50.結婚式
国中に響く美しい鐘の音。
花が舞い散る教会で頬を染めながら見つめ合う高貴なお二人。
私達はローランド王太子殿下と我が国の王女エレーズ様の隣国の御結婚式に来賓として出席をしている。
私は王女の友人として、レオンハルトは公爵という身分と王女殿下と親しかった為。そして、一応婚約者同士として招かれたのだ。
一応、というのは、私が婚約は待って欲しいと言った後、婚約の話が進んでいないから。
表向きは婚約者のままだけど、まだ恋人同士としての時間を過ごし続けている。
それに、あの後、そのまま鉱山関連の事業が忙しくて、なんとなくそのままとなってしまったまま今日という日を迎える事になってしまったのだ。
私とレオンハルトは、喧嘩はままあるものの仲良くやっている方だと思う。
私たちが口喧嘩をする度に、エマが困ったようにそれとなく仲裁をしてくれた。エマはメイドであり、騎士団の女性騎士であり、私の護衛でもあり、本当に多重労働が過ぎるのに、いつも力になってくれてありがたい。
レオンハルトの扱いも、私の気持ちの持っていき方も全て分かったうえで、うまく回してくれるのだ。
もう、エマ無しの生活は考えられない。いや、エマ頼りの毎日になってしまってはよくないので、きちんと二人でやっていかないととは思っているんだけど。
目の前でにこやかに手を振る王女殿下達のようになるには、まだまだ時間がかかるようだ。
結婚式のセレモニーも終え、最後にパーティが開かれた。
来賓として招かれた私達に、隣国の方々からとても丁寧に応対をしていただく。
私は慣れない席だが、レオンハルトは全くペースを乱さず、相変わらず少し偉そうに当たり前のように歓待を受けていた。
私もこんな風に早く敬われることに慣れなければ。公爵夫人に色々と教えていただいているのだけど、なかなかそういった振る舞いや姿勢を身に着けるのは難しい。
戸惑いながらも、未来の公爵夫人としての振る舞いを意識しながら、少し肩の凝る時間を過ごしていた。
「来てくれてありがとう、見知った顔が居ると嬉しいものだな」
しばらくすると、王女殿下と王太子殿下がご挨拶に来てくださった。
私達も丁寧にお辞儀をする。
「こちらこそ、このような素敵な席にご招待いただき、光栄です。おめでとうございます、王女殿下」
「結婚おめでとう」
レオンハルトが短くそう王女に告げた。
王女もふわっと笑い、少し自慢げに胸を張っておどけて見せる。
「ありがとう。どう? お似合いでしょう?」
「あぁ、本当に。幸せそうで良かった」
レオンハルトは王女のそんな様子に笑いながら答えた。
心なしかローランド殿下が少し固い表情でレオンハルトを見ている気がしないでもないが、まぁ王女の元想い人となると、こんな表情にもなるか。
見当違いに心配をしているローランド殿下が可愛いらしくて思わず笑いそうになってしまうのを堪えながら、にこやかに応対した。
ローランド殿下がこのような表情をするという事は、本当に王女が愛されているという事だ。
そして、やはり上手の王女殿下。
心配そうな顔をしているローランド殿下の腕を先ほどよりも体に近づけて、にっこりと微笑む。そして、この二人もお似合いだと私達を褒め、それとなく自分達二人の絆を確認させている。
相変わらず立ち振る舞いがスマートだ。
私が感心しながら王女殿下達を見つめていると、王女はふっと笑って私を見た。
「少しは偉そうに振舞えるようになった?」
「あぁ、えっと……練習中です」
「すぐ近くに良いお手本が居るから、それのように振舞えばいいのよ」
「お手本……」
「おい、良いお手本だろうが」
「あなたは少し独裁的すぎるでしょ」
私たちの小さな小競り合いを見て、王女とローランド殿下が顔を見合わせてよく笑った。
お似合いの二人だ。顔を見合わせて笑い合う様子を見るだけで、以前拝謁した時よりもずっと仲が深まっている事がわかる。私たちがエマ無しでは喧嘩すら収められない期間、このお二人は大切に愛を育まれてこられたんだろう。
少し羨ましいと私は思っているけど、レオンハルトはどう思っているんだろうなと、レオンハルトをチラリと見つめるとバチっと視線が合った。もしかしたら、同じことを考えていたのかもしれない。
私達も二人顔を見合わせて、笑った。
その内、パーティも終盤となり、最後に王女とローランド殿下が挨拶をし、お開きとなる。
仲睦まじい様子のお二人に、あたたかな声や拍手が送られている。
本当に良いお式だった。
その拍手で会場が包まれる中、レオンハルトが私に顔を近づけた。
「次は俺たちだな」
レオンハルトは私の耳元で小さくそんな事を言った。
顔を見れば、ニマニマと少し嬉しそうに笑っている。私が照れたり困ったりするのを待っているようだ。
先ほどまで小競り合いをしていたくせに、こんな事を言ってくる図太さには本当に感動する。
でも、婚約はまだ早いと断ったあの時よりもずっと、レオンハルトを近くに感じている。本当にレオンハルトとあのお二人のようになる日は近いのかもしれない。
「そうね」
私がにっこりと笑ってそう返すと、レオンハルトはあからさまに動揺したようで、手に持っていたグラスまで落としてしまった。
あまりの反応に私は声を上げて笑う。レオンハルトは何が起こっているかわからないといった風に、戸惑ったまま固まっていた。
運命の恋人なのかはわからないけど、レオンハルトはきっと永遠の愛をくれるんだろう。
そんな確信に近い希望を胸に、私はレオンハルトに思い切り抱き着いてやった。
レオンハルトも強く私を抱きしめ返す。
その数ヶ月後、王女の結婚式で話していた通り、私たちはようやく二人教会で神に誓うことになる。
運命の恋人と永遠の愛を。
お忙しいところ、長らくお付き合いいただき、読んでくださいましてありがとうございました。
こちらで完結とさせていただきます。
長編(中編でしょうか)を書き上げたのは初めてかもしれません。
本当は20話程度で終わらせようと思ったのですが、レオンハルトもセシリアも口が悪いのでぽんぽんぽんぽん勝手に頭の中で喧嘩し始めてしまって楽しくてついつい長くなってしまいました。
本当はこれから先の未来についても書きたいようなそんな気持ちもあるのですが、次作や他作を書きたいという気持も強いので、二人の物語はこちらで区切らせてもらおうと思います。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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