん回した。
「くっ!!」
運命王は余りの攻撃の重さに弾き飛ばされた。
(攻めるッ!)
僕は運命王の近くまで走り、大翼を振り下ろした。
バリン!バリン!バリン!バリンッ!!
僕の猛攻に運命王は盾で防御する。
「おらああああッ!!」
僕は運命王に向かって飛び両翼を振りかぶり、振り下ろした。運命王は両手の盾で防御する。
(重い!!)
余りの重さに運命王の足下の地面が割れる。
(これを耐えるか…。だが押し切る!!)
僕は力をもっと込めた為、運命王は攻撃を回避するため少し後ろに移動した。
ドオオオオオンン!!
僕の大翼は地面に振り下ろされ地面に打つかった。地面が割れる音が周りに鳴り響いた。
(隙が生まれた!)
「死ねえええッ!!」
僕の大翼が地面に突き刺さっているのを運命王は見た事で攻撃のチャンスだと思い、両手の盾を僕に向かって突き刺そうとした。
「!」
(なにッ!!)
僕は地面に刺さっていた大翼を勢い良く上に振り上げた。振り上げた攻撃が運命王に当たる。
「ガアアッッ!!」
運命王は攻撃を受け声を上げる。運命王は宙を舞い後ろに飛んで行った。
「くそがッ!」
運命王は咄嗟に自分に風魔法を使いガードした。だから腕は切れなかったが骨は折れた。運命王は回復魔法を掛けて回復させた。
(俺は此奴を甘く見ていた。此奴は戦闘に於いては途でもない化け物だ)
運命王は立ち上がり、構える。
「片盾突き!」
運命王は地面を蹴り僕に向かって行き、右手の盾での突きの攻撃をした。
「単調な攻撃」
僕は軽く運命王の攻撃を往なした。
「双盾回転。おらあああっ!!」
「!」
運命王は突きをした右手の盾を右にぶん回し、そして左手の盾もぶん回した。
「がああっ!!」
僕は盾で後ろを斬られ呻いた。
「くそがああああっ!!」
僕は右の大翼をぶん回した。
「バリン!!」
運命王は咄嗟の判断でバリアを展開させ、僕の攻撃を防いだ。力が打つかり合った為、互いに弾かれた。
「双盾の舞い」
運命王は構えた。
ギインッ!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!!
運命王は双盾で僕に向かって舞うように攻撃を繰り出す。僕は大翼で防御する。
「双盾回転」
ギギギギギン!!ギギギギギン!!
運命王は身体を回転させ双盾をぶん回した。身体を回転させることで攻撃の威力、キレが上がる。僕は防御の姿勢を取り防御する。僕は防御するが回転攻撃の威力に後ろに押される。
「くっ…」
自分の大翼の重さに蹌踉けてしまった。
「双盾連打」
バリンバリンバリンバリンバリンバリン!!
僕の隙を運命王は見逃さなかった。運命王は僕に両手の盾を何度も打つける連続攻撃を繰り出した。僕は連続攻撃を浴びせられた。
「くっ…」
僕は後ろに移動し回避行動を取った。僕の身体から血が流れ、痛みを感じ片膝を地面に突いた。
「驚いた、まだ立てるのか…」
僕は血を流しながら立上がり構えた。運命王は僕を見て感心した。
「暗黒流動!!」
運命王は二つの盾を仕舞った。運命王は獣の手のように指と指の間を開け爪を立てた。そして身体を奇抜に動かし両手で振り払う動作をし、見えない風の刃を作り出した。
(来るっ!)
僕は見えない攻撃を察知し、大翼で攻撃を防ごうとする。
バリンバリンバリンバリンバリンッ!!
僕は大翼で攻撃を振り払う。
「!」
だが僕の想定より重い攻撃に僕は態勢を崩した。
(勝った)
運命王は勝利を確信した。運命王は振り下ろし荒い大味の風の斬撃を飛ばす。斬撃が僕に迫り来る。
「プロテクト」
僕は攻撃の当たる直前にそう呟いた。
ギギギギギギギギギギギギ!!
僕を中心に大風のバリアを展開した。運命王の攻撃を防いだ。
「うらあああっ!!」
運命王は風の斬撃を何度も僕に向けて飛ばす。
「無駄だよ」
僕は運命王の攻撃を全て無にした。
「円刃拳」
「!」
運命王は自分の拳に風を纏わせ、僕に向かって飛び込んで来た。
ギギギギギギギギギギ!!
