71話 幕間
禍々しいオーラを放つ、拳2つ程度の大きさの人形が急速に朽ちていった。
その人形を握っていた男は痛みでもあるのか手で顔を抑え、呻き声をあげていた。
「うっ……、クソッ‼︎クソッ‼︎あの野郎‼︎」
薄暗く日も差し込まぬじめじめとした部屋で、グチャグチャと何かを叩き潰すような音と尖り声がひたすら響いていた。
「絶対殺す‼︎絶対に‼︎僕のことを、僕のことを馬鹿にしやがって!許せない!許せない‼︎」
唇を強く噛んだためか口の端から血が垂れている男は荒れに荒れていた。
周囲にある数多の人形の中から無造作に1つ掴み取り、力の限りそれを握りつぶした。
握りつぶした手の隙間からは綿ではなく赤い液体のようなものが溢れ滴っていたが、それが床に落ちる頃には霧散していった。
その男の眼は血走り、その有り様は常軌を逸している。
いくら暴れようと気が治らないのか、その幽々たる部屋にポツンと浮かぶ狂気の色を孕んだ碧眼を厳重で重厚に閉じられている扉へとグルリと向けた。
しかし、立ちあがろうとしたそのとき
「——ずいぶん気が立っているみたいじゃないさね」
突然背後から掛けられた声に、碧眼の主人はギロリとその扉から背後へと、その怪しげに光る瞳を向けた。
その瞳に映ったのは、仄暗いこの部屋でもわかるほどの血のように真っ赤な赤髪に怪しげに輝く赤い瞳。
そして笑みを浮かべると見え隠れする吸血鬼を連想させるような長い糸切り歯。
シスター姿に身を包んだその女はとても神に仕える者とは思えぬ邪悪に満ちた嘲笑の笑みを浮かべていた。
だが、その首にかけるロザリオが、その女が同じ神に仕える聖職者であると示している。
腕を組み、壁にもたれかかったまま『傀儡士』を見下ろすような視線を向けている女は鼻で笑ってから口を開いた。
「ふっ、『傀儡士』ともあろうもんがずいぶんこっぴどくやられたみたいだねぇ」
からかうように嘲笑の笑みを向けるこの女に『傀儡士』は怒りを露わにするように目を細めて睨みつけた。
ただでさえクレマンにプライドをズタズタにされて気が立っているのだ。
これ以上の嘲弄を赦す気などなかった。
「ちょっとは落ち着きなさいね」
女はその鋭い眼光を向けられようとも態度は改めないが、それでも『傀儡士』と戦う気などはなく、愉快そうにクツクツと笑っているだけだった。
「この部屋に……、僕の聖域に入る許可を与えた覚えはないぞ」
『傀儡士』は殺気を込めた冷徹なる瞳をギロリと向けるが、女は尚も目を眇めてその鋭い歯を覗かせるだけ。
「許可ったって、あんた。許可取ろうにも全然この部屋から出てきやしないじゃないか。内外に鍵なんて掛けてさ」
女はチラッとその重厚な扉へと視線をやった。
先ほどまで『傀儡士』が見ていた重厚な扉には数多のチェーンが巻き付けられている。
誰も入れず、誰も出れないように。
それもただの鎖ではない。
少し強い程度の攻撃ではびくともしない『傀儡士』のオーラがびっしりとこびり付いた強固な鎖である。
『傀儡士』に何かの指令を送ってくるならば、大抵の者は『念話』や使い魔を使う。
だが、目の前の女はそんなチマチマとした術を嫌い、それを習得しようとすらしない。
『傀儡士』からすればそれは神に対する怠惰であると、嫌悪感を露わにするように女にジトっとした目を向けた。
「なんだい、その目は?なんならあの扉、あたいの聖具でぶっ壊してやってもよかったんだよ?」
女がニヤリと凶相を浮かべると、この部屋が『傀儡士』のオーラに包まれ、薄らと差し込んでいた光すら遮断し、より一層部屋が暗くなった。
女の発言は『傀儡士』の逆鱗に触れた。
この部屋の王は『傀儡士』だ。
