欲しいもの
「いや〜ありがとね?あのクソ鳥を殺処分してくれてさ!!」
カノンは自身の《自然魔法》を使って作成したまるでカフェのテラス席のようなテーブルと椅子を人数分出して寛いでいた。
それにしても…言い方酷くない?そう考えたのが伝わったのか、「分かってないなぁ〜」といった風に首を振る。
「朝、昼、夜欠かさず毎回絶叫してくるんだよ?しかも痛めつけたり半殺しにしたら更にうるさいし、全然逃げようとしないんだもん…ハァ、何度首チョンパしてやろうかと思ったか」
カノンはそう言ってまた遠い目をしていた。しかも瞳に光が宿っていないのが更に現実味を帯びている。
「まぁ、もうアイツはこの世から消えたし、これで安心して眠れるよぉ…あ、そういえばなにか欲しいものある?」
欲しいもの?…あぁ、そういえば倒したら何でもあげるって言ってた様な…
「ん〜、出来れば魔法とか使いたいかな?」
「私はそろそろ弓を変えたいですね、火力がどうしても足りませんし…」
「いいよ!ヒイナちゃんには新しい武器とかアクセサリー系にエンチャントすればいけるし、ネイルちゃんには特別なのを作ってあげよう♪」
カノンがそう言って指をパチンと鳴らすと、薄く七色の光りを放つガラスの様な、長方形の物体が姿を現した。
「あ、少しネイルちゃんの弓を貸してくれる?」
「はい、どうぞ」
カノンは「ありがと」と言ってネイルの弓を先程出現した長方形の物体に押し当てた。
すると、まるで粘土のように弓の型を取っていき、やがて弓を中心まで包み込むと、どういう原理か、弓の型を残してネイルが渡した弓だけが地面に落ちた。
「よ〜し、あとはコレに素材を流し込んで固まるのを待てば完成だよ!!」
そう言ってカノンは先程借りたネイルの弓を返した。
「ありがとうございます…それで、いつ頃できますか?」
「う〜ん、私が実際に作る訳じゃないからなぁ…」
「え?どういう事?」と、ヒイナが聞くと、どうやら制作するのは【火の大精霊:ヴァトス】という人物らしい。
カノン曰く、
「ヴァトスちゃんはね〜おっぱいが大きくて、ちょっぴりガサツだし、面倒くさそうに話すけど…でも、ちゃんと要望に応えてくれて、それに大人っぽくてかっこいいんだよ!!」
…という事らしい。
「今聞いてみるね〜…ヴァトスちゃん、ちょっと頼みたい事があるんだけど…」
『…なんだ?また誰かから安請け合いしたのか?』
「ギクッ!!…い、いや、これには深い事情が…」
的確に指摘され、変な声が出てしまったカノン。
『ハアァ…まぁいいけどよ。それで、何を要望されたんだ?』
「ありがとう、ヴァトスちゃん!!えっとねぇ…」
そして、カノンは私達の欲しい物や性能を伝えた。
『…他の仕事とかの都合を考えて弓は1週間と少しくらいだ。ヒイナって奴の要望を考えると最低でも2週間くらい掛かるぞ』
「そっか、じゃあそっちに弓の型を取ったやつ送るから〜ありがとね!」
『へいよ…あんまり人間を贔屓し過ぎるなよ?ただでさえ、他の種族がズルいって騒いでんのに』
それから、カノンと他の大精霊の事などを聞いたり、巫女の子供達と遊んでいるうちに夕暮れになっていた。
「じゃあ、私達は帰りますけど、ヒイナさん達はどうされますか?」
「いや、この二人は私のところで預かるから」
そう言ってカノンは巫女の女の子達を村に送り届けた。
「…単刀直入に聞くよ?」
「…急にどうしたの?」
カノンは先程会話していた時とは打って変わって、その表情は真剣そのものだった。
「君達は…魔王の仲間になるの?」
「え?私は倒す気なんだけど…」
その言葉を聞いた瞬間、カノンは先程とは違ういつもの少し抜けた顔に戻っていた。
「いや〜良かった。君達が異邦人だって事は装備の名前で分かってたけど、あっち側に着いてなくて嬉しいよ」
どうやら、カノンは私達の正体について知っているらしい。
「確か、君達ってこっちの世界と元の世界を行き来してるんでしょ?だったら正体が露見しないほうがいいかなって思ってさ。正体がバレると面倒くさいよ?」
あぁ、それで私達を預かるって…
そしてその日はカノンにお礼を言ってログアウトした。
――――――――――…
現実世界〜
「ふぅ、楽しかったな〜…あれ?なんか大量の通知が」
――――――――――
グリス:お〜い、バトル・フロンティアしないのかよ〜
グリス:最近全然ログインしてくれないし…
グリス:アタシけっこう寂しいぞ…うぅ
グリス:飽きちゃったのかよぉ…なぁ、一緒にやろ?
グリス:…早く通知してくれないとマジで泣くぞぉ…
――――――――――
「あ〜、最近忙しかったからなぁ…久しぶりに【グリス】に会いたいし、明日はバトル・フロンティアをしようかな?」
そして、ヒイナは返信することを忘れて明日の予定を考えるのであった。




