夏休みへ
その後、奥方達と別れてネイルとヒイナはとあるマンションの最上階に位置する高級レストランに入っていた。
「もう8時過ぎちゃったけど、貸し切りにしてるから安心してね?」
そう言ってネイルの手を引いて中に入ろうとするのを、支配人らしき男が止めた。
「失礼、こちらの方は?」
「ん?私の連れだよ、なにか問題でも?」
そう威圧する様に話すヒイナに、支配人は気づく様子はなく代わりにとんでもないことを言った。
「すみませんが、当店はこういった貧乏人向けの料理を提供する場ではございませんので、帰らせてもらえませんか?」
ニヤニヤしながらそう言った男にヒイナは完全にキレていたが、すぐに冷静になりこう答えた。
「でも変だね?私は人を差別する様な店を出せとは言ってないんだけどな〜」
「一体何を言って…」
「もういいよ、二度と来ない。それと契約は打ち切りにさせてもらうから、覚悟しておいてね?」
そう言ったヒイナに、支配人はやっと彼女が何者なのか気付いたようだが、遅すぎた。
背後で必死に謝罪する支配人の言葉を、凛として聞き流し、そのまま車に乗り込んだ。
「えっと、ヒイナ?」
「ごめんね?ネイル、嫌な思いさせちゃって…そうだ、私の屋敷で食事をしよ?それなら絶対大丈夫だから」
申し訳無さそうに言うヒイナにネイルはなんと言えばいいのかわからず、ただ頷いた。
それから、ヒイナの屋敷で食事をとって、どうせならと言うヒイナの言葉に甘えてそのまま泊まることになった。
それから数日経った水曜日、とうとうこの日がやってきた。
「明日から夏休みだね、ネイル!」
「そうですね、ヒイナ」
二人は一緒に高校から帰路についていた。
何故わざわざ歩いて帰っているかというと、車より歩いたほうが健康的…というより体重が気になる年頃なので、なんとなく登下校は歩いていきたいというのが大きい。
「そういえば、前の巫山戯たこと言ってた店だけど…潰しといたから」
「・・・そこまでしなくても私は大丈夫ですよ」
「たとえネイルが許しても、私が許せないのッ!…それに、アレが初めてじゃないと思うし、潰しても損はなし!!」
ただ私がバカにされただけでここまでするヒイナに、つい考えてしまう。
もし、私が誰かの悪意で殺されたらヒイナは一体どんな事をしでかすつもりなのだろうか?
だが、そんな事を本人に直接聞く勇気などないため、そっと心の奥へとしまった。