それを壊すというならば、如何に同職者であろうと容赦するつもりはない。
先ほどまで死んだように横たわり、乱雑に部屋に散らばっていただけの人形達がまるで生きているかのように独りでに立ち上がり、怪しげに光る人形の眼光が全て女の方に向いた。
せせら笑っているかのようにカタカタとどこからか音が鳴り、耳が痛いほどの騒音が部屋中に響き渡った。
そんな騒音の中でも『傀儡士』の幽鬼のような声だけはよく響いた。
「口には気をつけなよ。いかにいまは席次が僕よりも上でも、この場で僕に勝てると思うのは思い上がっているんじゃないかい」
不快さを隠そうともしない『傀儡士』の顔はクレマンと話していたような無邪気な少年の影など微塵もなく、ただただどす黒い感情だけが発露していた。
だが、女はそんなことなど気にも止めず、足元にも群がっている人形をムギュッと踏み潰す勢いで腰を下ろし、人形を椅子代わりにして胡座をかいた。
それを見た『傀儡士』は怪訝そうに眉を寄せた。
『傀儡士』は戦闘も辞さない状況であるというのに、それを向けられている当の本人は意にも介さず座るだけ。
その姿は隙だらけである。
自分のことをとことん舐めているのかとその怒りに満ちた双眸を更に細めた。
だが、女は睨みつける『傀儡士』の顔を見て嬉しそうにギラリと光る歯を見せたかと思うと、肩を震わせて抑えきれないとばかりに狂気に満ちた笑い声をあげた。
「アハハハハハハハハ、やりゃ出来るじゃないか!数十年前に席次が下がったってのにいまも変わらずずっと腑抜けたまま……。今回の負けは、あたしはあんたにとって良かったと思うよ。取り返しのつかない場面で失敗するよりは断然良かったじゃないか。もし、そんなことになっていたら……、あたしがあんたの首を落としに来ないといけないところだったさね」
その言葉に嘘偽りなどない。
女は『傀儡士』が使えぬと判断すれば迷うことなくその首を刎ねるだろう。
それこそが自らが仕える神のためであると確信しているが故に。
女の言葉に少しだけ表情を険しくした『傀儡士』であったが、その言葉を否定するつもりはなかった。
『傀儡士』とて神に仕える聖職者。
務めを果たせなくなった者などいるだけ無駄だということは分かっている。
「まさかあたしたちの使命を忘れたわけじゃないだろう?」
ギロリと狂気を孕んだ赤い瞳を眇めた女に対して、当然のことを聞くなと不満を露わにするように睨み返した『傀儡士』はある言葉を紡いだ。
『我ら覡たりて、この世の罪咎を修祓する者なり』
聖書に載る祝詞の言霊であり、使徒の在り方を表す一節である。
ほんの一節に過ぎないその言葉を唱えただけでも、その部屋を纏っていた陰気な気が神聖なものへと変化した。
その祝詞を聞いた女はこれでもかと口角をあげ醜悪な笑みを浮かべながら天を仰ぐように手を仰々しく広げた。
「わかってるじゃないか。『権能』はあんたの玩具じゃないよ。主神様のための力さね。それすら忘れていたなら、いまここでぶった斬ってやったんだがね」
先ほどまでの穏健な気配などなく、主神様の利にならぬ者ならば容赦なく残忍に冷酷に無慈悲に抵抗することすら許さずに肉の一片たりとも残さぬとギラギラとした狂信者の気配を漂らせていた。
「……忘れてなんかいないさ」
『傀儡士』は拗ねた子供のように顔をプイっと背けた。
見た目は子供のようなあどけなさをもっているが、その中身はもう爺さんなどと言うも生ぬるいほどの老獪の怪物だ。
それを知る女からすれば可愛さなど皆無である。
「ならいつまでも不貞腐れんじゃないよ。たかだか一度席次が落ちたくらいでウジウジと。そんなんだから主に仇なす咎人なんぞに遅れをとるのさね」
