第五十七話 それからのオーラリア領
その2
冬夜達が手紙を返してから一年がたち幾度かの手紙のやり取りを経て、最近では由依の方は不老不死も飽きるまでは面白そうだから、それでもいいという気分になったと返事が来ていた、仲の良くなった周囲の人の寿命を聞いての事もあるらしい。
冬夜達は現在学園地帯を訪れ、それぞれの教室や施設を見回っていた。
最初の学校の状況とは打って変わり、今では街の子供の一部も学費等を払い里の寮に住み通っている。
最初は街でも同じ施設をと考えたらしいのだが、その場合施設維持費としての魔石の消費量がどうやっても確保が追いつくことが無いとの事で、それならばいっそ里の学校を拡張して、教師も部門も増やし大々的にやってしまおうという事に成り、面白そうだと言い出したヨダにガズが乗せられ、アカレ子が加わり、ガズを気遣っていたレグアが巻き込まれた結果、街と交流を始めた当初の里よりも広い範囲の土地が学校として開拓され、学園地帯となった。
現在では、アカレ子情報と笹山家情報を統合し、医療と食料と道具開発に関してだけが異常に突出した技術力を誇る状況と成って居た。
その恩恵が里から街へと伝わり、街と里では病気に成ろうと心配をすることなく生活できる状況が確保された。
資金的には未だに、冬夜や詩歌がふらっと狩ってきた魔物の素材の売り上げを里に入れているから成り立っている状況だが、それももう暫くしたら領内すべてで施行させる税制と制度によって解決させる見込みらしい。
「ここもだいぶ様変わりしたねえたった一年で」
「そうだな、今度は領内すべてに無料の医者を派遣するだっけか」
「なんかそんな事言ってた。どうするんだろうね費用」
「税金で何とかするらしいけど、現在のここの医療技術だと、医療費そこまでかからないよなあ」
医療というか、医療用魔導設備という、新たな設備を医療研究班の一部が発想発案し内容をまとめた物を、魔道具研究部署に回し研究してもらい、その結果レグアが頼まれた機能をすべて搭載された一つの巨大な魔導設備を作り上げた。
一つというべきか複数というべきか、名称は複数接続型収納箱と言い機能として内部検索抽出機能と自動浄化機能を付けたというトンデモ装置だ。
一つを里に設置しておくことで、複数接続型収納箱の中の空間を通じて魔力供給がなされる回路を組み上げてあり、その結果かなりの大規模な装置と成って居るのだが、これ以上の縮小は無理らしい。
中に入れた物を全ての接続先の収納箱から取り出せるが、あくまで入れられる物が医療関係品に限定されてしまうと言う難点がある代物だ。
これに対して医療班は、難点なんかではないと主張していた。
患者のカルテの共有、治療結果の情報共有、新薬の研究結果の共有及び、治療薬や素材の共有が、接続先全てで出来るという点が重要だとの事だった。
確かに治療薬の材料を安い地域の診療所で買い集め共有が出来るのだから、薬不足にはなりにくい。
そのための前段階として現在急ピッチで、医者の育成を行っており、今年度の卒業者を持って、その人数も最低ラインには到達する。
税の名前は健康税と生産税で、健康税は領内すべての集落から都市までに医療機関を建立し、領民であれば無料で、それ以外のものであろうとも、比較的安価に治療を受けられるようになる計画であり、現在そのために他の税をどの程度下げるか、それによる税収の低下をどう補うかなどを協議中のようだ。
医療機関の建築のために、領内すべてへ領主からの通達を行い、里の建築班が各地域に出張し既に建築を始めている。
大体の地域において、珍しい見た目(緑の肌のマッシブ系イケメン)の建築組を見て驚き、最初は子供たちと一部女性陣が羨望のまなざしで見ており、次に魔法に頼らない建築方法をみると、見ていた者たちも徐々に減るが、今度は男性陣が何と古臭いが珍しいと好奇心からか集まり始めた。
暫くするとその建築の速さと内装などの自由度に驚きを与え、又見学者を増やした。
完成が近づくと見学していた者達が中を見てみたいと言うので、まだ建築中なので気を付けてくださいと言いながら案内すると、中に入った際の温かさや内装の出来の良さや繊細な仕事等に驚き、我が家も建ててほしいと言う依頼が発生していた。
しかし、医療機関設立を領内すべてで終わらせないといけないので、その依頼が全て終われば、森羅の里の建築組合に依頼しておいてもらえれば、順次やると伝え完成させると次の現場へと旅立っていく。
医療機関が完成した場所から逐次医者と助手と清掃及び機器調整役が送り込まれ、活動を開始していった。
税制が発布されるまでは、本来の医者にかかるよりはやや安い程度の価格で診察や治療が受けられるとの触れ込みで始めたが信用が有るわけではないので、多少お金のある者たちが様子見で訪れ、治療にかかった費用を聞いて、安かったためか気を良くし、仲の良いご近所の病気のせいであまり働けず貧しい人を連れてきた。
徐々に行列が出来るようになりそれから三年が経ち、村の者たちともなじんだ頃に、ついに入院しての治療が必要な者が出てしまった。
その旨を話すと、費用を聞いてきたのだが、それを告げようとする前に、領主からの一斉通信が入った。
『皆のもの待たせてすまない、本日から健康税を開始するのでよろしく頼む』
そう通信が入り、医者は患者に向けておめでとうございます、この村に於いてあなたが健康税による保護の元入院する患者の一人目となります、費用はかかりません。
そう言われ、そのものは医者の手を握り涙を流しながら感謝を述べ続けたと言う。
健康税開始時の税収入が、本来予定していた数倍に膨れ上がってしまい、そのせいで逆に領主の側近たちを悩ませたのはまた別の話である。
六十話で完結になります。