僕の大風のバリアに向かって運命王は風を纏わせた拳を打つけた。
「だから無駄だって」
「そうかな?」
バリンッ!!
運命王の拳が僕の大風のバリアを貫通し、僕の鎧に目掛けて拳を打つけた。
「かはっ!!」
僕は油断していた為、防御の態勢を取っておらず鳩尾に拳を打つけられ僕は吹っ飛んだ。
「クソがっ…」
運命王の攻撃により僕の鎧はベコベコになった。
「先、生み出した風を纏わせた拳は無数の風の刃で出来ている。だからお前の只の風のバリアを貫通できた。まあ、風の刃が作れるのは攻撃する為の拳と防御する為のバリアだけなんだがな…」
運命王はペラペラと喋った。
「ヨミ。果たしてお前に私の最強の攻撃と防御を打ち砕く事は出来るのかな?」
運命王は僕にそう言った。
少しの時が経った。僕の鎧は自動修復し元に戻っていた。
「………」
僕は跪いていた。僕の今持ちうる攻撃の中には運命王の風の刃のバリアを打ち砕く物は無かった。
「くそが」
僕は取り敢えず立上がったがどうすれば良いのか分からなかった。
「諦めるか…」
僕はそう言葉を発した。
「ほう、諦めるのか。まあ、仕方ないよな」
運命王は僕の情けない姿を見て嘲笑う。運命王は僕に近づいて来た。
「死ね」
運命王は爪を立てた右手を僕に向かって振り下ろした。
「うぐっ!!」
「「!」」
僕は死ななかった。僕の息子であるテオが僕を庇って攻撃を受けた。テオは致命傷を負った。
「俺は…」
運命王は動揺し後ろに後ずさりした。
「テオ!しっかりしろ!テオ!!」
僕はテオを抱き抱える。血が流れているテオの傷を回復魔法で回復されるが、傷は癒えなかった。
「今、父さんが治してやるからな」
僕は回復魔法を何度も掛けた。
「戦ってくれ…」
テオはそう僕に言った。
「無理だ。俺は彼奴に勝てない。先の戦いで分かったんだ」
僕は答える。
「父さんが戦わなくて、誰が家族を守るんだよ!!」
「父…さん、戦っ…てくれ…、家族の…だめに!」
テオはもう自分が生きるのも長くない事が分かっているのか、血を吐きながら僕に訴える。
「分かったよ、テオ。分かったよ」
テオの必死の訴えに僕は頷く。僕の目から涙が溢れる。
「テオ?テオ!」
僕の言葉を聞いてテオは安心したのか眠りについた。テオは二度と目を覚ます事は無かった。
「ヨミ。何故、この世界はこんなにも残酷なんだろうな。頑張って生きてる奴が損して生き地獄を見る世界。なあ、何でお前はこんな世界を作ったんだ?」
「うううう」
「もう壊れてしまったか…」
運命王は僕の方を見て対話しようとしたが僕の心は完全に折れてしまった。
「お前の息子を殺したのは私の本意では無いがまあ、屑が一人この世界から消えたのは良い事なんじゃないか?」
「だってお前の息子は自分の嫁と娘にご飯を真面に食べさせずに彷徨き歩いていた屑なんだから」
運命王は自分の殺しを正当化しようとした。
「どんなに息子は屑だと言われようが最後には家族を想ったんだ。テオは屑じゃ無い。屑じゃねえよ」
俺の感情が高ぶり言葉を吐き出した。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
俺は今まで自分が何も出来なかった事に対して怒りが湧いた。
「テオが教えてくれたんだ、諦めない心を!」
「だからお前をぶっ殺してやる!!」
僕は切れていた。
「終わりにしよう」
運命王は獣のように屈み爪を立てた左手を地面に付けて体重を支え、右手は獣の手のように指と指の間を開け爪を立て横に構えた。そして運命王の右手の指先から黒いオーラが煙のように上に上がった。
(次の攻撃で決めるつもりのようだな…)
「掛かって来い。プロテクト」
僕は声を荒げ、風のバリアを展開した。
「暗黒の尖い爪!!」
運命王は地面を蹴り僕に向かって爪を立てた右手を突き出し飛び込んだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「はあああああああああああああああっ」
風のバリアと尖い爪と打つかり合い、音が鳴り響く。
(だが俺はこんな所で負ける訳にはいかんのだ。テオと約束したんだ。俺は勝つ!!)
