ミッション5:第2のリープ先「高校の文化祭」 / 3
文化祭も終わりに近付いている。特設ステージでは、俺と同じクラスの女子がボーカルのライブが始まった。せっかくだから、と、母ちゃんと一緒にライブを見に行く。この文化祭が終わったら、父ちゃんと悠介のいる自宅へと帰らなければならない。その時間は少しでも遅らせたかった。俺も、母ちゃんも。
まだ空きのあった客席に座り、クラスメイトの……なんだっけ、あの子の名前。えーっと、うーんと?なんとか樹里、そんな名前の女子の歌を聴きつつ、俺もバンドをやりたい時期あったっけ、なんて考える。確か、母ちゃんにギターをねだって、脳天に大根(丸々1本)を食らった覚えがあったりなかったり。
「上手いわね、あの子」
「確か、プロ目指してるんだよ」
──嫌なことばっかりでも笑って生きていこう。そんな希望ないって奴には私があげるよ、さぁ、あの空へと。そんな歌詞の歌を熱唱する、なんとか樹里を見ているうちに、彼女の顔色が真っ青なことに気付いた。ギターたちも顔色が悪い。何が起きている?
俺と母ちゃんの周りの席の生徒もざわつき始めた。──ねぇ、この歌ってこんな歌詞だったっけ?ううん、違うよ。え、じゃあ、ジュリリンが歌ってる歌詞は?え、え、もしかして、歌詞を忘れてアドリブ!?……マジっすか。当然のことながら、カンペを出してくれるようなスタッフはいない。
ちなみに俺、都合のいいタイミングで都合良く、この歌の正しい歌詞を思い出したのだが。どうするべきか。母ちゃんに脇腹をど突かれる。行けってか。ステージに。しかし、そうでもしないとこのままではライブはエラいことになるだろう。俺は半ばヤケクソでステージへと走った。恥も何も知るか!




