ミッション8:「天国より来世よりこっちの方が100倍いいわよ、息子がいるもの」 / 1
はるかぜ商店街の角っこ、実家の1部である父ちゃんの焼き鳥屋「正兵衛」まで無事に辿り着いた俺とジュリリンは、中から聴こえてくる歌声にビビっていた。店内から、ディップのご機嫌な歌声が聴こえてくる。音の外し具合からして、泥酔しているようだ。そんな酔っ払いに捕まっている母ちゃんは、どうしているのか。俺もジュリリンも、店内に踏み込む勇気が出ない。──そんな時。
「あ、兄さん!ただいま!」
「……え、あ、おう」
……さっそく、悠介と遭遇してしまった。まだ中学か高校の部活に行っているだろう、と、少しだけ油断していた俺。素っ気ない返事をしてしまって、少し申し訳なくなる。しかし、元から穏やかで愛想の良い悠介は、ジュリリンにも元気に挨拶をした。
「こんにちは!」
「あ、うん、こんにちは……」
ジュリリンも一応、悠介に笑いかけてくれる。しかし、一瞬悩み、逃げるようにして店の中へ入るのだった。ジュリリンもなるべくなら過去の人間と話したくはないのだろう。しかも、ここはリープ・バグの時間。何がどう作用するか分からない以上、必要最低限の関わりだけで留めるに越したことはない。
俺も意を決し、店の中へ入る。すると、カラオケを歌いながらビールのジョッキを傾けるディップの姿。父ちゃんがそんなディップを困ったように見ていた。そして、ディップの隣りには母ちゃん。良かった、間に合った。こんな泥酔状態のディップなら、しじみたちの応援を待たなくても倒せるかもしれない。……が、しかし。
いくらここが「有り得ない時間」とはいえ、店内で、父ちゃんの目の前で斬ったり撃ったり、戦うわけにもいかないだろう。それに、戦う前に母ちゃんの身の安全を確保しなきゃならない。俺は母ちゃんを小声で呼んだ。母ちゃん!ここは一旦、逃げるぞ!と。