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああ!!」
ギギギギギ。
運命王は風のバリアの中にぐぐぐと手を捻じ込んだ。
バリンッ!!
「なっ!!」
僕は風のバリアを膨らませ、運命王を弾き飛ばした。勝負に決着が付いた。
「………」
運命王は意識が朦朧とする中、走馬灯を見た。
あれは数年前の話だ…。俺には妻と息子が居た。妻は昔から身体が弱く床に伏せっていた。私は妻を看病しながら生活していた。私が仕事で居ない時は息子が妻の看病をしてくれた。家族三人で食事する時間はとても幸せだった。妻も息子も幸せな顔をするので私も幸せだった。私たち家族三人は幸せで慎ましい生活を送っていたが、ある日、妻の病状は悪化し医者に診て貰うが妻の余命はあと以て一週間も無いと言われた。
それから私は仕事を休み家族と過ごす時間を作った。私と息子は妻の側にずっといた。息子が寝ている時、妻が「もう直ぐ私は死ぬから息子をお願いね」とか細い声で言った。僕はそう言われ涙が込み上げた。私は妻にこう言った。「俺が何とかするから妻と息子と俺がまた幸せに暮らせるように俺が何とかするから」僕がそう言い妻の手を握ると妻は涙を流し、「うん」と答えた。
次の日、妻は死んだ。嫁は僕の言葉で安心したのだろうか死に顔は安らかな顔をしていた。息子はわんわんと妻の身体を抱きしめ泣いていた。俺は涙を流しながら自分の無力さを痛感した。
一年後…。息子も母親に似たのか床に伏せっていた。また医者に診て貰ったらもう直ぐ息子は亡くなると言われた。俺は息子に付きっ切りで看病した。息子は私に聞いた。
「僕も母さんと同じくもう直ぐ死ぬのかな。僕達は何気ない生活をしていただけなのに何で死なないといけないのかな」
「僕、母さんと父さんとやりたかった事沢山あったのに。僕と母さんは死ぬ運命だと予め決まってたのかな」
私は息子にそう言われた。
「………」
「運命なんて…関係ねえよ。俺が何とかするから安心しろ」
私は運命王でありながら運命を否定した。私の声はうわずっていた。私は息子を強く抱きしめた。息子は安心したのか「ありがとう父さん」と私にそう言った。
次の日、私の息子は死んだ。私は一人になった。私は運命王として生きていたが運命王の家族だとしても運命には逆らえない事が身に染みる程分かった。私は私を運命王として産みだした創造主を心の奥底から憎み、殺意が湧いた。私、いや俺はいつか必ず創造主を苦しめて殺す。只それだけのために俺は復讐の火を絶やさず生きた。
私はヨミと戦い負けた。私の側にヨミがゆっくりと歩いて近づいてきた。どうやら私に止めを刺すつもりのようだ。ヨミは私の側に辿り着き立ち止まった。
「何か言い残す言葉はあるか?」
ヨミは私にそう聞いた。
「俺の妻も息子も命を踏み躙られた。お前が作った世界にだ。お前に命を踏み躙られた者の気持ちが分かるか?」
「………」
私は血を吐きながら言葉を紡いだ。私は悔しくて涙が込み上がる。
「俺の妻の人生って何なんだよ。俺の息子の人生って何なんだよ」
私は泣いていた。ヨミはそれを聞いて何も言えなかった。
「お前も俺の未熟な所為で自分の人生を狂わせたんだな」
「これは気まぐれだが、お前を運命から解放してやる」
運命王の身体からガラスが割れるような音がした。
「これでお前はもう運命王じゃない。何も背負ってない只の人間になった」
僕は告げる。
「いや、俺は背負っている。妻と息子の思いを!!」
「だから俺は戦う!!」
クロムは空間魔法で剣を取り出し僕に向けて薙ぎ払った。僕はクロムから距離を取った。
「中々、身体がガタついて辛いな」
クロムは上体を起こした。
「お父さん!貴方!!」
クロムの後ろから声がした。
「ううっ」