「だが、あいつは———」
しかし、続けようとした言葉は『傀儡士』の首に当てられた冷たい感触によって遮られた。
「まさか、言い訳をするつもりかい?」
女の赤い瞳がギラリと光る。
女は先ほどまで確かに何も持っていなかった。
なのに瞬きもしないうちに、身の丈ほどもあるまるで聖十字を象ったような剣とも槍ともつかぬ武器を『傀儡士』の首元に当てていた。
脅しなどではなく返答次第ではその首が分かつことになるぞ、と紅蓮のように赤く輝く瞳が『傀儡士』の碧眼を真っ直ぐと射抜いた。
神の『権能』を使い、破れたにも関わらず言い訳をするということは神に対する言い訳。
冒涜にすら値する。
『傀儡士』はこの部屋に犇く自身の傀儡をけしかける余裕すらなかった。
何せ女の動きが何一つ見えなかったのだから。
それは『傀儡士』にとってかなりショックな出来事であった。
呆然とする『傀儡士』の様子を感じ取り、女は不機嫌そうに鼻を鳴らしながら武器を下ろした。
「いまのあんたはこの程度にすら反応できないさね。相手が強かったのも確かにあるだろうさ。でも、1番の原因はあんたさ。あんたが弱くなりすぎているだけなのさ。これでわかっただろ、第一二使徒ラットン・シーレン神官?あんたは失敗したから席次が低いんじゃないさね。ただ弱いから1番席次が低いのさ。使徒という立場を失いたくないなら精々頑張るんだね。過去の栄光なんざ所詮は過去のもの。主が求めるのは……、いや、あたい達が役に立たないならさっさと譲るべきなんだ。そうだろう?何が言いたいかわかるね?」
叱られシュンとしている子供を見るような目で『傀儡士』を見つめた女は俯いて何も言わない『傀儡士』に肩をすくめてため息を吐いた。
「……それにしても随分と人形の数が減ったさね」
女はキョロキョロと部屋を見渡しながらそう言った。
この場にいる人形達は『傀儡士』が『傀儡士』と言われる所以たるもの。
部屋にいる人形達全てに『傀儡士』が刈り取った人間達の魂が封じ込められている。
生きたまま魂を握られた者もいれば、殺され魂を封じられた者もいる。
だが、どちらにせよ『傀儡士』に魂を握られている者達に真の意味で死は訪れない。
その人形が消えて初めて死んであの世へと行く。
そして人形とはすなわち『傀儡士』の命でもある。
英雄級の魂ならば『傀儡士』の命の代わりともなりえる代物。
今回『傀儡士』がクレマンの攻撃を受けても生きている理由がまさにそれだ。
過去に自らが倒して封じ込めた英雄の命を1体消費して死を免れた。
ダメージの肩代わり。
それこそが『傀儡士』が持ちうる能力の一つ。
だが、それでも尚クレマンの短剣によって傷つけられた『傀儡士』本人の魂についた傷までは癒えなかった。
それほどあの短剣についた『怨』の執念は凄まじい。
その痛みを消すために凡俗を封じ込めた人形を潰して回復していたが、所詮は応急処置にしかなっていなかった。
「ああ、そうだ。近頃あの鎖国国家の動きがきな臭くなっている。あそこにも一応大司教がいるけど、正直報告の内容なんざ当てにならないさね。ただの血筋だけを保っている大司祭なんざ腐敗の匂いがプンプンするよ。鎖国してもう350年余り。実情を知るのは内部の人間だけ。やりようはいくらでもあるだろうね。それが近々鎖国を解除する気配がある。鎖国も突然なら、開国も突然ときた。まったく、準備が整ったからと世界に覇でも唱えるつもりかね」
「……それで?僕にどうしろと?」
「いや、別にただの情報共有さね。どうせ引きこもってばっかりでその手のことは知らないんだろう?行きたいというのなら申請しておくけど?」
