第017話 ネコ? の専門家を求めて
犬獣人部隊を(受付嬢のおかげで)見事に返り討ちにした猫たち一行は、意気揚々とギルドを後にした。
受付嬢は地図を広げ、王都の外れにある学者の家までの道のりを、丁寧に、実に丁寧に説明してくれた。
「ギルドを出てすぐの大通りを左にまっすぐ進んで、三つ目の角を右に……」
「ふむふむにゃ」
「そこから北の水路沿いに歩いて、古い時計塔が見えたら……」
「「「「わかったにゃ〜」」」」
四匹は真剣な顔で頷きながら聞いていた……が、表に出た瞬間、綺麗さっぱり忘れていた。
「えっと、ギルドを出て……なんだったにゃ?」
「大通りを、右に……いや左?」
「時計塔がどうとか言ってたにゃ」
「にゃ、もう無理にゃ」
タマがあっさり両手を上げた。
「ま、いいにゃ。誰かに聞けばいいにゃ」
なんとも能天気な結論だったが、誰も異論を挟まなかった。
そこに、ちょうどギルドの外壁を補修していた恰幅の良い、たてがみも立派な獅子獣人の親方がいた。腕まくりをして、数人の石工が慣れた手つきで石材を積んでいる様子を監督している。
「にゃ、あの人に聞くにゃ」
タマが親方に近づき、元気よく声をかけた。
「すみませんにゃ! ネコの専門家って、どこにいるか知ってるにゃ?」
親方は手を止め、ふむ、と顎の下の毛を撫でた。
「ネコの専門家ぁ? ああ、それなら――」
親方は腕組みを解くと、いかにも職人と言うごつい指で大通りの向こう側を差す。
「あっちの通りに、猫車を扱ってる専門店があるぞ。種類も豊富で、猫車には箱も必要だろ? 勿論それも色々揃ってる」
「ネコ専門店にゃ?」
「猫種も豊富にゃ?」
「箱もいっぱいにゃ?」
「さすが専門家にゃ!」
親方の話に猫たち四匹は大歓喜する。
「ネコがいっぱい……まさに、にゃー達の目的地にゃ」
「おう、そうだ。大小取り揃えて、色も豊富、猫車の事ならあそこで間違い無い」
親方は満足げに頷き、また作業に戻っていった。
タマたちはしばし顔を見合わせ――
「にゃ、行ってみるにゃ?」
「行ってみるにゃ!」
「すぐ行くにゃ、箱が呼んでるにゃ!」
「詳しい人なら、何か知ってるはずにゃ!」
完全に的外れな方向へ、しかし全員が納得した様子で、猫たちは元気よく歩き出した。
――こうして、伝承に詳しい学者への道のりは、思いがけず遠回りをすることになるのだった。