クロムは後ろを見た。クロムの妻と息子が此方へ走って向かってくる。
「エマ、ライ。うううっ…」
クロムは自分の側に来た妻と息子を抱きしめ涙を流した。今までの苦しくても生きる努力をしたのがやっと実った。クロムはこの瞬間を噛み締めた。
「暗黒厄災」
僕は唱えると、深い赤色の渦に包まれた。そして渦は消え、僕の姿が露わになる。真っ白な陶器のような色の天翼族の大翼は真っ直ぐ垂直に下ろされていて、大地に突き刺さった足の三本鉤爪の爪先まで大翼の先が届いていた。両翼の翼の真ん中に黒く染まった台形のような模様が前後に既に現われており、前と後ろ側にある翼の黒い模様を中心としそこに逆三角形の点を定める。逆三角形の点の位置に黒い刃が前と後ろに生えていた。前の黒い刃は人、1.5人分の長さで木のように枝分かれし真っ直ぐ伸びていた。
「天翼の支配者…」
「エマ、ライ。俺の後ろに隠れていろ。奴はまだやるようだ」
「お父さん」
「分かったわ」
クロムは立ち上がった。
「黒い枝」
一瞬の内に僕の両翼の翼の真ん中から前に突き出していた黒い刃がクロムに向かって伸び、枝分かれしクロムとエマ、ライの身体を貫いた。
「「かはっ!!」」
クロム達は血を吐き出し、貫かれた身体からも大量の血が流れた。クロムは速すぎる攻撃だった為、家族を守れなかった。
「………」
僕の両翼の翼の真ん中から出た黒い刃は翼を侵食し鼓動していた。黒い枝は僕の元まで収縮した。
「エマ…、ライ…」
クロムは地に這いつくばりながら近づき自分の妻と息子を見る。もう既に妻と息子は息絶えていた。
「妻と息子は関係ねえだろうが!!!」
クロムは血を吐きながら叫ぶ。
「クソが」
クロムは仰向けになり空を見た。
(俺はもう直ぐ死ぬ。だがら!!)
クロムの周りの空間が黄金に光輝いた。僕はそれをただ見ていた。
「!」
黄金の光が消えた時、クロムはここに居なくなっていた。
(俺は何度も過去に戻ったが妻と息子をあの時まで生き返らせる事が出来ず失敗した。だが今回は違う。生き返らせる事が出来たんだ)
クロムは過去に戻る事の出来る異次元トンネルの中を水の中を泳ぐかのように風魔法で自分を包み込み前に進んだ。
(俺は過去に戻ると未来の記憶は全てなくなる。今回の成功までのプロセスを全て忘れてしまう。だが過去の自分に伝える方法はある)
(俺には過去に戻ると過去に戻った事を自覚する事だけは出来る。予め過去に戻る時間を決めていればその前か後の時間に戻れば妻と息子を救い出す事が出来たと分かる)
「遂にやったぞ。やっとだ、やっとここまで来たぞ!!」
クロムは少し喜ぶ。
「ん?何だ?」
クロムが通っている異次元トンネルが歪んだ事で異変に気付いた。
「ば、馬鹿な。ここは俺だけが通れる異次元トンネルなんだぞ!」
クロムは後ろを何気なく見ると真っ白な大翼を広げたヨミが此方に向かって飛んでいた。クロムは平然と異次元トンネルを通るヨミを見て驚いた。
「まあ、いい。俺はお前に妻と息子を殺された。お前を殺さなければ気が済まない!!」
「よくもエマとライを殺したな、ヨミ・レッドフィールドオオ!!」
「くたばれえええええ」
クロムは過去に向かいながら此方を向き、トルネードを放った。
ギギギギギギギギギギ。
ヨミは風のバリアを展開し、防御した。トルネードと風のバリアが打つかり合い擦れる音が聞こえる。
「くそが」
クロムは残り少ない魔力の大半を使い切ってしまった。
「………」
ヨミはクロムを追いかけるのを止めその場に留まる。
(そうか、もう過去か。だから奴は俺を追いかけるのを止めた)
「ヨミ・レッドフィールド。俺は必ずお前を倒して、嫁と息子を救い出す」
「また、近いうちに会おうヨミ)
クロムはヨミに聞こえるようにそう言い、過去に戻った。