「……いいや、僕はいい。当分は元の力を取り戻せるように動くつもりだしね。今回、英傑の魂が消費されたのは痛い。ある程度力を取り戻したら、僕も久々に狩りに行くよ。僕のためではなく主のために」
既に『傀儡士』の命の代わりになるような英雄クラスの魂は一つしかない。
それを消費するのを嫌って『傀儡士』自身が外に出なくなったというのに、出なくても消費されるならばもはや閉じこもる意味もない。
「……そうかい。まぁいつまでもその席があると思わないことだね。それにあんたの代わりになれる人形ももう残り少ないんだろう?初心に戻って頑張るんだね」
女は『傀儡士』に背を向けて、手をひらひらとさせた。
その顔には笑みが浮かんでいた。
人形の損失を恐れて外に出なくなっていた『傀儡士』がやっと外に出る気になった。
それだけでも今回の負けは価値のあるものだろうと。
「うん、頑張るよ。世の澱みを正すためにね」
そう声を発すると『傀儡士』の碧眼がキラリと輝きを放った。
「ああ、そういやぁ、なんであんなところに行っていたのさね?」
帰ろうとしていた女はふと思い出したかのようにそう尋ねた。
別に任務があったわけでもないにも関わらずなぜあんな場所にいたのか。
そして件の人物と接触しようとしていたのか。
基本的に理由なくダンケルノ公爵家と敵対することは赦されていない。
世界の調停者たる教会の人間がおいそれと世界のバランスを崩すことはできない。
使徒ともなればそれこそ気を遣わなければならない。
「……彼はね、異質なんだ」
ポツリと呟くように発した言葉に女は困惑げな表情を浮かべた。
「異質?う〜ん、まぁ、異質といやぁ異質なんだろうけど……」
確かに異質は異質だろう。
既にアーノルドが起こした件については女も知っている。
とても5歳になって少ししか経っていない人間が起こせるようなものではないだろう。
だが、天才というものは何処にでも、どの時代にでもいる。
過去に名を馳せた英雄達も幼き頃から頭角を表しその才覚を惜しみなく発揮していた。
女はアーノルドもその一種だろうと思っていた。
そうでなくともダンケルノ公爵家の血筋。
少しばかり異常であっても驚きは少ない。
「彼の神眼の儀の結果を知っているかい?」
「いんや?」
女は肩をすくめて嘲るような態度を取った。
興味もなければ知る術もない。
「彼の限界値は平均すれば大体Fだ」
「っ⁈」
『傀儡士』のその言葉に女は盛大に顔を歪ませ驚きを露わにした。
神による恩寵を与える儀式、それが神眼の儀。
なればこそ、神々から見放されていると言ってもいいほど脆弱な加護しか与えられていないアーノルドがあれほどの結果を齎したとすれば、それは如何なるものなのか。
だがそれよりも——
「なんで、それを知っているんだい?」
少しばかり視線が険しくなった女の声色は一段階下がっていた。
神眼の儀の情報は同じ血筋の者を除けば基本的に本人の同意なくして他人が見ることはできない。
神眼の儀を担当する神官も他人に勝手に話すことはできない。
『傀儡士』がそれを知っているということはその神官を自身の傀儡にしたのかと疑っていた。
そしてそれは御法度だ。
同職者に手を出すことは理由なくしてやってはならない。
「そう怖い顔をしないでくれよ。あの神官はあろうことか俗世人に買収され、神の法に背いた。だからこそ僕の手によって意志なき人形となったのさ。その罪禍を洗い流さなければ我らが神に顔向けできないだろう?それに同職者の裁きの権限は僕も持っている」
実際に意志なき人形となったのはアーノルドの神眼の儀を担当した時よりも後。
女もとりあえずはその言葉に矛を収め、本来の話へと戻った。
