62:英雄と勇者
ちなみにモア団長、18話や24話などでちょいちょい話だけ出てます。
たまに見かける黒いヤツです。
初投稿です。
「実は、我が生家であるカームブル家についてお話が……」
騎士団長が執務室にて。
ヴィータは、己が家の不審な動きについて語った。
「以前にもおかしなことはあったんです。家の応接室を通りがかった時、何者かと話している父が『ヴァンプルギス』の単語を出していたこと。今考えると、あまりにも怪しい……」
その後に起きたのが、『黒亡嚮団“ヴァンプルギス”』なる集団による四方都市への襲撃である。
偶然に発せられた単語というには、不審極まるだろう。
「そして今回。例の組織のボス、王弟ヴォーティガンが帝都を襲撃する数日前のことでした。家のほうから、『カームブル家に連なる者は全員帝都に集結せよ』とお達しが」
特に集まってどうしろという詳細は書かれていなかった。
それを不審に思ったのは、ヴィータの後見人的立場にある騎士団支部長・ヒュプノである。
なにか怪しいと思った彼?(※性別不詳)は、『ヴィータの怪我の治りが悪い』とカームブル家に嘘を吐き、ヴィータの帝都行きを防いだのだった。
「あとは、団長やクロウさんが知っての通りです」
ヴォーティガンたちが帝都に強襲。
されど王弟ヴォーティガンの予想に反し、帝王ジルソニアは心を入れ替えていた(※本当はまっったく入れ替えてないが)。
そのため、帝王を抹殺するも人々は混乱することなく、心を一つに王弟への怒りを発揮。
その高い士気に気圧され、ヴォーティガンらは撤退したのだった。
「――ふむ」
「なるほどな……」
そこまでヴィータの話を聞いて、ブラックモアとクロウは頷き合う。
いま彼らは、普段の三倍の勢いで頭脳を回転させていた……!
「――結論から言おう。カームブル家は間違いなく、ヴォーティガンたちと繋がっているな」
「えっ、間違いなくってどうしてですか団長!?」
先に口を開いたのはブラックモアだった。
彼は息子のことをチラッチラッと音速で見ながら話を続ける。
「――よいかヴィータ嬢。カームブル家の者らが帝都にわざわざ集まっていたのは、ヴォーティガンによる『統治』を支えるためだろう」
「統、治?」
「――そうだ。王弟ヴォーティガンは、己を殺そうとした兄にずいぶんな怨みを持っていたと聞く。そんな男が、兄を殺すだけで満足するか? いいや違うな……(うぉおおおおおおおおおクロウくん見ろ!!!!!!! 俺ってばめっちゃ知的だろッッッ!?!?!?!? こんな知的な男がヨソの村娘さんに手を出して孕ませたお前のクソアホお父さんだとは思わないだろうッッッ!?!?!?!?! というわけで色々問題になっちゃうからパパと気付かず帰ってねごめんねッッッ!!!!!!)」
キリッとした顔で推察しつつ、内心ろくでもないことを考えるブラックモア。
そんな彼に負けじと、キリッとした顔でクロウが話を継ぐ。
「王弟は本当に、兄ジルソニアから全てを奪うつもりだったんだろうな。
つまりは帝王抹殺後、自分が玉座に付くつもりだったのだろう……」
「なっ、クロウさん!? そんなの無理ですよっ。だってあのヴォーティガンは、部下に四方都市を襲わせたり黒龍を解放した男で……そんな人に民衆がついていくわけが……」
「そう。だから本当は、ヴォーティガンは自分がテロ組織のボスだと語るつもりはなかったんだろう。
あくまでも『死んだはずの王弟』として表舞台に現れ、格好の良いことでも喋りながら民衆たちを扇動し、『嫌われ者の帝王』を潰す気だったんじゃないか?」
実際にヴォーティガンは言っていた。“帝王には民衆共に嬲り殺されて欲しい”と。
そうなれば、どうなるか。
「暴動の後――激情から覚めた民衆たちは、きっと王弟を崇めただろうな。
なにせ人々を指揮し、『嫌われ者の帝王』を廃絶した男なんだ。悪を倒した者であれば、自然と正義の味方なんだと思ってしまうだろう」
「な、なるほど……!? ではカームブル家はそんなヴォーティガンに真っ先に味方し、民衆だけでなく他の貴族にも“自分たちもヴォーティガンに付こう”と思わせる役目……!」
「ああ。ある者が前を行けば、その背中を追ってしまうのが人間だからな。
あとの流れは簡単だ。帝王になったヴォーティガンが、自分の組織である『黒亡嚮団』に解散の指示を出して、口先だけで“討伐してやった”と言えばいい。それで民衆からの人気は絶対的なモノになるというわけだ(うぉおおおおおおおおお団長ォオオオーーーーーーーーッ!?!?!?!?!? この推理であってるッスよねぇ!? クロウくん頭いいッスよねぇ!?!?!?!? だから怖い顔せず俺のこと好きになってくださいお願いします!!!!!!!!!!)」
キリッとした顔で推察しつつ、やはりこちらも低次元なことを考えているクロウ……!
「――あぁ、いい推理だクロウよ。
そしてヴォーティガンの理想に反し、兄ジルソニアが真人間になってしまったことで、計画が崩れたわけだ(ぬぉおおおおおおおおおお!?!?!?!? 俺が必死に考えた推察をペラペラ喋りやがってコイツ頭いいなチクショウッッッ!?!?!?!?!? もっと知的アピールしないと頭いいとは思わせられないのかぁああああああッッッ!?!?!?!?)」
「あの式典の場に必要だったのは『帝王を責め立てる空気』。だが帝王が土下座までするほどの誠意を見せてしまったことで、ヴォーティガンの理想は叶わぬものとなってしまった。
まったく、皮肉な話ですね団長……(うぐぅううううううう!?!?!? 団長さんってば全然驚いてないじゃん!!!!! 『それくらい思いついて当然だろ』って顔してるじゃん!?!?!?!? クソがああああああああああ!!!!!)」
……超低次元心理バトルをしながら敵の狙いを解き明かすアホども。
そうとは知らないヴィータは、プルプルと震えながら「こ、これが英雄と勇者の議論の場……! どんな悪しき企みも、あっという間に丸裸にされてしまう……ッ!?」と戦慄していた。無駄戦慄である。
「――ではクロウ、カームブル家への対処を決めるぞ……!(ナイスなアイディア出すぞぉ!)」
「ええ。共に邪悪に、断罪を――!(がんばるぞぉ!)」
かくしてクソアホ遺伝子どもによって、カームブル家の者たちは理不尽に追い詰められていくのだった……!
ここまでありがとうございました!
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