「……なら、その神官が結果を改ざんしたということさね?」
「フフフ、それはあり得ないよ。あの結果は神によって齎されるもの。たとえ大司祭だろうが教皇様だろうがあの結果に手を加えることなんて出来やしない」
口調は快活であるが、その表情はいつになく真剣である。
だが、女は『傀儡士』の言葉ではなく別の理由でその目を怪訝そうに細めた。
それを知るのは何故なのか。
『傀儡士』本人が実際にそれをしようとしたことがあるのか、はたまた傀儡にしたあの神官の記憶を覗き見たのか。
『傀儡士』の能力の全てを知るわけではない女はそこには突っ込まなかった。
それに女はそういう方面は雑だ。
もしかしたら使徒ならば誰もが知っていることかもしれない。
もしそうなら、それを問い質せばむしろ墓穴を掘るのは自分になる。
それにいま最も大事なのは、『傀儡士』の言うことが本当のことならば、アーノルドのあの結果は変えられざるこの世の真理であるということ。
だが——
「他の、もしくは——」
「ああ、その可能性はある」
女の言葉に被せるように『傀儡士』が食い気味に声を出した。
「その可能性があるからこそ僕が見にいったのさ」
『傀儡士』がアーノルドをわざわざ見にいっていた理由。
結局はクレマンによって阻まれてしまったが、それでも簡単に済ませるような些事ではなかった。
「そんな大事なことならなんで勝手に行ったりしたのさね。それもあの程度の傀儡だけで」
怪訝そうな表情を浮かべ、呆れを含んだ声色で女はそう言った。
少なくとも教皇様には報告すべき事案であろうと。
「……まさか、あんな化け物がいるなんて思ってもみなかったんだよ。本当にただ少し確認しようと接触しようとしただけだったんだ。それに元々僕が矢面に立つつもりなんてなかったんだよ」
あの場で出て行ったのは野盗の男の口止めも兼ねていたが、1番の理由はただの気まぐれ。
たしかに『傀儡士』の実力があれば、あの程度の傀儡とはいえその気になれば大騎士級程度ならば勝つことはできるだろう。
だからこそ油断していた。
罰が悪そうにする『傀儡士』に女はこれ以上何も言えなかった。
『傀儡士』がその昔、10体いた英雄級の傀儡達のうち8体を倒されてから、強い傀儡達をだし渋るようになっていることも知っている。
傀儡が減るということはそれだけ『傀儡士』の命が減るということ。
それを知る女は盛大にため息を吐いた。
「直接あの力は見たのさね?」
『傀儡士』は生命あるものならば条件さえクリアしてしまえばなんでも傀儡にできる。
人ではなく動物や虫などの傀儡がいたのならあの場で全てを飲み込んだアーノルドの闇も見ているかもしれないと思い問うた。
女も伝え聞いただけで実際の威力やその有り様を見たわけではない。
だからこそその力を見たのなら、聞いておきたかった。
「あの力……?」
だが、ずっと苦しみ悶えていた『傀儡士』にそんな余裕などなかったため、アーノルドが暴走したということすらまだ知らない。
女は当てが外れたと、より深いため息を吐いた。
「教皇様は我ら使徒にはあれには手を出すなと命じられた。名指しでだ」
教皇様の命はすなわち神の言葉。
女も気になりはするが、その言葉に逆らうつもりはない。
「知っている。教皇様がそう言うのなら問題はないんだろう」
使徒は教皇の手足であり道具。
命が下ったならばそれに従うのみ。
これ以上アーノルドにちょっかいをかけるということは神の言葉に逆らうということ。
「まぁ、当分は放置するしかないさね。この世に害を齎す者ならばいずれ命が下るだろうさ」
それだけを口にした女は今度こそ、闇に紛れるようにこの部屋から消えていった。




